身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成
INTERVIEW

身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年11月01日

読了時間:約14分

 ロックアーティストのKYONOが10月17日、初のソロアルバム『YOAKE』をリリース。現在の日本ラウドロックシーンの礎を築いたとも言われる、THE MAD CAPSULE MARKETSの中心人物として2006年まで活動。その後、ソロプロジェクトWAGDUG FUTURISTIC UNITYを立ち上げ、2007年にDJ STARSCREAMとコラボした楽曲「HAKAI(Deathtroy)」で、映画『デスノート the Last name』のトリビュート・アルバム『The songs for DEATH NOTE the movie〜the Last name TRIBUTE〜』に参加した。現在はWAGDUGと並行し、ハードコアバンドのT.C.Lでも活動している。今作は、Tokyo Tanaka (MAN WITH A MISSION)、JESSE(RIZE / The BONEZ)、MAH(SiM)が参加した3曲を含む、ラウドロックの新しい時代の幕開けを感じさせる1枚。KYONOは「自身の音楽人生を集大成した作品を作りたかった」と言い、これまでの自分を突き動かしてきたのは「音に対する好奇心と、聴いた人が、どういう反応をしてくれるのか、その顔が見てみたいというワクワク」であると話す。自身の音楽ルーツも含めて、今作に込めた想いや、JESSEらとのコラボについて話を聞いた。【取材・撮影=榑林史章】

自分の音楽の集大成

『YOAKE』ジャケ写

──今回どうしてソロ名義でアルバムをリリースしようと?

 MAD CAPSULE MARKETSを2006年に休止して、すぐにソロプロジェクトのWAGDUG FUTURISTIC UNITYやバンドスタイルのT.C.Lなど、いろいろなことをやりつつ10年くらい経ちまして、今また思い切りポップなものを作ってみたくなったんです。もともとMADをやる以前から、自分の中にはそういう部分があって。そういう初心に、今改めて帰ってみようと思ったところもあって、トータルで今までの自分を全部含めた作品を出してみようと。

 集大成まではいかないけど、改めて自分を集約した作品を作ってみたくなったんです。自分の中にある、メロディや音楽を振り絞ったものと言うか。1つ個人名での名刺みたいなものを出しておきたくなった。それは年齢もあるかもしれなくて、50歳になる前にそういうものを出しておきたかったんです。

──今作『YOAKE』は、爆音の中にキラッとしたポップなメロディが入ってくるキャッチーさがあって。MAD時代の曲を彷彿とさせる部分もあり、そこはいい意味で変わっていないな、というのが第一印象でした。

 結局、そういうものが好きなんです。単にポップなものや普通の歌メロのものも作れますけど、それだけだと刺激がないんです。つまらないとまでは言わないけど、自分は物足りなさを感じてしまう。他のアーティストの曲なら、そういう曲も聴きますけど、自分で作るものに関しては、ひとひねりしたくなってしまうんです。

──そもそもどういう音楽から、影響を受けてきているんですか?

 兄貴がいたので、その影響で小学生のころからビートルズを聴いて、同時期にYMOが流行っていて、すごく好きでした。中学に入ってからは、洋楽を主に聴くようになって。初めて買ったレコードは、ジャケ買いだったんですけど、クワイエット・ライオット(米バンド)の「カモン・フィール・ザ・ノイズ」という曲が入っている『メタル・ヘルス』というアルバム。スリップノット(米バンド)みたいなマスクをかぶった人が全面に描かれているやつです。それと、エレクトリック・ライト・オーケストラ(英バンド)のアルバム『シークレット・メッセージ』は、ラジオで聴いて好きになった曲が入っていたので買いました。

 80年代は、洋楽のいろんなバンドがダンスミュージックを取り入れるようになっていて、ローリング・ストーンズの「アンダーカヴァー・オブ・ザ・ナイト」とか。ザ・クラッシュ(英パンクバンド)の「ロック・ザ・カスバ」という曲もそうで、それがすごく好きだったんです。パンクも好きでたくさん聴きましたけど、やっぱり根本は、メロディがあるものが好きで。そういう自分の好きな感じが、このアルバムにはよく表れていると思います。

──今作では、「YOAKE feat. Tokyo Tanaka (MAN WITH A MISSION)」、「BREED feat.JESSE(RIZE / The BONEZ)」、「EQUAL SOCIETY feat.MAH (SiM)」と、コラボ曲を3曲収録しています。非常にインパクトのある3組ですが、ラウドロックの後輩ということになるんでしょうか。

 そうですね。年齢はみんな下ですけど、あまり上下関係みたいなものは感じていないです。JESSEは、彼がまだ中学生になるかどうかくらいの年齢のころからMADのライブを観に来てくれていて、ギターにサインしてあげたこともあった(笑)。『SUMMER SONIC』など、同じフェスに出演したこともあったし。

──こういうコラボは、KYONOさんサイドから提案を?

 そうです。今回の3人は、ボーカリストとして独立した存在感を持っていて、声を聴いてパッと誰だか分かる個性を持っている。それに全員知り合いだったから、お願いしやすかったのもありますけど(笑)。

 MAHくんは、自分のT.C.Lというバンドで、SiMと対バンをしたことがあったし、知り合いを通じてそもそも顔見知りでもあって。Tokyo Tanakaとも、知り合いのブランドの人の紹介で知り合って、イベントのバックステージで話したりしていて。今回誘うにあたって、改めて会ってじっくり話した感じです。

──相手側は、恐縮していなかったですか?

 まあ最初はあったかもしれないけど、僕は対等な立場でやりたかったし、スタジオに入れば同じミュージシャンなので、変な気の使い方はなかったです。ただオファーを受けた時は、びっくりしていたみたいです。みんなKYONO名義のソロ作品だとは思わなかったみたいで、「WAGDUGですよね?」って、必ず聞かれました(笑)。

──コラボの曲は、KYONOさんがトラックを全部作って?

 「EQUAL SOCIETY feat.MAH (SiM)」は、デモを作って渡して、歌ってもらうところを指示して。MAHくんからも、ここをこうしたいとかアイデアを出してくれて、メロディや歌詞を変えたところがあります。全部データのやりとりで、デモから発展させていきました。JESSEとTokyo Tanakaは、デモを聴いてもらった上で、スタジオで「どうしましょうか」みたいな感じで、現場で歌ってもらいながら一緒に作っていきました。最初から決め過ぎず、臨機応変に対応していった感じです。

 みんな才能のある連中なので、すごくスムースでしたよ。こちら側から「もっとこうして欲しい」みたいなことはほとんどなくて。「いいね」って感じで、どんどん進みました。彼らの声とか持ち味は分かっているので、曲作りの時点でイメージもできていたし。

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