浅井健一&TIK、“ぐっさり”と突き刺す唯一無二のサウンドで魅せた恵比寿の夜
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS(撮影=岩佐篤樹)
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSが3月29日、東京・恵比寿LIQUIDROOMで全国ツアー『METALLIC MERCEDES TOUR 2019』の東京公演をおこなった。今年の2月にソロ名義で「HARUKAZE」と「ぐっさり」の2曲を配信リリースし、3月9日の静岡・浜松 窓枠を皮切りに、4月13日の沖縄Outputまで全8公演をおこなうというもの。BLANKEY JET CITYの「ガソリンの揺れ方」や新曲「Precious」などダブルアンコール含め全22曲をエッジの効いたロックサウンドでオーディエンスを魅了。東京公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】
新曲「Precious」を披露
ツアー7本目、セミファイナルとなった東京公演には、多くのオーディエンスが集結。早く本物のロックスピリッツに触れたい、そんな期待感がフロアから高まるなか、3人がステージに登場。歓迎の声がフロアから3人に放たれ「Turkey」でライブの幕は開けた。小林瞳(Dr)のエネルギッシュな2ビートに、中尾憲太郎(Ba)の骨太のベースが絡みつき、ベンジーのソリッドでエッジの効いたギターが空間を切り裂く。序盤からアクセル全開の高いテンション突き進む。
オーディエンスも腕を掲げ、身体を揺らし、各々の楽しみ方で盛り上がる。ベンジーは「今日は観に来てくれてありがとう! 朝まで騒ぐぞ!!」と投げかけ「HARUKAZE」を投下。バイクで風を切るかのような爽快なサウンドに、心情を吐露したかのような言葉たちがLIQUIDROOMに降り注ぐ。そして、BLANKEY JET CITYのナンバーから「ガソリンの揺れ方」を披露。マーシャルから放たれる鋭いサウンドと独特のフレージングで、オーディエンスの感情を揺さぶり掛ける。
グレッチからレスポールにギターをチェンジし、PONTIACSのナンバーから「RED BEE」を披露。妖艶でアンニュイなロックサウンドで会場を満たし、続いて、中尾のピッキングニュアンスがリアルに伝わってくるベースと、小林のタンバリンから始まるイントロが空気感を変えた「スケルトン」。アダルティなナンバーで、ベンジーの色気のあるギターと歌声を堪能。このライブのアクセントとなった1曲。
ここでベンジーがギターをチューニングしながら「新曲やるわ。大人びた曲なので…」と新曲「Precious」を披露。小林による派手さはないが渋いグルーヴと艷やかなコーラス、中尾のメロディアスなベースフレーズ、そこにベンジーのショートディレイが効いたギターが絡み合い、独特な世界観を作り出していく。新曲ということもありオーディエンスもしっかり耳を傾け「Precious」をじっくりと堪能。ライブに新しい風を送り込んでいた。そしてソロ1stシングルの「危険すぎる」、スカのビートで心も体も弾ませた「ハノイの彫刻」と立て続けに演奏し楽しませた。
平成が間も無く終わりを告げることにベンジーは「感慨深いものがあるね」と一言。飛び交うオーディエンスの声にも応えながらも「紙飛行機」へ自然な流れで突入。真理を突く、ベンジーの真骨頂とも言えるメッセージ性の強い歌がフロアへと流れ込んで行く。これから始まる新しい時代へ入るに当たり、考えさせてくれるような時間だった。
どの場所も最高だった!
シャッフルのブギービートが胸を打つBLANKEY JET CITYのナンバーから「DERRINGER」。ベンジーはマシンガンのようなスピードピッキングで、我々をヒートアップさせてくれる。そして、叙情的なギターアルペジオから始まった「ぐっさり」。現代社会への痛烈なメッセージを曲に乗せて届けていく。続いて、希望の光を感じさせてくれた「すぐそば」は、目の前が拓けて行くような感覚を与えてくれた。
脳天直撃のクールなナンバー「Watching TV ~English Lesson~ 」から後半戦へライブは突入。呼吸をするのを忘れさせてくれるほどスピーディーな「Vinegar」へ。その狂乱ともいえるパフォーマンスはエンディングに向け、どんどん熱を帯びていき、会場の温度もうなぎ登りに上昇。そのお互いの熱で溶け合いステージとフロアが一体化していくかのような瞬間がここにはあった。止まることなく「愛のChupa Chups」、「SKUNK」と盛り上がり必至のナンバーを畳み掛けていく3人。しかし、ただ激しいだけではない、その激しさの中にも侘び寂びを感じさせる演奏だ。本編ラストは美しく散るために何をすべきか、そんな事を考えさてくれた「Beautiful Death」を披露し、18曲をフルスロットルで駆け抜けステージを後にした。
オーディエンスのアンコールを求める声とクラップが響き渡る。まだまだ盛り上がりたい、そんな思いがこちらにも伝わってくるアンコールだ。その声に応え再びステージに3人が登場。ツアーを振り返り3人は「どの場所も最高だった!」とツアーの充実感を伝え、ベンジーと小林のコーラスの掛け合いが印象的な「Fried Tomato」、BLANKEY JET CITYのナンバー「ロメオ」、JUDEのナンバーから「DEVIL」の3曲を演奏。言葉なんていらない、オーディエンスも3人の音を肌で感じ、ボルテージは最高潮まで高まっていった。
客出しのBGMが鳴ってもその場から動かないオーディエンス。再びアンコールを求めるクラップを打ち鳴らすと、ダブルアンコールに応え、3人がステージに。歓声が上がるなか、ベンジーは「じゃあ最後にもう一曲、朝まで騒ぐぞ!」とBLANKEY JET CITYのナンバーからアドレナリン放出の1曲「PUNKY BAD HIP」を披露。<世界が終わるまで待っててBaby>とシンガロングし、3人とオーディエンスで世界で一番熱い空間を作り上げた。ベンジーは「ありがとうね」と感謝を告げ、笑みを浮かべステージを去った。
この3人での演奏は本当に心躍らせてくれるものがある。聴けば一発でわかるロックの格好良さや魅力が浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSの演奏には詰まっている。会場を出ると体感した誰もが清々しい顔を見せていたのが、このライブが素晴らしかったことを物語っていた。5月29日にはシングル「METALLIC MERCEDES」のリリースと、6月からは東名阪CLUB QUATTROツアー『INDIAN SUMMER QUATTRO GIGS』がおこなわれる。今年の夏も熱くなりそうだ。