音楽は救世主――、縄田かのん×中神円 女優としての殻を破った作品
INTERVIEW

音楽は救世主――、縄田かのん×中神円 女優としての殻を破った作品


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:19年02月22日

読了時間:約17分

音楽は救世主「傷ついた心に薬を塗ってくれる」

――ここからは、音楽についてのお話をうかがえればと思います。例えばこの映画『空の瞳とカタツムリ』で流れる楽曲は、わりとほんわかした感じというか。岩井俊二さんの作品を彷彿する雰囲気も感じました。そういった映画に対する音楽の比重というのは、お二人はどのように考えられますか?

縄田かのん 私は、結構感情的なシーンなどで、やたら音楽が掛かってくるというのがあまり好きではないんですけど、そんな意味ではこの作品はちょうどいい配合というか。音楽がキャラクターにそっと寄り添ってもらえているような印象がありました。

――確かにバランスというのはありますよね、”過ぎたるは及ばざるがごとし”というか。派手に響かせてもらっても、って…

縄田かのん そうですよね。“ここで感動してちょうだい!”という感じがあからさまに見えるのは(笑)、ちょっと苦手なんですけど。でもこの作は、そっと寄り添ってくれる音楽だったので。試写を観たときに音楽も初めて聴いたんですけど、そのときにちょうど良い、心地よい音楽だな、という印象がありました。

中神円

中神円

――映画自体もかなり生々しく鮮烈なシーンも多いので、その印象を和らげてくれる感じもありましたね。中神さんはいかがでしょう?

中神円 夢鹿のシーンで、夢鹿が聴いているという体でバロック調の音楽が鳴っているシーンがありますが、結構無音の状態が続いている中で、あの強い音が入ってくる感じに、結構衝撃を受けました。同時に夢鹿の強さとか、ちょっとした孤独さみたいなのと音楽がリンクしているなというのも感じまして。

――確かにそこも印象的なシーンでしたね。一方で“あれ? 撮影のときは結構張りつめてやったのに、出来上がったらちょっと印象が違う”みたいな感じを、全体的に感じたりもしましたか?

縄田かのん むしろ現場の空気がそのまま映っているな、という印象がありました。それを邪魔しない音楽が、こうなんか共演してくれた感じというか。二人が海辺でしゃべっているシーンもありましたが、そこにメインテーマみたいな音楽が流れ、それが心地よく響いてきて。あの音楽に十百子のセリフがのって、心に届きやすくなっているというか。余計により一層心に届けて、より一層乾燥させてくれるというか、すごく心地いいリズムの音楽だなと思いました。

中神円 夢鹿のシーンも“だからこそ、あのバロック調の音楽が使えた”という印象もありましたし。

――サラっと流れたような印象ではありましたが、思った以上に作品の中での音楽の比重は大きいようですね。少し視点を変えておたずねしますが、普段音楽は聴かれますか?

縄田かのん 結構好きですね。特に気に入っているのは、amazarashi。もう大好き過ぎて。ここだけの話ですけど、私は夢鹿のテーマソングはamazarashiの「命にふさわしい」だと思っているんです(笑)。もう本当に。ちょうど撮影中に、そのミュージックビデオが解禁になったんですけど、見たときに心がリンクしちゃって。そんなわけで、「命にふさわしい」は私が勝手に映画のテーマソングだと思っています(笑)

中神円 いや~置いて行かれた~話についていけない~(笑)。私、聴いたことないから、今度聴いてみます!

――(笑)。でもそれは劇中で使えるんだったら使わせてください! くらい思っちゃいますよね。

縄田かのん 去年行われた武道館でのライブに行きたかったんですが、撮影で行けなくて…姉ひとりで行ってもらいました、秋田(ひろむ)さんに向けた”「命にふさわしい」に助けていただきました”と書いたファンレターと一緒に(笑)。すいません、本当に大好き過ぎて(笑)

――いやもうミーハーですね(笑)。中神さんはいかがでしょう?

中神円 私は結構テクノが好きで、電気グルーヴとか、聴いています。

――おっ? テクノですか。これは結構渋いほうですね。

中神円 はい。あとはビッケブランカさんもMVに出演させていただいたのがきっかけで、初めてアーティストさんのことを知りまして。ピアノに合わせて歌うのが好きになりました。

――では結構幅広く聴かれている感じですね。結構お二人とも、本格的に音楽を聴かれているようですが、プレーするほうではいかがでしょうか?

中神円 中学、高校と私は軽音楽部だったんです。

縄田かのん そうなの? 私も高校は軽音楽部!

――そうなんですか? 楽器は何をやられていたのでしょう?

中神円 キーボードとボーカルをやっていました。

縄田かのん 私はベースとボーカルをやっていました。

――今後歌う予定はないんでしょうか?(笑)

中神円 ないんでしょうかね…(笑)。バンドもやりたいですけどね。

――ではだいぶ音楽というものが、体に染みついている感じもありますね。

縄田かのん そうですね。音楽は結構昔から聴いていましたし。

縄田かのん

縄田かのん

――難しい質問を一つおうかがいしたいのですが、お二人にとって音楽とは、どのようなものでしょう?音楽に対してどんなものを求めるか、ということになりますが…

縄田かのん 私にとっては、普段表現できない自分のうやむやとか、逆にその晴れ晴れした気持ちとかを、いつも代弁してもらっている存在、いい意味で消化してくれる存在。いつも音楽があって、音楽を聴かない日はないくらいで、歩いているときもいつも何か聴いているし。で、他方では今ある自分の感情をより増幅してくれる存在でもあります。

――普段生活している中で、“足りないな”と思ったときに、音楽を掛けると“あ、これこれ!”みたいなことに気づいたり、隙間を埋めてくれたりするような存在ですかね?

縄田かのん 確かに。そういう面もあり、それに増幅もしてくれるし、傷ついた心に薬を塗ってくれる存在だったり。なんか救世主ですね、音楽って。

中神円 おお~救世主! すごい表現!(笑)

――では、無いとかなりつらいですね。

縄田かのん 私は無いとかなりつらいです。私は現場に入るときに曲を決めて、ずっと聴いたりすることがあります。やっぱりイメージを増幅してくれるものでもあるし。

 一方で私は以前、音楽劇を一回やったときがあったんですけど、そのときに思ったのが…役者としてこういうことは言ってはいけないかもしれないですけど、役者が10分でやることを、音楽は1音でパッと表現して心に届けてしまう。それはものすごい存在だと、恐れを抱いたこともあります。本当に1音で。絶対に太刀打ちできない存在だと心の中で思っているんだけど、でもという思いが自分の中であるんですけど。

――まあ、確かに役者という仕事に挑戦する上では、表立ってはっきりと認めるわけには…(笑)

縄田かのん 確かに(笑)。だけどやっぱり、音楽はそういう存在だと思います。昔からあるものだし。さっき言っていた夢鹿のシーンでの、バロック調の音楽みたいな存在感があるものって、ああいうものを聴くと、自然に鳥肌が立ったりするけど、例えば芝居とかでなかなか鳥肌を立たせるまで行くのは、時間が必要だったり、すごく技術がいるものなんですよね。音楽のあの旋律を聴いたときに、パッと体が反応する感じは、恐れ多いというかすごい存在だと思います。

――中神さんはいかがでしょう?

中神円 私にとっては、自分だけの世界を作ってくれる個室みたいな存在だと思っています。例えば外にいて、周りに人がいる状態でも、イヤホンをして音楽を聴けば、自分だけの空間になるじゃないですか。

――何かやっぱりそうなりたい、というときは、普段から結構あるのでしょうか?

中神円 結構ありますね。なんか例えばだけど、電車の中で人が大きな声で言い合いなんかをしていたりすると、自分がそこに加わっているわけでもないのに、どうしてもそういう影響を受けたりしてしまって、ちょっと自分が怒られているような気持ちになったり…(笑)

――嫌な気持ちにはなりますよね。

中神円 そういうのを消してくれる。そういうときに電気グルーヴなんかを聴くと、全然関係なく面白く思えてくるんです(笑)

――では、ある種自分を守ってくれるものの一つ、というような? まさしく先ほど出た救世主、的な?(笑)

中神円 確かに。それもあると思います。救世主(笑)

(おわり)

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中神円
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縄田かのん
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(c)そらひとフィルムパートナーズ
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