身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成
INTERVIEW

身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年11月01日

読了時間:約14分

1年半山ごもりして制作

KYONO


──『YOAKE』というタイトルは、ラウドロックのシーンに新しい風を吹かせたいという気持ちから?

 それは常にあって、作品を出すたびにそういう気持ちでいます。今回自分の初めてのソロという部分で、自分にとっての新しい夜明けというイメージもあったし。覚悟と言うか…ソロ名義というのは、やっぱりそういうものがすごく必要なんです。以前はソロ名義って考えたこともなくて、ソロプロジェクトだとしてもずっとバンドの名前でやっていたから、そこでKYONOという名前で出すのは、身ぐるみはがされたような気分なんです。裸の状態と言うか、逃げ道がない。でも、だからこそ、そういうことを50歳になる前にやってみよう、と。そういう新しいことを始めるという意味も込めて、『YOAKE』というタイトルが合っているんじゃないかと思いました。

──30年のキャリアが自信になった?

 自信と不安が半々ですけどね。自分では自信たっぷりに作ったけど、果たしてどこまで受け入れてもらえるか、常に不安があります。だからこそ、自分が心底いいと思うものをとことんまで追求して作れたら、どんなに楽しいだろうと思って。

──30年活動を続けるのはエネルギーがいることだと思います。その部分でモチベーションになったもの、背中を押し続けてくれたものは何でしょうか?

 音に対する好奇心です。1曲できあがるごとに、これはヤバイものができたと思えたし、それが自分にとっての刺激になっていった。やればやるほど、どんどん良くなっていく手応えもあったし。単純に作っていること自体が、何よりも楽しかったんです。その上で、それを聴いた人が、どういう反応をしてくれるのか、その顔が見てみたいというワクワクもあったし。自分の世界観だけで作品を1枚作ったら、また違ったものが見えてくるんじゃないかというのもあったし。

──音楽に対する欲求が実現していく楽しさが、自分を動かしていたわけですね。

 脳内でイメージしていたものが、形になっていくのはすごく楽しいです。今作は1年半ぐらい、ほとんど山ごもりしているような感覚で、夢中になって作っていて。作業の終わりが見えてきたころは、ちょっと寂しかったくらいですから(笑)。

──まるで、プラモデル作りに熱中している少年ですね。もっとリアルに見えるように、傷を付けたり汚したり工夫して。できたらみんなに「どうだ!」って見せたくなるみたいな。

 ああ、まさしくそういう感じだと思います。自己満足の部分がすごく大きい(笑)。でもやっぱり分かりやすさも、大事だと思っています。結局、自分が中学生のころに好きだった音楽も、メロディがポップだったものが多かったし。誰も気づかないような細かいところを突き詰める部分と同時に、誰でも聴いてもらいやすい分かりやすさも意識しました。

──どういう人に聴いて欲しいですか?

 自分ではあまり聴いてほしい層を意識はしていないけど、小学生から50代60代でも、幅広く聴いて欲しいですね。小学生って聞くと「え?」って思うかもしれないけど、自分も小学生でビートルズを聴いていたし、デビュー当時から聴いてくれていた世代が今は親になって、家で聴いていて自然に子どもも聴いているという話を聞きますし。先輩のミュージシャンは50代や60代も多いので、そういう人にも聴いてほしい。

──昔は、こういう音楽を今の年齢までやっているとは?

 まったく思ってなかった。20代のころは、いつ辞めようかということばかり考えていました(笑)。でもここまでやったら、こういう音楽で死ぬまで歌い続けていたいです。商業的な意味ではなくて、どういう場所であっても、単純に歌い続けられたら幸せだろうなって思います。バーとか、酒を飲みながらゆっくり聴くのも自分は好きなので、もっと年齢を重ねたらそういうのもいいかなって思います。

(おわり)

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