FUKI「心に寄り添える歌を歌っていきたい」サブスク世代の歌姫が表す恋愛観
INTERVIEW

FUKI「心に寄り添える歌を歌っていきたい」サブスク世代の歌姫が表す恋愛観


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年12月11日

読了時間:約10分

 シンガーソングライターのFUKIが5日、3rdアルバム『IN LOVE』をリリース。アルバムより先行配信した「星が降る夜」「大切なひと」が2作連続LINE MUSICで1位を獲得。その後AbemaTV恋愛リアリティショー『私の年下王子さま』タイアップ曲「キミじゃなきゃ」がヒットするなど、“サブスク世代の歌姫”と呼ばれる彼女。本作『IN LOVE』には、新曲の他にデビュー以降の代表曲がリマスタリングして収録され、ベスト盤のような作品になった。「人の心に寄り添える歌を、1曲ずつ大事に歌っていきたい」と話すFUKI。彼女が今作に込めた気持ちを聞いた。【取材・撮影=榑林史章】

いろいろなありがとうと愛が、いっぱい詰まったアルバム

FUKI『IN LOVE』ジャケ写

――アルバム『IN LOVE』は、ここ最近の活動の集大成のような作品ですね。

 そうですね。私のすべてを全部集めましたといった感じで、まさしく集大成のようなものになっていると思います。1stアルバム『LOVE DIARY』でラブをテーマに歌い、2ndアルバム『LIFE DIARY』ではライフをテーマにしました。ラブソングだけを集めたという点では1stアルバムに近いんですけど、2ndでのライフを経たことで、1stの時よりも深みのあるラブが表現されたと思います。単に「好き」という気持ちだけではない、好きの裏側にある気持ちも込められ、少し大人のラブソングになったかなと。

――そんなFUKIさんを支えているのが、サブスク世代と呼ばれる10代~20代の女性だと言われています。定額で何万曲でも好きなだけ聴ける中で、あえてFUKIさんの曲を選んで聴いているわけですが。

 確かにそう考えると、すごく嬉しいことですね。何万曲とある中から私の曲を選んでつぶやいたりしてくれているのは、すごく嬉しいです。私は、愛って「ありがとう」だと思っているんですね。ラブ=ありがとう、みたいな。伝え方や形は違っていても、家族でも友だちでも恋人でも。生まれてきてくれてありがとうとか、一緒にいてくれてありがとう、今までありがとうというのもそうだし。そんな、いろいろなありがとうの気持ちと愛が、いっぱい詰まったアルバムです。是非このアルバムを聴いて、大切なものに気づいてもらって。大切な相手に気持ちを伝えてもらえたら嬉しいです。

――「In Love」は、コーラスがふんだんに入った、広がりの感じられる曲ですね。

 「In Love」は最後にレコーディングした曲なんですけど、愛に包まれた感じにしたくて、コーラスをいっぱい重ねました。歌っても歌っても「まだあるんだ」って感じでしたけど(笑)。いつもは、こんなにコーラスを入れることもないし、バンドサウンドだったりとかするので、初めてのタイプの曲ですね。

――歌詞は、片思いっぽいですね。でも、曲全体には温かみのある感じ。

 歌詞はリアルな私の心境で、私は好きになっても、なかなか気持ちを伝えられないんです。最初は言えなくても伝えられなくても、好きな気持ちだけで良かったのに、それだけじゃ足りなくなって、愛が溢れてしまうという心情を書いています。気になる人がいても、私のアタック方法は相手のインスタに“いいね”するだけみたいな(笑)。日常の中で、好きでもがいている様子を書きました。片思いだからハッピーではないんですけど、好きという気持ちを書いた曲なので、切ないものよりは温かい感じがいいなと思ってこういうサウンド感になっています。

――また「あと少しだけ」は、一転すごく切ないナンバーです。

FUKI(撮影=榑林史章)

 私は、何かを手に入れた時の気持ちよりも、手が届きそうで届かなかった時の気持ちのほうが、人生で強く残るものなんじゃないかと思っていて。恋愛に限らず、例えばあと少しだけ足が速かったらリレーの選手になれたのにとか、あと少しで届かなかった悔しい思いのほうが残ってる気がして。その経験があるからこそ、次は頑張ろうとか、今あるものや今一緒にいてくれる人を大切にしようって思うし。そういう、あと少しという気持ちにフォーカスして書いた曲です。

――ストリングスとピアノをメインにしたバンドサウンドもしっくりきますね。

 プロデューサーのEIGOさんと、この曲はストリングスを入れようとか、曲ごとに話し合いをしながら作っていって。ストリングもすべて生演奏で入れていただいています。やっぱり生のほうが聴いて気持ちいいし。今作はラブソングを主体にしているので、生楽器のサウンドがよりマッチして届いていただけるんじゃないかと思います。

――寒いからこそ感じる温かさみたいな、冬独特の季節感が感じられますが、そこは意識したところですか?

 はい。だいぶ意識しています。もうだいぶ寒くなって、クリスマスも近い時期で、きっと人恋しくなるようなところがあると思って。音作りも歌詞にもそういうものを込めています。

――「Christmas Time Again」という曲もありますね。

 クリスマスっていうイベントは、私の中ではハッピーなだけではなくて、切なさもあると思っていて。それは寒さによるものなのか何なのか、分かりませんけど。そういうハッピーさと切ないイメージの両方を同居させたくて作りました。

――クリスマスに切なさを感じるのは、どういう部分ですか?

 寒い時に夜とか1人で歩いていて、イルミネーションを観ていると、胸がキュンってなるんです。夏の夜に歩いていても、「ああ暑いなあ」って思うだけですぐ帰っちゃう。でも冬だと「寒いな~」って思って、それで誰かのことを思ったりとか、そういう気持ちになることが冬のほうが多いと思って。特にクリスマス時期は、みんなが恋人や大切な人のことを思っていると思うので。

――歌詞では、誰かを待ってる様子がうかがえますね。

 この主人公は大切な人と過ごしたクリスマスの経験があって、何かあってその人と離れてしまったんだけど、クリスマスになるとその人のことを思い出してしまうっていう歌です。この曲は、クリスマスのテーマソングみたいな。たくさんあるクリスマスを代表するJ-POPの名曲と並ぶような曲になったらいいなと思って。

――歌詞には<きみ>とか<あなた>とか相手のことは出てくるけど、<私>という言葉は出てこないですね。

 これはデビューの時からそうで、何かを意識してそうしているわけではないんですけど。でもきっと、聴く人が自分のことと思って聴いて欲しいから、<私>って出てこないのかもしれないです。気づいたら、自然とそうなっていました。こういう取材で、そのことはよく聞かれますけど、いつも何でか分からないままです(笑)。

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