無意識に時代と符合した、ものんくる 幾重の再読み込みの果てに
INTERVIEW

無意識に時代と符合した、ものんくる 幾重の再読み込みの果てに


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年10月01日

読了時間:約15分

吉田沙良の母親がポルノの大ファン

角田隆太

――「アポロ」のカバーもされていますね。アルバムの発売とポルノグラフィティのサブスクリプション(定額制音楽配信)解禁とタイミングが重なりましたが。

角田隆太 狙ってないですからね。狙ってもできないですから(笑)。

吉田沙良 9月8日がポルノグラフィティさんの結成20周年の記念日だったんです。それで全曲サブスクが解禁になったんですよ。それを知らずに、ものんくるも9月5日発売で。奇跡的なことですよね。「サブスクで聴けないから、CD買ってね」という宣伝もしていたのですが。

――選曲の経緯は?

角田隆太 カバーを1曲入れようと思っていたんです。

吉田沙良 「リロードする」という意味合いでカバーをしようとずっと悩んでいました。色々な曲が挙がっていましたね。

角田隆太 でも「アポロ」に出会った時に、この曲の歌詞がリローディングしている内容だと気付いたんです。「この街も昔はジャングルだった。でも変わらず人間は愛の形を探している」という部分が、ばっちり合うなと。もともとポルノグラフィティさんのアルバム『ロマンチスト・エゴイスト』はリアルタイムで好きでしたし。

吉田沙良 私も親が大好きで。母がポップスで聴くのは松任谷由実かポルノグラフィティだけなんです(笑)。今回のカバーが決まった時に母が「本当にいい曲だね」と言っていたのを思い出しました。それも重なって、絶対やりたいなと思いました。

角田隆太 慣習的に、カバーするためには作詞家/作曲家さんやアーティスト本人にも許可をとったほうがよいという話で、ポルノグラフィティのお2人にデモを聴いてもらって承諾頂いてから制作に取り掛かりました。

吉田沙良 それは角田さんが歌っているバージョンなんですけど、これがまた良くて。あの形でリリースすると思われていたらお2人に申し訳ないです(笑)。

――イントロのコーラス部分から「アポロ」を再読み込みした様な感触でした。

吉田沙良 コーラスは頑張りましたね。リスペクトした上で、ものんくるらしく原曲を越えていきたかったので。歌録りの時、まだコーラスを考えてもいなかったです。でもコーラスなしだと歌がうまく録れなくて。エンジニアさんにも「これだと録れない」と伝えました。考えた結果「コーラスを先に録ればメロディが引き立つのかな」と。だから先にコーラスを録ったんです。そうしたらこういう形になりました。

角田隆太 もともと「コーラスありきの楽曲にしたい」という沙良の意図で、キーを低めに設定していたんですよ。だからもしキーを全音(#2つ分)上げていたら、コーラスなしで成立していたんじゃないかと思います。

吉田沙良 コーラスのメロディは割と即興で録っています。録りながら「こんな感じかな?」と重ねていきました。今回は色々な人をオマージュして組み立てています。それぞれのメロディは、ハイエイタス・カイヨーテ(豪バンド)、ジェイコブ・コリアー(英シンガーソングライター)などの引用になってます。彼らからコーラスの重ね方とかバランス感はかなり研究しました。

角田隆太 僕も参考音源を聞かせたりして。

吉田沙良 彼らはコーラスを楽器だと捉えているんですよ。私もそういう解釈で作っていきました。

角田隆太 この曲は実は普通に聴いてたら気づかないくらい巧みにサビと平歌で転調しているんです。そこをどう2018年的に上手く活かすかってこともひとつのポイントにして、このアレンジにまとまりました。

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