身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成
INTERVIEW

身ぐるみはがされたような気分、KYONO シーンに新たな風を吹かせる集大成


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年11月01日

読了時間:約14分

打ち込みだけど生音に近づける

KYONO(撮影=榑林史章)

──「BREED feat.JESSE(RIZE / The BONEZ)」はレゲエっぽくなるパートがあって、JESSEさんっぽいですね。ミュージックビデオも海の断崖でドローン撮影していて格好良かったです。

 ポジティブなイメージの曲にしたくて、僕の中でJESSEは存在自体がすごくポップでポジティブなイメージがあったので、きっと合うんじゃないかと思って。MVは、海岸で撮るのは最初からイメージしていたんだけど、撮影許可が下りた場所があそこだったので。でもあれはあれで、すごく崖っぷち感が出ていて(笑)、気に入っています。

──「YOAKE feat. Tokyo Tanaka (MAN WITH A MISSION)」は、全編サビしかないみたいなポップさがあって、すごく格好いいですね。

 途中の目立つところで、5弦ベースが出てきたりしますけどね。ハモリを細かいところまで工夫したので、それでポップさが出ているんじゃないかな。バランスって言うか。低音も高音も僕がハモっているんですけど、鳴り方とか定位とか。それはどの曲もゲストボーカルの声質に合わせて、バランスを変えています。MVは、監督のイメージにお任せしました。顔を塗りつぶしてあるのは、特定の人をイメージしてほしくなくて、そこだけそうして欲しいとお願いしました。ちなみに、出ているのは僕ではないです(笑)。

──「EQUAL SOCIETY feat.MAH (SiM)」のMVでは、プロジェクターを当てていましたね。

 スタジオで撮影しました。前から光を当てられるので、けっこう目がやられる系でしたけど(笑)。歌詞にも光と出てくるので、いろんな光の感じを工夫して撮りました。

──今ラウンドシーンのベーシックは、MADやいろんなバンドが作ってきたわけで、そのシーンを今引っ張っている後輩と話して、何か感じたことはありますか?

 思ったのは、俺らがやっていた頃とそんなに変わってないなって。変わったところは、昔に比べてフェスの数が増えたこともあってか、遊びにくるお客さんの層がすごく広がっていること。昔は、やっぱり音楽好きな人がほとんどだったけど、今は昔ならいなかったような人とか、よりいろんな人がロックバンドを観るようになっている。

 海外にも行くバンドが、圧倒的に増えたこともそう。ここ10年で海外から、日本のバンドを呼びたいと思ってくれる人が増えて、それはインターネットのおかげだと思う。動画サイトでいろんなバンドのパフォーマンスを手軽に観られることで、国内だけでなく海外にもどんどん広がっていることを感じる。それも、きっと日本のバンドの質が上がったからだと思うし。それぞれ個性があって、頑張っているのも感じるし。それに今は、普通に英語がしゃべれる人がすごく増えていて、すごいなって思います。

──いい時代になったと思いますか?

 どうなんでしょうね(笑)。そのぶん音の面で、これは個人的な意見ですけど、似たようなバンドが多くて、その部分で物足りなさを感じます。

──この『YOAKE』は、そういう想いに対する、KYONOさんなりの答えも含まれている?

 自分なりに、こういうバンドサウンドがあってもいいんじゃないかと、今までとは違うアプローチをしてみました。

──今回一番こだわったのは?

 デジタルをたくさん使ってはいるけど、あえて生っぽさを強調する作り方をしました。たとえばドラムの音は打ち込みですけど、いかに生ドラムの音に近づけられるか、すごく追求しました。ギターとベースもほとんど僕が自分で弾いているんですけど、アンプで鳴らして録っています。音に関しては、デジタルを使いつつも、できるだけ生音に近づけて、なるべくデジタル感が全面に出ないような仕上げになっています。

──音質やミックスの部分でこだわったということですか?

 そこにいちばん時間をかけました。WAGDUGのミニアルバム『NU RIOT』は、自分と小西さんというエンジニアの2人で録っていて、その1枚目でやっていた音をもっとバンドっぽくしたら、違った格好良さが出せるんじゃないかと思って作ったのが、1stアルバム『HAKAI』です。今回小西さんから、その『HAKAI』でやった音をソロでやったら面白いんじゃないかと提案をもらって。せっかく1人でやるんだし、細かいところまで突き詰めた作り方ができるなと思って。ただそれだけだと自分には物足りなかったので、あえてアンプでギターやベースを鳴らして入れていくというやり方をしました。

──打ち込みと、ギターやベースの演奏も全部KYONOさんが?

 2曲くらい、マニピュレータをやってくれた後輩にサポートで弾いてもらって。これは全曲そうですけど、デモで自分が弾いているギターとベースの音もそのまま入っていて、その上に本番で何本も重ねているんです。それは、ライブをイメージして欲しいと思って。何本も重ねることで、バンドサウンド特有の音圧みたいなものが、感じてもらえると思います。

この記事の写真

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事