【インタビュー】嘘をつきたくなかった、BOMIが選んだ道の先　ミュージシャンの４年の記録【音楽】

安心した、昔と今は地続きに

――完成した本作を観ての感想は？

　覚えていないことも結構多くて、その時々を『あ、私こういう感じだったんだ』と見られて新鮮でした。ライブシーンとか格好良く切り取って下さって。言葉を使うシーンがないというのも印象的で、それによって兎丸さんとは逆の良い作用になっていたのではないかなと思います。

――客観的に見た自分の姿はどうでしたか？

　こんなもんなんだろうな、と（笑）。普段は、インタビューでもアーティスト写真の撮影でも良く見せたいと思うじゃないですか？　でも、そういうのではない。楽曲を作っているシーンは印象的で、撮られていたのは覚えているんですけど、自分がどういうメロディを作っていたのかは覚えていなくて。私こんなメロディを作ってたんだって。変な話、私、アーティストっぽいなって（笑）。

――逆に言えば自分をさらけ出していることになりますが、抵抗はありませんでしたか？

　そもそも私がそういう人ですから。その時の自分、完璧じゃなくてもさらけ出すことでしか生きてこられなかったので、それを切り取って下さった。正直、４年前の自分を見たいか？　と言われたら怖い。何をしゃべっていたか覚えていないし、大丈夫か？　耐えうるのか？　と。考え方も含めて今の自分とどれぐらいリンクしているかも分からない。人は年月によって考えは変わっていくから。私の場合は特にそうで、真逆のことを言っていることもあり得る。だけど、意外と同じ人でしたね。昔と今が地続きで安心しました。

――４年前はメジャーレーベルを離れるというターニングポイントでもありました。当時はどんな思いがありましたか？

　不安だったのと、その逆にゼロからなんでもやってやるぞ！　という強い気持ちと、まだ何もできていない焦り。混沌としていました。でもエネルギーがあったと思います。自分の音楽が決められたサイクルに乗って消費されていくのに疑問を感じていて、レコード会社とは枚数契約で残り１枚だった。その１枚に対してどういう気持ちでプロモーションをしていけばいいのかと考えた時に「嘘をつきたくない」と。なんだったら、友達とゼロからバンドを組んで音楽をやった方が純粋じゃないのか、と思っていた時期ではありましたね。自分のプロジェクトなのに、自分で舵を取れないことに凄くストレスを感じていて、このまま進めるのは凄く不本意。それは自分にとっても、聴く人にとっても正直じゃないと思っていました。

――この作品を観る限り、BOMIさんは凄く悩んでいて、でも終盤に描かれるライブのシーン。「ハロー・ザ・ワールド」を歌った時は晴れやかな表情をしていました。あの時はどのような環境でしたか？

　色々とあったなかで、新しくインディーズでアルバムを作れて、それで出せたリリースパーティだったので、混沌としていたものがそこで終息しているから晴れやかだったと思います。

――逆に先ほども話題になった曲を作っているシーン。この作品の始めの方ですが、部屋でマイクに向かい作っているときの状況は？

　あの時はサウンドの面で一緒に作っていたパートナーと別れて、新たに探している時期でした。私はサウンド面に自信がないので、共同作業者を見つけないといけないということで色んな人を探していて。この人とやってみるとどうだろうと。あれは、１回曲を作ってみましょうというワントライのシーンです。

――比較的、希望に溢れているというか？

　希望というよりも、メロディを考えてみて…という。この人が作る曲と合うのか、どれだけキャッチーにできるのか、そういうトライでした。

――もう一つ。ライブの楽屋のシーン。私たちはたまに見かけますが、一般の方はなかなか見る機会がない貴重なシーンですよね。表舞台は華やかだけど、裏は孤独な部分があるのかと。

　殺伐としていましたね（笑）。

――あの時はどんなことを考えていたんですか？

　分かりづらいかもしれないけど、同じ人前に立つことでも、そのステージに気持ちの上で立てている人と立てていない人が確実にいて。気持ちの上で立てていないと何をしても観客の興味は引けないし、何も入ってこない。だから気持ちの上で立てていることが大事で、そこに対しての感覚を研ぎ澄ましていくというのがあの時の状況で。でもたまにひよっちゃうこともあるんですけどね。ただ流されて立っています、ということではなくて、自分の意思で立っていますという意識、認識を大事にしています。それがあるのとないのとではライブは全然違うような気がして。それに向かってやるとなると神経が過敏になるという…だからああいう殺伐した感じになります。

――今でもライブ前は緊張しますか？

　します。まわりからは、してない風に見えると言われるけど、めちゃくちゃ緊張してるんですよね。でも出るときに「パン！」とスイッチを入れるような感じで出られれば勝てる。あと目の前にいるお客さんを受け入れる感覚というか。それを観ずにやるとただの自己満足になると思うので。やっぱりライブはコミュニケーションですね。