未知のパワーが込められた存在、UNCHAINという“libyan glass”
――「Da, Da, Da, Da,」は聴き所の多い楽曲ですね。最もグルーヴィーなナンバーと感じました。ドラムが活き活きしていますね。
吉田昇吾 スピード感を出すために細かいゴースト・ノートをたくさん入れたりしました。
――ボーカルのサンプリング・フレーズの着想は?
谷川正憲 これはデモ段階からあって、サビの頭が全部「Da」から始まるようにして、「Da」だけでリズムを作ってそこだけループさせたら面白いと思って、そのアイディアから作った感じです。
――そういったパターンはけっこう多いのでしょうか?
谷川正憲 このパターンはあまりなかったですね。やり方のパターンとしては前作「Fresher」のイントロと一緒のようなパターンです。ギターのフレーズのループなんですけど、何個か弾いたフレーズを左右で鳴らしてループさせるという。
――あれはエレキギターの生音を録音したサウンドなのでしょうか?
谷川正憲 アコギの音なんです。ラインの音だけだったりマイクで録った音も混ぜたりして、ちょっと違和感のあるようなサウンドにしたんです。生なんだけど生では再現できないような感じにして。
――あれは不思議なサウンドですよね。聴いたときに、どうやっているんだろうなと思いまして。
谷川正憲 「Da, Da, Da, Da,」もそのパターンと言えばそうですね。
――UNCHAINの作品には常に新しいアプローチが入るんですね。
谷川正憲 そうですね。常に発明というか、そういうことをしていかないとバンドに新鮮さがなくなりますし、自分の中から新しいものが出てこなくなっちゃうというか。それを自分で恐れているところがあるので。
――一つの路線でずっと突き進む、というスタイルは無理?
谷川正憲 性格上なのか、「ちょっと違うことがしたい」ってなっちゃうんですよね。
――それが作品として仕上がるから凄いと思います。「33」はエレクロミュージックのルーツを感じます。とても素敵な曲ですね。凄く好きです。
谷川正憲 エレクトロもちょいちょい聴きますし、この曲はアンビエントの雰囲気を出したくて。アンビエントはまだまだ日本ではマイノリティだと思うんですね。UNCHAINは色んなジャンルからちょっとずつ味を引っ張ってくることは昔からやっていて、アンビエントもどうにかそういうことができないかなと思って。この曲はバンドサウンドですらなくなっちゃんですけど。これはアルバムの中の番外編という扱いというか。
――生演奏でないのに血が通っていると感じました。
谷川正憲 一番、人の力が加わっていないのにという。僕もこの曲が自分で凄く好きで、これをリード曲にしたいくらい(笑)。
――「33」がリード曲だったらファンの方は驚くかと(笑)。
谷川正憲 それでレコード会社の人に「ダメです!」って言われそうな(笑)。
――けっこう前に作った曲だとか。
谷川正憲 そうです。33歳のときに作って、そのときに「最高なのが出来たよ!」ってみんなに聴かせたけど何の反応もない、みたいな(笑)。
佐藤将文 「ふーん。次」って(笑)。
谷川正憲 33歳って、後ろも前も詰まっているというか。後戻りもできないし、前に進むにも壁があるし、みたいな感じがしてて凄く息苦しい感じがしてて。息苦しさというのは『LIBYAN GLASS』のアルバムのひとつのテーマでもあるし、合うんじゃないかなと思って。
――33歳は「後ろも前も詰まっている」感じ、ですか。
谷川正憲 特にバンドマンなんかは30歳までやって辞めるんだったらまだ、というか、33歳くらいまでいくと「もう後戻りできない」と。「今からバイトするのは無理じゃないか」みたいになってくるんです。かといって前に進もうとすると「このCDの売れない時代に厳しいな」みたいな、間に挟まれるという。そういう感覚を煮詰めたというか。
――確かに、言葉でそう説明して頂くと納得するというか、切迫感やスリリングな感情がサウンドから滲み出ています。
谷川正憲 そうですね。うまいこと音で表現できた感はあると思います。
――そしてラストトラックの「I Am」。最初にお伝えしましたが、スティーヴィー・ワンダーを感じたのはこの楽曲なんです。
谷川正憲 ゴスペルってソウルの原型というところもあると思うんですけど、スティーヴィー・ワンダーももちろんそこにいて、そういう雰囲気はあると思いますね。
――各曲についてお伺いしましたが、総括して今作『LIBYAN GLASS』のコンセプトは?
谷川正憲 吉田が作った「Libyan Glass」のイメージから膨らましていったようなアルバムでして。“libyan glass”というのはリビア砂漠にしかないパワーストーンと言われているもので、正体不明なんです。隕石だとも言われているし、まったく別の物質だとも言われているし、未知のパワーが込められている石で。それが広大で何も無い砂漠という場所にその石があるという…それを見つけたいというか。東京でもいいですし、息苦しい世界の中でそういう、輝いているものを何か見つけたいみたいな。この音楽業界で言うと、今のシティ・ポップ大戦争みたいな時代にUNCHAINというこの“libyan glass”を見つけてほしいという思いが込められています。
――シティ・ポップ大戦争についてどう思われますか?
谷川正憲 僕達としては、わりと昔からやっていた感じがあったので、むしろチャンスかなと思うんですけど…それにしても増えてきましたよね。色んなグループが出てきてちょいちょいチェックしてるんですけど、「これ凄いな!」というのもいて。これはヤバいぞと。この若さでこれは相当なものだというのもいます。
佐藤将文 僕らがその年代のときは逆にもっと渋すぎたもん。
谷川正憲 ブルース・フュージョンみたいなことをしてましたね。
佐藤将文 今の若い方々もキラっとして上手な見せ方というか、たくさんいますね。じゃあみんなで集まってやろうよという感じだけどね。誰が一番カッコいいのかって(笑)。
――ライブツアー『Finding “LIBYAN GLASS” Tour 2018』が28日から始まりますが、どういったツアーになりそうですか?
谷川正憲 ライブはこの『LIBYAN GLASS』の世界を表現しつつも、谷くんも人力について話していましたが、人力で表現するものと、人力ではないもので表現するものと、それらのハイブリッドな融合というもの、そろそろそれが自分達の中で完成するんじゃないだろかという時期なので、それを目指したいなと思います。
(おわり)
作品情報
UNCHAIN
『LIBYAN GLASS』
2018年9月26日発売
◇通常盤 [CD] / CRCP-40561 / 2,963円+税
※初回生産分のみスリーブケース付き
▽CD収録曲
01. Libyan Glass
02. FLASH
03. Traveling Without Moving
04. butterfly effect
05. Miracle
06. -Beyond The World-
07. Behind The Moon
08. アイスクリーム
09. Just Marry Me
10. Da, Da, Da, Da,
11. 33[※読み:サーティースリー]
12. I Am Jeff Galland
※M2:「FLASH」/ねごと・蒼山幸子(Vo/Key)が作詞を担当。
ライブ情報
『Finding “LIBYAN GLASS” Tour 2018』
2018/09/28(金)
札幌 BESSIE HALL
2018/10/05(金)
福岡 Queblick
2018/10/08(月・祝)
岡山 CRAZYMAMA 2ndRoom
2018/10/12(金)
仙台 enn 2nd
2018/10/13(土)
新潟Live Hall GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2018/10/19(金)
名古屋 CLUB UPSET
2018/10/21(日)
心斎橋 Music Club JANUS
2018/10/26(金)
SHIBUYA STREAM HALL