音楽は「初恋」――、少女時代チェ・スヨン 憧れ吉本ばなな作品で映画主演
INTERVIEW

音楽は「初恋」――、少女時代チェ・スヨン 憧れ吉本ばなな作品で映画主演


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:19年02月16日

読了時間:約15分

見ている人が共感できるか? を意識して

――でも、例えばそれでもスヨンさんがユミと同じような絶望感を味わったとしたら、どうなったでしょうかね?

 いや、それはユミと似ているかも(笑)。私も部屋でぼんやりするタイプなので。ちょうどこの映画を撮影した時、実は私の気持ちにはいろんな悩みがあったんです。だから日常というか、慣れた環境から離れてみたいという願望を持っていました。だからちょうど名古屋で撮影が1カ月間あって、自分としてはいい機会だと思っていました。

 携帯電話も持っていきたくないと考えるくらい、その時すごくいろんな悩みがあったんです(笑)。そういう意味では本当に撮影しながら、自分もユミとともに成長をしたり、癒やされたりしました。だからもしこんなふうに自分の中に絶望が来ると、ユミみたいに一人で旅行とか、一人の時間を過ごしたいと思うかもしれません。

――役柄に深く共感した様子がうかがえます。今作でスヨンさんはとても透明感があって、なおかつ同年代の女性がすごく共感できるよう、等身大の女性をしっかりと演じられているように感じました。演じるにあたって、準備されたことなどはありますか?

 私の仕事は、一般的な部分とはかけ離れているところがあると思うんです。だから私は“一般の女性って、どういう行動をするんだろう?”ということを、いつも観察したりしているんです。そして今回のユミというキャラクターも、ただこう道を歩いていても、目立たないタイプの女性だと想像しました。

 それにプラスして、自分が最初にミミという存在を探った時に、さっき言ったように“ちょっと鈍感すぎるんじゃないか?”“疎いんじゃないか?”というふうに思ったけど、その面があまり強く出てしまうと、見ている人が共感できないんじゃないかと思ったんです。だからただ鈍感とか、なにも考えていない、そういう女の子じゃなくて、ユミは“まさかあんなことになっているとは、想像もできていないんだ”という状況を観客に伝えることで、そこから共感できるようにしないといけない、と思いました。

――見ている人の共感ですか。意外に見落としがちなポイントですね。

 なので、ミミという原作のキャラクターに、ちょっと韓国女子特有、といっていいのかわからないけど、もっと行動力があってハキハキした感じをプラスして、より“こういう人って、いるよね”という感じを出そうと。物事を信じ切って、あまり自分にとって悪いことを想像できないというか、そういう女性、ただ疎くて、ただ鈍感で、ポカーンとしているだけではない、ということを少し考えていました。そこを例えば姉妹の会話の中でも表そうと思ったり。言葉の発し方自体も、すごく自然体になるように意識をしました。

――演技への探求心が感じられますね。一方で共演の田中俊介さんの印象は、どのような感じでしたか?

 この作品に参加する前に、事前に田中くんのほかの作品を見て日本に来ましたが、田中くんはこの作品の役柄みたいな優しい系のキャラクターをやったことがあまりないんですよね(笑)。だから実は、最初にこのポジションに田中くんが来るのは、あまり想像がつかなかったんです。

――確かに。これまではシリアスな役柄が多いですね。

 でも実際に会った時に一番強く感じた印象が、やっぱり笑顔。“初めまして”と言ってくれたことで、その瞬間に“あ、似合うかも!”って(笑)。同い年で戸惑うことがなくて、自由に話すこともできるし。それからは、西山がこういうキャラクターだと思う、ということとか、逆に西山が思うユミのキャラクターを、自由にお互いに話したり、またユミがこうなると、日本のお客さんはどうなるのかな、とかいった相談もしたり。
 
 その過程の中で、すごく俳優として柔らかいというか、柔軟性がある人だと思いました。また撮影がない日にも差し入れを買って現場に来てくれたり(笑)。すごく雰囲気作りをしてくれる、優しくてまじめな人。本当にこの作品で田中くんに出会ったことは、自分としては良かったと思います。

――田中さんもBOYS AND MENというダンスボーカルグループに所属しておられますが、そういう意味ではスヨンさんと、立場が似ているところもありますよね。そういうお話なんかも?

 しました。私は日本の芸能界と、韓国の芸能界はちょっと雰囲気が違うというという感じもしていたんですけど、田中くんと話したら、実はほとんど雰囲気が似ていて、同じような悩みを持っているなと思うくらい、いろんな相談をしました。

 また、田中くんが初めてお芝居ができる機会を得た時の話を聞いたこともあったんですが、それと比較すると、私はもっと早く、いい機会を得ることができたと思えましたし、まさしく私と田中くんは、劇中のユミと西山という関係そのままみたいだと思いました。でも田中くんは、そんな中でも自分の努力で今もお芝居をやりたいということを発信しながら頑張っているし、彼自身の努力が実って今の彼があることに、拍手を送りたいです。だから本当に彼のことを、すごく応援したくなりました。

チェ・スヨン

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