『アントマン』ペイトン監督、モリッシーしか聴かないキャラの思惑
INTERVIEW

『アントマン』ペイトン監督、モリッシーしか聴かないキャラの思惑


記者:鴇田 崇

撮影:

掲載:18年09月25日

読了時間:約5分

 かの「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」を超え、世界興行収入No.1シリーズのマーベル・スタジオ最新作『アントマン&ワスプ』。シリアスになりがちなMCU作品群において一時の清涼剤的な役割を果たすなど、ここ日本でも非常に好評だ。頼りなさすぎるヒーロー、アントマンと完璧すぎるワスプの新鮮なコンビも支持を集め、まったく新しいバディ・アクション・ムービーとして、そして今後に続いていくアベンジャーズとの関連性においても見逃せない要素がいっぱいの映画だ。

 そのメガホンを握った異才が、前作『アントマン』(2015)に続いてメガホンを握ったペイトン・リード監督。宣伝初期から「小さくなるのはアントマンとワスプだけでじゃなく、それが車や建物やほかのものだったらクレイジーだよね!」と公言しており、作中では巨大化するハローキティのPEZなど、設定を存分にいかした遊び心が満載だ。今回、来日したペイトン・リード監督にインタビューを実施。もともとドラマーでもある監督によるモリッシー音楽ネタの秘話など、この監督の人柄にしてこの作品ありということがよくわかる取材となった。【取材・撮影=鴇田崇】

アントマン&ワスプ

――すごく明るい雰囲気もあり、楽しい作品でしたが、現場の雰囲気も陽気そうですよね!

 そうだね。僕は自分の現場をなるべく軽快に楽しくするように心がけているけれども、いままでの現場では実は全部そういうふうにしていたよ。なぜなら、みんながリラックスできていることが重要で、俳優はリラックスしている時に一番いい演技をするもの。コメディーに限らず、ドラマでもなんでも一番いい演技をする環境を用意することが大事だ。

――続編という意味では、すでにチームワークも完成していますからね。

 今回、主演のポール・ラッドをはじめ、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ペーニャ、マイケル・ダグラスという人たちと一緒に仕事をすることは2回目だったので確かに最初からリラックスした雰囲気はあったけれども、同時に技術的な難しさや政治的なものから俳優たちを守ることも、もしかしたら僕の大事な役目でもあったかなと思っているよ。

――13歳の頃に映画監督を目指されたそうで、その頃の信念や思いなどは、どう今の映画に反映していますか?

 13歳から今に至るまで、願わくば洗練されて進化して、今に至っていると思いたいけれどね。いろいろなタイプの映画を作りたいとは思っている。わたしは映画を観ることが好きだし、映像的に物語を語ることも好きだし、それに対して情熱も持っているけれど、どうやって自分自身でビジュアルを作り上げ、そこで何を語るかは、自分で何度もトライして間違い、そこで学び得ることが一番いいような気がするね。

 今までの僕のキャリアではコメディー作品が多かったけれど、マーベルの映画を撮る面白さは、本当にビジュアルなコメディーを作るということで、ある種のサイレント映画的なところだと思う。なので、13歳の時に一番最初にカメラを使って以来、進化しているとは思いたいよね。

ペイトン・リード監督

――サイレント的なコメディーということでは、主人公のサイズがコロコロと変わるシーンの撮影が難しいと思いました。その意味では今回、もっとも大変だったシーンは?

 主演のポールは外の世界に出て行ってから小さくなったりもするので、実際の学校に行くシーンでは、実際の階段をまず撮って、その後モーションコントロールを作って巨大なブルースクリーンを使い、ポールが走るシーンを撮るなど、ものすごく大変だった。観ていると「あ、走っている」くらいにしか感じないけれど、実はものすごく難しかったよ。

――一方で、巨大化するハローキティのPEZのアイデアも楽しいですね!

 ハローキティはかわいくてイノセントだけれど、映画のように大きくなると悪い奴が乗っているモーターバイクを打ちのめす巨大な武器になり得るという。これってすごく面白いし、トーンをしっかり合わせれば、そしてすごくリアルに撮れば、面白いだけじゃなく、わくわくできると思った。あれほど小さい物がものすごい武器になるわけだけだからね!

――音楽ネタで面白かった点は、モリッシーしか聴かないおばあさんが登場するシーンですね。あれには裏ネタがあるそうですね?

 あります。モリッシーは特に東部で人気が強く、ラテン系の人々にとっても人気がある。なので、それを表現するためにルイスのおばあちゃんが<モリッシーしか聴かない>という設定が面白いと思ったわけだよ。

――リサーチしたのですか?

 いや、実は僕はドラマーをやっていてね。ザ・スミスのカバーバンド、ラウダー・ザン・ボムというバンドをやっていた。ある時、ギグをやって、その後に観客のひとりが、「すごくよかったっよ。ほかのカバーバンドがあるけれど、観に行ったほうがいい」と言って来て、それがスウィーター・ザン・フーリガンというバンドでね。それもスミスのカバーバンドだったけれど、みんなラテン系だった。それでLAのラテン系の人たちには、モリッシーがすごく人気があることがわかったという。

 実際モリッシーは、イングランドからLAに映り住み、いまはラテン系の文化についての曲を作っているよ。なので、あのシーンは本当なんだ。

――さて、今後のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)にとって、アントマンはヒーロー全体でとても重要な存在になりそうですね。素晴らしい仕事を続けることにプレッシャーを感じていますか?

 僕は、およそ映画監督が、すべての映画で感じているプレッシャーと同じだけのプレッシャーを感じているよ。多くの時間とエネルギーを使って、観客が夢中になる素晴らしいストーリーを語りたいと思っている。監督は、ちょっと仕切り屋で、なんでもコントロールする。でもある時点で、それを世界に出して、人々がどう反応するかを見ないといけない。だから、それにおいては、切り離せないプレッシャーがあるよね。

 でも、僕は、アントマンとワスプが、もっと大きなマーベル・シネマティック・ユニバースの中で置かれている状況が好きだ。彼らは必ずしも直接、そこでのインフィニティ・ストーンやガントレット(長手袋)のストーリーに関わっていない。彼らはこの片隅でやっているだけだよ。そして、今後アベンジャーズと、彼らがどう関わるかを見ることになる。そこにミステリーがあるのは好きだよ。でも、そうだね。彼らはふたりともとてもいきいきとしたヒーローだ。そして、この映画の中で、このユニバース全体で、彼らが大事なプレイヤーになることについて彼らがとても強く主張する姿をあなたたちは目にすることになるよ。

(おわり)

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