浅井健一率いる4人組ロックバンドのSHERBETSが11月14日、東京・TSUTAYA O-EASTで全国ツアー『20th Anniversary Tour 2018「8色目の虹」』のファイナル公演をおこなった。結成20年を記念し10月にリリースされたベストアルバム『8色目の虹』を引っさげて、10月27日の福岡 DRUM Be-1を皮切りに、全国8公演をおこなうというもの。新曲「愛が起きてる」などダブルアンコール含め全26曲を熱演。訪れたオーディエンスをSHERBETSの音の渦に巻き込んだ。“ビッグハート”に満ちたツアーファイナルの模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

朝まで騒ごうぜ!

浅井健一(撮影=岩佐篤樹)

 デビュー20周年を記念したこのツアーも、この日を持って終幕を迎える。進化し続けるバンドの姿を目と耳に焼き付けようと多くのオーディエンスが集まった。BGMの音が鳴り止むと、名曲「Over the Rainbow」が会場を優しく包み込んだ。その中をゆっくりとメンバーがステージに登場。オープニングを飾ったナンバーは「トカゲの赤ちゃん」。浅井健一(Vo、Gt)が歌い始めるとフロアから歓声があがった。静から動へと流れていく曲の展開は真っ赤なライティングも相まって高揚感を与えてくれる。序盤からSHERBETSの持つ唯一無二の世界観で満たした。

 「朝まで騒ごうぜ!」と投げかければ、オーディエンスからも大きな歓声が返される。「はくせいのミンク」に続いて、披露されたのは小媒体のインタビューでSHERBETSの自信にもつながったと語ってくれた重要ナンバー「グレープジュース」を演奏。福士久美子(Key、Cho)が奏でるキーボードの音色に、浅井のフィンガーピッキングによるアルペジオが、更に深いところまで我々をいざなってくれるナンバーの演奏終了後には、フロアから拍手が降り注いだ。

 4人の奏でる音の渦に飲み込まれていくような感覚を与えてくれた「Michelle」や、ガラスのようなエッジの効いたギターサウンドが印象的な「STRIPE PANTHER」と届け、ここで仲田憲市(Ba)が「みんなのおかげで成り立っています」とこの20年間の感謝を告げる。その仲田と外村公敏(Dr)のグルーヴが会場を支配した「チャームポイント」では、オーディエンスも腕を掲げ、そのサウンドに体で応えていた。外村は「我々も野を越え、山越え、谷を越えていろいろ経験してきました。20年ありがとうございました」と集まったオーディエンスに感謝。

 ここからは「フクロウ」や「水」といったミディアムナンバーを立て続けに披露。福士の歌声が彩った「GREEN」。現実を忘れさせてくれるような、幻想的かつ壮大な空間を作り上げ、このライブのフックとなっていた。福士はこの20年間について「必死にやっていたら20年間が経っていました。笑ったり、泣いたり、ケンカしたり、いたずらしたり…でも、音楽だけには(みんな)真剣で純粋にやってこれて、毎回大好きだなと思える音楽が作れて、今日までこれたことがハッピーです」と振り返った。

 福士が「今日は歌ったり、踊ったり楽しんでいきましょう」と告げ、どこかこの20周年を称えるかのような光景にみえた「A BABY」、外村の躍動感あふれるタムタムを使用したイントロのドラムが起爆剤となった「Rainbow Surfer」はオーディエンスもクラップで演奏の一部となり、ライブならではの一体感を作り上げた。ニューウェイブな妖しさも感じさせるサウンドが中毒性をもたらす「LADY NEDY」と、ライブも佳境に突入。

みんなで踊ろうか

SHERBETS(撮影=岩佐篤樹)

 ラストスパートといった感じで、ボルテージが高まっていくなか投下されたのは、アグレッシブなロックナンバーでSHERBETSのデビュー曲「HIGH SCHOOL」。福士も浅井と同じグレッチのギターを抱えツインギターで煽り立てた。クラウド・サーフィングも起きるほどの盛り上がり見せ、さらにその熱をブーストさせるかのように「ジョーンジェットの犬」とロックバンドの真髄を叩きつけた。

 浅井は「みんな20年間ありがとう!」と告げるとフロアからの称賛の声に「アルバム作ろうか…」と仲田に向かって少し照れくさそうにポツリ。歓声が上がるなか本編ラストは先月リリースされたベストアルバムに収録の新曲「Yesterday」を叙情的に歌い上げた。徐々に熱を帯びていく至高の演奏で締めた。

 ミラーボールが光を反射させるなか、アンコールに応えメンバーがステージに再び登場。浅井はハットを被り「みんなで踊ろうか」と投げかけるとフロアから「ベンジーも踊って」の声。この言葉に浅井は「踊るよ。じゃあ全員で踊らないかんことにしようか」と話し、MVでのメンバーによるダンスも話題となった新曲「愛が起きてる」を演奏。SHERBETS流ディスコティックサウンドを響かせた。外村はドラムから離れステージ上をノリノリで踊り、浅井の「考えるのやめよっか」の一言から、オーディエンスも無心に本能の赴くまま自由に体を動かし楽しんだ。

 アンコール3曲目に披露した「ひょっとして」の演奏を終了し、メンバーはステージを後にしたが、鳴り止まなぬアンコールに再びステージに姿を現す。浅井は「SHERBETSの曲で異色の曲って何だと思う?」とオーディエンスに問いかける。フロアから様々な曲名があがるなか、浅井は「『Baby Revolution』でしょ」と話し、さらに来年1月に世界的美術作家の奈良美智が描く絵本『ベイビーレボリューション』が発売されることを発表し、会場を沸かせた。

 ラストは「星空の方があったかい」を演奏。アウトロに向かう前のブレイクから放たれたサウンドは、ビッグバンを彷彿とさせる衝撃。すべてを浄化させてくれるようなサウンドで満たされるなか、ライブ大団円を迎えた。浅井は「またどこかで会おうぜ!その時まで全員元気で」とダブルアンコール含め全26曲、SHERBETSの20年間を約2時間半で駆け抜けた『20th Anniversary Tour 2018「8色目の虹」』の幕は閉じた。

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