高岩遼はスターでなければいけない
——ビッグバンドではない「My Blue Heaven」を最後に収録した理由は?
この曲はトリオ(ピアノ、ベース、ドラム)でライブ録音しています。ドラムの橋詰大智は僕の大学の同期なんです。彼はナンバーワンのジャズマンだと僕は思っています。素晴らしいドラマーで、彼とジャズのライブを続けてきました。この3人は僕が小さいライブハウスでジャズスタンダードを歌う時の編成なんですよ。彼らをビッグバンドのメンバーとして選ばなかったのはスタイルの違いですね。彼らが演奏しているのは『ビーバップ』というスタイルなので。
ビーバップはオーセンティックなビッグバンドとはちょっと違うんです。彼らの才能を知っているから、あえてメンバーとして呼びませんでした。でもスタンダードは入れたくて。それがこの「My Blue Heaven」なんです。昔日本で流行って、おじいちゃんおばあちゃんが「懐かしいね」と言う様な曲。それってアメリカが戦争で日本に勝ち、アメリカの文化が日本に流れ込んできたからなんですよね。そのまま服だったり、街並みだったり、流行に影響していって。そういう時代背景とジャズ、そして僕の人生が関係し合うんです。
日本男児を語りたいんだけど、自分が生まれ育った音楽や好きなものはアメリカ文化だったり。そこにいつも葛藤があるんですよ。この曲は「そういう葛藤はあるけど、おうちは最高だよね」という歌なんです。だから英語で歌ってから日本語で歌って、まさに高岩遼だなと。それでいて策略的ではなく、チャーミングに聴こえる様にも気を付けました。やっぱり最後は、自分の今までやってきたものをぱっとやって「さあお家に帰ろうか」という仕上がりにしたかったんです。
——ソロ作も出して、様々な音楽形態を経ていますが、今後の活動は?
高岩遼はスターにならなければいけないので、高岩は常にスター街道を上っていくと思います。そしてSANABAGUN.とTHE THROTTLEというバンドを死ぬまでやり続けます。それからSWINGERZというチームと同じ名前のジャズクラブを原宿に作ります。カジノができる様な場所を。それがSWINGERZのもともとの目標なんです。ジャズクラブのオーナーになりたくて。でも何よりこのアルバムがやっているバンドよりも飛び抜けて売れていないとダメだなと思うんです。僕にバンドが引っ張られていく、それが格好いいんじゃないですか。男としても。
——高岩さんの男気は、どこから沸いてくるのですか。
高校までの人生じゃないですかね。育ち方とか。バリバリの体育会系だったというのもあるかもしれないです。僕は小学校の時、合気道をやっていて、中学は柔道部でした。高校はラグビー部。応援団にも入っていたんですよ。100年前の学ランを着る様な伝統校で、鉢巻きもすごい長くて(笑)。実はラグビーで大学の推薦とかも来ていて。本当はそういう道もあったんです、どこかのクラブチームに入ってみたいな道が。そういう環境で生きてきたということが今の自分に影響していると思います。でも小学校2年生からピアノもずっとやっていたので、そこが音楽の原点としてもある。
——元ラガーマンが音大でフランク・シナトラなどを学ぶみたいなことは、あまり聞かないですよね。
いないと思いますよ。僕って根暗の部分もあるんです。家に帰ってそれしか聴かない、みたいな。ジャズとかヒップホップ、ソウル、R&B。好きな音楽が僕の唯一の安らぎでしたね。それでいて田舎だから、イメージがどんどん膨らんでいくんです。東京の現実を知らないわけですから。「かっこいいわあ」とだけ考えて、上京して。でも東京に来たら来たで、そんなイメージがまだ広がっている感じもありますが。
——今音楽的に興味を持っていることはなんでしょうか?
実はブラックミュージックに飽きてしまっている部分があるんですよ。心の歌ではあるんですけどね。今はもうロックしか聴いてないです。パンクとか。今日聴いていたのはZZトップ(米バンド)。テキサスのスーパースター。単純にいいんです。今は敢えて、昔、車の中で流れていた様なロックとかを聴きに行く感じです。スケボーもずっとやっていたんですけど。スケボーとロックってリンクしていますよね。僕もそのリンクがわかってきた様な気がします。ハードコアも聴いていますし。これから、さらに音楽の幅が広がっていくんじゃないですか。
——では、最後に読者に一言お願いします。
18歳の時の目標がようやく産み落とされました。とにかくいいアルバムになったので、とりあえず聴いて欲しいです。1曲ずつじゃなくて、アルバム通しで。12月12日に渋谷CLUB QUATTROでリリースパーティもあります。なかなかビッグバンドのライブを見る機会もないので、イメージしにくい方もいらっしゃるかもしれませんが。派手にバーンとパーティ開くので是非来てください。
(おわり)