NMB48の“さや姉”こと山本彩の卒業コンサート『SAYAKA SONIC ~さやか、ささやか、さよなら、さやか~』が27日、大阪・万博記念公園 東の広場で開催された。グループを牽引してきたエースの雄姿を見届けようと多くのファンらが会場にかけつけ、“みるきー”こと渡辺美優紀や山田菜々らOBも登場。山本は「NMB48だったから情熱を注ぐことができた」と話し、アイドルとしてのラストコンサートを華々しく飾った。

最高のライブを作れたら

 定刻の午後4時を過ぎると、後方のステージに登場した山本。ファンの歓声が響く屋外ステージで、中央に設けられた道を一人、メインステージに向かって歩いて行く。白い衣装が西日に鮮やかに映える。山本の“アイドル”としての最後のコンサートが幕を開けた。

 トップを切ったのは「初めての星」。山本の歌い出しに合わせて後方から同じく白い衣装を着たメンバーが現れる。「転がる石になれ」の歌唱を終えると全員は後方に移動。「ワロタピーポー」「イビサガール」をパフォーマンスし、通路の真ん中で「ナギイチ」のダンスを華麗に舞った。

 ここで、この日初めてMCのマイクを持った山本。午前まで降っていた雨は、山本を祝福するかのように止んだ。「始まる前は責任感もあって、緊張するかなって思ったけど、ステージに出るとすごく楽しいです」と笑顔を見せた山本は、ファンへの配慮をのぞかせながら「最高のライブを作れたら」と意気込みを口にした。衣装チェンジした山本は、山本彩加らと「絶滅黒髪少女」の激しいダンスを披露。「RESET」「孤独ギター」と続けた。

ライブのもよう(撮影=小野眞三)

 続くは生バンドを引き連れた山本のソロ。「ジャングルジム」でしっとりとした情感を届ければ、「抱きしめたい」をハードに歌う。「まだまだ行くぞ!」の山本の威勢の良い掛け声に続き、「孤独ギター」ではギターを提げてアグレッシブに歌唱。チームNのバックダンスが彩りを添え、ロングスカートの山本は髪を振り乱してギターをかき鳴らす。「HA!」まで5曲を一気にエネルギッシュに歌い上げた。

 ここでMCに入り、山本と同じ1期生の吉田朱里は「寂しい気持ちもある」と率直に語るが、「見送られる側にいることが嬉しい、残っててよかったな」と笑顔。さらに、渋谷凪咲は「さやかさんは日々、尊敬が更新する人。一緒にいられたのは人生の誇りですね」と山本の存在の大きさを語った。

 再びステージに戻った山本はメンバーと「結晶」を穏やかに歌い、「最後のカタルシス」ではファンの掛け声が盛り上げる。キュートなダンスが印象的な「星空のキャラバン」を歌い終えると、会場からは大きな歓声が上がった。AKB48楽曲で山本がセンターを務めた「365日の紙飛行機」の優しい歌声が、日が暮れて肌寒さを感じさせてきた会場に温もりをもたらす。「夢は逃げない」で全員がジャケットを脱ぎ、半袖姿で動きの細かいダンスを見事に演じた。

山田菜々、みるきーらOG登場

 MCでは1期生の川上礼奈が自虐ネタで笑わせつつ、面接審査の控室で、山本が壁にめりこみそうなくらいくっ付いていたというエピソードを紹介。ただ、番組のなかで踊り、歌う山本に「初めてギャップ萌えしました」と笑顔で山本の第一印象を語った。そして、白間美瑠や谷川愛梨、太田夢莉らメンバーを代えながらのユニットコーナーへ。山本は、「Bird」「Blue rose」「嘘の天秤」を硬派な一面をのぞかせながら勇ましい歌声を響かせた。

さや姉と山田菜々、みるきー(撮影=小野眞三)

 艶やかな赤色の衣装がひと際目を引く。ダンスコーナーでは、加藤夕夏、内木志らがアグレッシブなパフォーマンスを披露し、山本もキレの良さを見せつける。そのまま「野蛮な求愛」を情熱的に歌えば、白間と吉田、川上をリード役に山本は「友達」をしっとり聴かせる。3人が感謝の言葉を伝えると、山本の目にはうっすらと涙が浮かんだ。

 そして、「俺らとは」では三秋里穂らOGが登場。山本と5人で拳のきいた旋律を歌うと、煌びやかな衣装を着た百花(在籍時は木下百花)も登場。「プライオリティー」を百花の“イケメン”ぶりを見せつけるストーリー仕立てで演じ、会場は大きな歓声に包まれた。

 ここでAKB48グループ総監督で、山本と親交の深い横山由依がビデオメッセージ。山本の新たなスタートにエールを送り、さらに、映像にはOGの山田菜々が映し出された。

 山田は仕事の都合で会場に行けなくなったことを話し始めたが、山田は車のドアを開けると、そこにはなんと山本。そんまま「おい、表行くぞ」と声を掛け、そのまま2人はステージへ。「太宰治を読んだか?」を歌唱すると、今度は「僕はいない」のイントロが鳴る。現れたのは“みるきー”こと渡辺美優紀だ。渡辺と山本は、おなじみのパートで抱きしめ合った。

 山本、山田、渡辺がステージに残り、お互いに照れ臭いのか、話の糸口を見つけられない。渡辺が「さやかちゃん」と口にするたびに歓声が上がり、久しぶりの“さやみるきー”の復活にファンは歓喜一色に包まれた。渡辺は「またこうしてさやかちゃんとステージに立てるとは思っていなかった」と話し、優しく微笑んだ。

ライブのもよう(撮影=小野眞三)

 ここからラストへ一気にテンションを上げて行く。「カモネギックス」で豪快に花火を上げれば、「甘噛み姫」でさらにビートは高まる。メンバー全員がステージに上がり、「北川謙二」を元気よく歌唱。「僕らのユリイカ」に入るとゴンドラに乗った山本が会場を回り、ファンに感謝の手を振る。そして、「ずっとずっと」を最後の楽曲に「皆さんのペンライトが本当に綺麗。素晴らしいステージをありがとうございました」と言い残し、山本はステージを去った。

 それでも、「さやか」の声が挙がる。オーディエンスのアンコールが会場全体に広がっていくと、白いドレスを着た山本がステージに舞い戻った。関係者への感謝を口にした山本。歌手になるという夢を一度はあきらめかけた自分を振り返りつつ、NMB48がそのチャンスをくれたことに感謝した。そして、「メンバーの道しるべになれるように、あきらめずに挑戦していきたい」と語り、ソロ曲の「忘れてほしい」を気持ちをこめて歌った。

 渡辺らOGも登壇し、全員で「卒業旅行」を歌う。山本の目にはうっすらと涙が浮かぶ。そして、すでに芸能界を引退してる1期生も集結し、「三日月の背中」を熱唱。喜びの笑顔を見せた山本は、現役メンバーと「僕だって泣いちゃうよ」をパフォーマンスし、最後に「青春のラップタイム」で元気よく自らの卒業コンサートを締めくくった。

涙の吉田朱里、最後までリーダーだったさや姉

 最後の挨拶にのぞんだ山本に、メンバーはステージ中断から声をかける。吉田は涙をこぼしながら「さみしい」と口にしたが、「嬉しいけど、やめる」と山本。さらに、メンバー一同で「ありがとうございました」と声を合わせたが、バラバラで、山本から「そこは揃えないと」とツッコミが返った。最後までリーダーらしい、凛々しさのあふれた存在感だった。

声援に応えるさや姉(撮影=小野眞三)

 山本は「NMB48だったから情熱を注ぐことができた」と8年間の活動に悔いのないところを見せる。ファンの“さやかコール”が鳴り響くなか、後ろの階段を上り、「8年間、本当に最高でした」とメッセージを告げ、扉は閉じられた。

 山本は11月3・4日、NMB48劇場で最後の公演をおこない、NMB48から卒業する。【取材・撮影=小野眞三】

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