音楽は救世主――、縄田かのん×中神円 女優としての殻を破った作品
INTERVIEW

音楽は救世主――、縄田かのん×中神円 女優としての殻を破った作品


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:19年02月22日

読了時間:約17分

女優としての殻をまた一つ破った作品

――資料に記載されていた斎藤監督のコメントにもありましたが、作品を見られた方からは“ロマンポルノ”的な評価が強いようです。私もそんなイメージを抱きましたが、一方でドラマ的な部分にすごく強い印象を感じました。誰かがみんな持っている心の中の、解せないところに悩んでいるというところでドラマが展開していく、そこはとてもストーリー性が強いと思ったのですが、この役柄を演じるというところで、それぞれの役柄をどのように理解されていたかを教えていただければと思います。

縄田かのん 青春時代のうやむやって、誰しもが持っていると思うんです。そのうやむやに向き合った結果、この主要人物4人のバランスが崩れていく。この役を演じる上では、あまり自分とそれほど離れているイメージがありませんでした。みんなが持っている印象みたいなものに、正直に向き合っている人だな、って。

 その4人のキャラクターがそれに対して向き合った結果、いろんなドラマが生まれていく話だと思っていて。だからそこに向き合うという作業を心掛けたくらいで、その意味ではそこまで演じにくいという印象はなかったですね。

――お互いにその役自体に共感というか、自分が似ていると思ったことはありましたか? 例えばこの夢鹿という役は、過去にお母さんとのわだかまりがあり…。

縄田かのん そうですね。父親ともいろいろあり…。

――で、自由奔放というイメージがある半面、自傷行為に陥るところもあり、その性格はすごく複雑な印象もある。で、親友の十百子からは憧れを持たれるけど、実は…みたいな。

縄田かのん それは確かに。本当に裏腹なんですよね。

――自由奔放なところはいかがでしょう?(笑)

縄田かのん それはどうでしょうか…多分私もどちらかというと、自由奔放に憧れているタイプなんですけど(笑)。でもなんというか…社会生活を送る上で、社会性って絶対に必要じゃないですか?夢鹿は、多分そんなものをちゃんと意識しつつも、飛び越えていっている人なんだなと思って。

――さすがにここまで自由奔放に、というのはなかなかいないでしょうが。

縄田かのん 自分に正直向き合った結果、こうなった人なんだな、と思います。ある意味不器用というか。だから向き合ったが故に、こういう人間になったということはすごく分かる気がします。

縄田かのん

縄田かのん

――気持ちはすごく共感できるというか、理解できると?

縄田かのん 夢鹿は私の願望の一つなのかもしれないですね。それに夢鹿は、その向き合ったが故に、絶望だけの人生を送るしかないんですけど、それはある意味、気高いなとも思います。

――中神さんから見ると、縄田さんが演じる夢鹿はどんな風に映りましたか?

中神円 自由奔放になるのって、すごくパワーが必要なことだと思うので、あの夢鹿の役を演じられるのは、縄田さんに力があるからだと思いました。反対に私は結構臆病なので、周りのことをかまわずに自由奔放に過ごすということに、すごく抵抗があるので。

縄田かのん それは意外! 私は十百子にすごく自由さを感じていたんです。だからいつも円ちゃんに”自由だな~”って(笑)

中神円 本当に? 無自覚なのかな?(笑)

――それは役柄の性格という意味ではなくて?

縄田かのん もちろん、役でもあるんですけど…十百子の印象のほうが強いと思うし、それは円ちゃん自身が持っているものなので。その強さがある上で、撮影で見せた振る舞いができたと思っているので、“いいな”“素敵だな”と。

――中神さんのほうが奔放な感じだと?

縄田かのん と、私は思っていました(笑)

中神円

中神円

――どうでしょう、中神さんには自覚がありますか?(笑)

中神円 そうですね…まあ自分で自分の殻を破っていく役だったので、そういう意味で強さはあったのかと思います。ただ、その強さを影響してくれたのは、夢鹿のおかげだったんだとも思いますが。

――中神さんは、正式には今回が映画初出演ということですよね。そういう意味では、新たな挑戦でまさしく中神さんご自身の殻を破ったと?

中神円 確かに、それは本当にそう思います。

――ではまさしく十百子になったという感じですね。縄田さん的にも殻が破れた感じで?

縄田かのん 確かに、私にもその意識はあります、本当に。ただこの役を表現することは、自分の中にあるものだけでは無理だと思ったし、それこそ周りの皆さんに殻を破ってもらったという感じです。十百子もそうだし、斎藤監督もそうだし、みんなで本当に殻を外してもらったという感覚があります。

――では、今後の活躍が楽しみでもありますね。先ほどの話もありましたが、お二人は常日頃。心に抱えたわだかまりみたいなもの、“これ、どうにかしたい”と思うところって、なにか一つあれば教えていただけますか?

縄田かのん 心の中で“これは絶対にやる”と決まっているのに、ウジウジ悩むところがあるんですけど…

――ウジウジ、ですか?

縄田かのん たぶん人の何倍も悩みながら、 “よし、やるぞ”と決意したつもりでいるんですけど、”え~でもな…どうしようかな…”って。なんでここでエイっと行けないんだろうなと。いつも、マイナス100のところから、ようやくゼロに行く感じです。

――もうちょっとサバサバした感じになりたい、という感じですかね?

縄田かのん 多分、根はサバサバしていると思うんですけど、なぜいつもその工程を経ているんだろう?という…これはどうにかしたいですね。ものすごくウジウジなんです(笑)。でも、それって夢鹿が持っているものと、多分共通しているものがあると思っていて。なんか好きなのに、わざと傷つけちゃうところとか。ただ好きと言えばいいのに言えない、ほかのことで表現しちゃうところとか、ですかね。自分にもあるな、と。

――そこは…もうきっぱり思い切っていくしかないですね(笑)。中神さんはいかがでしょう?

中神円 私も結構、引きずるタイプかもしれないですね。なんか小さいことを気にすることをやめたいというか。

――小さいこと? 例えば?

中神円 通り過ぎた人に足を踏まれて、謝罪も何も言われなくてムカつくというのを、なんか許してあげるという心の広さみたいなものが、もうちょっと欲しいですね。

――いや~足を踏まれるなんて…それはムカッと来て、結構気持ちを引きずるのも分からなくはない気がしますが…(笑)

中神円 でも何か一言、言ってくれればよかったのに、みたいなことをずっと思いながら家に帰って。さらにずっと思い続けたりするんです。そういうことは、ある地点を超えたらやめた!という風に思えるよう、潔さみたいな心構えが欲しいな、と思います。結局、自分が疲れるし。

――まあ…それは向こうが謝ってくれれば、わりとすんなり収まるのに(笑)

中神円 それはそうですね(笑)謝ってくれれば全然許しますから。

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中神円
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縄田かのん
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(c)そらひとフィルムパートナーズ
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