ユアネス「何度も聴いて長く愛を注いでほしい」歌を大事にしたこだわりのサウンドに迫る
INTERVIEW

ユアネス「何度も聴いて長く愛を注いでほしい」歌を大事にしたこだわりのサウンドに迫る


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年12月29日

読了時間:約13分

 4人組ロックバンドのユアネスが11月21日、1st EP『Shift』をリリース。ユアネスは、作詞作曲を務める古閑翔平(G)を中心に福岡で結成。古閑によるメロディアスなギター、黒川侑司(Vo)の染み入るような歌声、田中雄大(B)と小野貴寛(Dr)によるタイトで緩急のあるリズムが特徴で、バンドシーンで注目を集めている。今作の『Shift』は、2018年3月にリリースしたアルバム『Ctrl+Z』の続編で、2枚で1つの作品というイメージとのこと。『Shift』は、ドラマ仕立ての1曲目から、アッパーな楽曲、ミディアムバラード、インスト曲など多彩な楽曲を収録している。どこか文学的な歌詞世界も人気で、楽曲作りについて古閑は「僕らの楽曲は、長く愛を注いでほしいと思っています。そのための日本語の歌詞とボーカル、それを支える演奏という考え方で作っています」と話す。ユアネスはどんなバンドなのか? 『Shift』はどんな作品なのか? 4人に話を聞いた。【取材=榑林史章】

パソコンのショートカットキーがヒント

『Shift』ジャケ写

――ユアネスは、どういう風に結成されたのですか?

古閑翔平 ベースの田中と僕が、高校生時代から一緒にコピーバンドをやっていて、福岡の同じ専門学校に進んで、そこでボーカルの黒川を誘いました。そのときは別のドラマーがいたんですけど、卒業するタイミングで小野が入って、今の4人になりました。

――黒川さんをバンドに誘ったときの方法が、ちょっと変わっていたらしいですね。

古閑翔平 音楽の専門学校だったんですけど、早くからメンバーのあたりをつけておきたいと思って、入学する前からTwitterで、入学予定の人を探してフォローしまくっていて。その中に黒ちゃん(黒川)もいて、まだ顔も知らないうちからダイレクトメッセージを送って、高校の学園祭で歌っている動画を見せてもらったんです。それで「いい声してるな」と思って、ボーカルに誘ったんです。

――顔も知らないのに?

黒川侑司 僕は友だちを作るのが上手じゃないので、逆にそうやってアプローチしてもらえたのが単純にうれしくて。何の疑いもなく、動画を送ったりしていました(笑)。

小野貴寛 普通は、まず怪しむところでしょ(笑)。

――その動画では、何を歌っていたんですか?

黒川侑司 高校の学園祭で友だちから、当日限定でボーカルをやってほしいと。それで、ONE OK ROCKさん、RADWIMPSさん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONさんをコピーしていました。

田中雄大 僕と古閑も、高校時代にRADWIMPSさんのコピーをやっていたんです。

――黒川さんのボーカルは、独特のやさしいムードがあると思いました。黒川さんの音楽的なルーツは?

黒川侑司 好きで聴いていたのは、母親の影響から昭和の歌謡曲とか、アニメソングとか、けっこう偏っていました。だからロックバンドの音楽は、このバンドに入ってからメンバーに薦められて聴くようになって。ロックバンドに対して変に固定概念を持っていないので、それがいい方向に出ているのかなって思います。

小野貴寛 僕は、ユアネスに入るまで、サポートで女性ボーカルとかいろんな音楽性のバンドに参加していました。でも、ルーツと言えるのはメタルですね。

――ユアネスというバンド名は、どういう意味で付けたのですか?

古閑翔平 意味は無くて、SNSで1人1文字ずつ出していって、組み合わせたらこうなりました(笑)。

黒川侑司 実は、最初に上がった4文字はダサすぎて却下になって、2巡目でこれになったんです。

――造語なんですね。

古閑翔平 そうですね。僕らのバンド名以外にはない言葉なので、それがいいなと思って。

小野貴寛:ムリヤリ翻訳しようとすればできるんですけど、けっこうめちゃくちゃな意味になります。

――さて、『Shift』はちょっとした恋愛小説を読んでいるような感覚がありました。少年から男になる間の、青春時代特有の“もやもや”や、揺らぎが表れた作品だなと。音楽性は最初から、今作のような音楽性だったんですか?

古閑翔平 いえ、最初のほうはもっと複雑で、ガチガチに変拍子の曲ばかりやっていました。逆にストレートな曲が、まったくなかったくらいです。当時は、まだ曲の作り方を学んでいた途中だったし、バンドはスタジオに一緒に入って曲を作るものだと思い込んでいて、それでそういう曲になっていたと思います。でも、個々が技術を持っていて主張が強かったから、バンドで合わせるとどうしてもバランスが悪くなってしまって、アレンジをまとめるのに時間がかかってしまっていたんです。そこで、僕がPCでデモを作って、そこに肉付けしていくやり方を取るようになって、それが今のユアネスの音楽になりました。

――今作の『Shift』は、2018年3月にリリースしたアルバム『Ctrl+Z』と、同じ流れにある作品とのことですけど。

古閑翔平 僕はパソコンで作曲をしていて、パソコンで使うショートカットキーをヒントにして『Ctrl+Z』と『Shift』という作品を作ろうと思いました。『Ctrl+Z』は、間違ったときとか、一つ前の動作を取り消すショートカットキーで、元に戻すという意味があります。そこに『Shift』が付くと、元に戻しすぎた行動、本当は消したくなかった行動をやり直すことができるわけです。

――歌詞の内容も、後戻りできない気持ち、取り消したくなかった気持ちとか、元に戻せたらいいのにとか。そういう歌詞が多い感じがあって、『Ctrl+Z』と『Shift』というタイトルは、そのあたりを絶妙に表現していますね。

古閑翔平 そうですね。歌詞を書いていたら、自然とそういうものが増えてしまったんですけど…。でも、どんな捉えられ方をしてもいいと思って作っているので、聴いた方それぞれが何かを感じてくれれば、それが正解でいいんじゃないかなと思っています。

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