JUONの考えに迫る「自分の歌とギターを表現したい」文脈にあるEDMとロック
INTERVIEW

JUONの考えに迫る「自分の歌とギターを表現したい」文脈にあるEDMとロック


記者:木村武雄

撮影:

掲載:18年11月06日

読了時間:約15分

ロックとEDMの融合、聴かせたいのは声とギター

――2年ぶりのアルバムとなりました。

 間(あいだ)が空いた感じがしない、というのが正直な気持ちです。

――それだけ、この2年間は充実していたということでしょうか。

 そうですね、充実して濃厚でした。いま、「2年振り」と言われて「時間が経ったんだな」と気付いたぐらいです。12年間、FUZZY CONTROLでやってきて、こうしてソロでやらせて頂く機会をもらえて。全て自分一人でやらなければいけないのがソロですが、新しいジャンルに挑戦した2年間でもありました。ロックとダンスミュージックを融合させて、自分の歌とギターを活かして新しい世界に行きたい、ということを試行錯誤して、一つ一つが新鮮でした。今まで経験することがないことを経験する毎日でしたから時が早く過ぎたんだと思います。

――バンド時代とは打って変わったサウンドに「驚いた」という声もありますが、周りの反応はいかがでしたか?

 なかなか振り切ったな、と自分でも思いますね。みんなの反応は、「いいね!」という人もいれば、どういう風にこの音楽を自分の中に取り込めばいいのか、と時間がかかる人もいました。

――なぜEDMを取り入れようと思ったのでしょうか。

 それは、ソロを始めるときに「自分はソロで何ができるのか」ということを考えたからですね。当時、家で毎日ラジオを聴いていました。それは在日米軍向けのラジオだったんですが、そこではアメリカの、しかも昔の流行歌や今のトップ40がずっと流れていて、自然とアメリカの流行音楽が知れて。その中で聴いたことがない音楽がありました。それがAvicii、ZEDD、SKRILLEX。聴いたときに「これ何?」と思って。

――相当な衝撃だった?

 そうですね。でも、もともと両親もミュージシャンで、父がギタリストで、母がボーカリストで女優。音楽を聴く環境には恵まれていたんですよ。家族が聴かせてくれた音楽は、ロックだけではなくて、The Beatles、Carpenters、Jimi Hendrix、The Rolling Stonesなど、オールジャンルでしたし。

 彼らを知った後にEDMについていろいろと調べて、色んな要素が詰まって新しいやり方で昇華したものがEDMという音楽になったのではないかと思うようになって。そもそも、彼(ZEDD)らはバンド上がりだったんですよ。だから彼らの音楽は、バンドマンやアーティストも心をくすぐられるというか。いわば、プレイヤー化しているDJです。ただ音源を流しているだけのDJではないという。

――生音とEDMは別物と捉えがちですが、実は歴史として繋がっていて、サウンド、演奏としても密に関係しているということですね。

 これは避けて通れない道だと思うんですよ。今の固定概念として世間が捉えているEDMというか、人の音源を流しているのとは異なる観点と言いますか。もちろん、それぞれに良さはあると思います。ただ、今自分が目指しているのは、自分が培ってきたロックと、ダンスミュージックというものを融合させた音楽です。なので、ただロックだけを聴いていたのではないという「奥行き感」を作曲に生かしていきたいと思いました。

――EDMとロックを融合させてガラリと雰囲気を変えたのがファーストです。それに対してセカンドの今作はややロック寄りになったような気もしますが。

 その通りです。ファーストは、バンドの時はロックが100%だったから、あまりロックに比重が寄らないように作りました。それまで生音に囲まれてボーカルをやっていたので、デジタルサウンドのオケの中で自分が歌うということがしてみたくて。

 結果、それをやったことによって、聴こえなかった自分の声が聴こえてきたんです。生音って自分の声と似たところがあって、生音が自分の声をかき消すんです。でもデジタルの音の中で自分が歌うと、今まで消されていた部分が浮き彫りになって。これまでにはない声でレコーディングができたという充実感がありました。

――それはアナログとデジタルの信号の違いですか?

 けっこう違いはありまして、生音というのは空気が入っているんですよね。デジタルは生音に比べると空気が入っていない状態というか。デジタルの音は自分の声にぶつからないでレコーディングができるということが大きな違いでした。ギターもそうでした。海の中に浮かぶものと沈むものの違いくらいのものです。沈むものが生音で、浮かぶものがデジタルなんじゃないかなと。水と油の良さ、交わらない良さというか。それぞれの魅力を楽しんでやっているのが大きな違いなのかなと。

 レコーディングをしているときに、デジタルのサウンドに自分の声が乗ると、今まで聴いてきた自分の声とは違う自分の声を発見できた。10何年も歌ってきていまだに自分の新しい声に気付くというのはラッキーなことなんじゃないかなと思います。更新していったというのは自分の大きな経験になったなと思っています。

――この2年のなかで、「“あいしてる”って言えなくて」という、NIVEAのCM曲がありましたが、これはボーカルを重視されています。先ほどの話は関連していますか?

 あのときの音楽も全部打ち込みでやっていて、ピアノだけが本物なんです。その頃から、ボーカリストとしての新たな発見は感じていて。「“あいしてる”って言えなくて」は上手くいった感じですよね。あれがもし全部生音の中で歌うことになったらまた聴こえ方が違ったかもしれない。ドラムもベースも打ち込みだったから、自分が今やっているスタイルがブレなかった。

 要は、自分の歌と自分のギターを聴かせたいんですよね。そういう意味ではギターボーカルなんだなと思っています。ギターボーカルを聴かせるためには、生音に入った歌の方がいいのか、デジタルの中で染まった歌の方がいいのか。自分が「良い」と思ってリスナーに聴かせるため、そういう選ぶアイテム、あるいはアンテナとしてそういうのが必要というか。

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