デジタル声優アイドルグループの22/7(ナナブンノニジュウニ)が22日、都内で、3rdシングル「理解者」の発売記念VR生配信ライブを開催した。実際のライブをVR映像で生配信。会場・ネット双方ともメンバーを近くに感じられる臨場感のもと、計6曲が届けられた。

新たな試み

 そこにあったのは11人の笑顔だった――。

 デジタル声優アイドルグループ。モーションキャプチャーを使い、キャラクターをリアルに表現していく。彼女たち自身が新しい試みのなかで生まれた。その新しい事への挑戦が宿命であるかのようにこの日も挑戦があった。それはVR生配信ライブ。現実でおこなわれているライブを仮想空間で見せるというものだ。あたかもステージに立っているような感覚で実際のライブを映像で楽しむことができる。

22/7

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 この日は開演前に楽屋からVR配信。それぞれ思いを語り円陣を組む。和やかな雰囲気の中に高揚感が漂う。開演前の生配信を終え、それから数分後に会場の明かりが落とされた。薄暗くなったステージに見える8つの人影。もちろんその影の主は彼女たちだ。しばらくして時計の針の音が鳴り、印象的なイントロが流れる。「シャンプーの匂いがした」。スネアやバスドラの音が印象的に響く壮大なサウンド。幕開けに相応しい楽曲だった。

 MVでも表現されている通り、桜色が似合う演出だった。明るいライトに照らされた彼女たちはスカートをひらりとさせながら笑顔でパフォーマンスする。その表情には緊張の色などは見えなかった。彼女たちのダンスは以前よりもキレが増していた。そして表情は豊かだった。明らかに成長が感じられた。一方、VR用のカメラはステージ前に設置され、その空間では目の前に彼女たちがいるような感覚で臨場感に溢れていた。

花川芽衣

 1曲目を終えたところで、涼花萌、高辻麗、武田愛奈を迎え入れる。そして、それぞれが挨拶する。この日を楽しみにしていたかのように言葉も弾む。そうしたなかでVR生配信ライブの説明。実機を持って試してみる。立体的な映像空間にメンバーも驚きの様子だった。

 ここからは11人全員でパフォーマンス。まずは、サードシングルに収録の「不確かな青春」。後ろ向きに一列になったメンバーが順に正面を向く。回転するたびに浮くスカート。キュートな振付で青春感たっぷりの世界観で魅了していく。この曲が押し曲だという高辻麗は「まず青春って良くないですか? その少女の甘い恋心の中に秘められた日常への決意が込められていて、とても可愛い曲で大好きです」とその理由を語った。

 キャプテンの帆風千春が「VR生配信ならではの普通ではあり得ない演出をしたいと思います」と言うと、VRのカメラをステージの真ん中に設置。まさにカメラを取り込むようにメンバーが立つ。そのなかで届けたのはセカンドシングル収録曲の「循環バス」。映像ではメンバーに囲まれているような特別な空間が広がっていた。このVRライブ用に変えたというフォーメーション。彼女たちはカメラに目線を送ったり、投げキッスをしたり、それそれの個性を見せていく。

海乃るり

 一方、リアル空間では、楽曲の世界観を、暖色や赤色のライトなどでも表現。夕日色のようなラインティングで、笑顔の彼女たちを染めていた。

 4曲目は「韋駄天娘」。サードシングル収録曲で、この日初披露の楽曲だ。爽快で疾走感溢れるロックナンバー。楽曲の世界観を形態模写するような振付で表現していく。激しく、そしてユニークでいてキュート。優しく歌い上げながらも、場面場面で力強く歌っていく。間奏で見せる激しいダンスは息を呑むほどだた。曲の後半になるにつれて高まるテンション。自然と振り上げる拳も力が入っていた。

 メンバーの首筋や額から流れる汗は、ダンスの激しさを物語っていた。息を切らせながらも達成感に満ち溢れる表情のメンバー。武田も「激しい曲は初めてだったから嬉しい。盛り上がって楽しい」と笑顔を覗かせた。

 そして宮瀬玲奈が「皆さん、最後まで盛り上がっていきましょう」と言うと、花川芽衣が「自分たちの理解者は誰なのか考えて欲しい」と呼びかけ、本編最後は「理解者」。圧倒的なパーフォーマンスで観客の心を惹き込み、そのままステージを後にした。

22/7

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より近くで

 アンコールでの演出も驚きだった。後に帆風は「皆さんに近づける方法はないかなと思った」と語っていたこの演出は客席に降りてのパフォーマンスだった。盛大なアンコールを受けてステージの明かりが戻される。それに合わせてメンバーによる歌唱が始まった。楽曲は「11人が集まった理由」。しかし一向にメンバーが現れない。青、紫、黄の華やかなライトが主のいないステージを照らす。

 曲が進むがそれでも現れない。彼女たちの姿を求めて辺りを見回す観客。なんと、客席の左右後ろにメンバーの姿が。あまりの近さに歓声があがる場内。VR空間では至近距離を疑似体験できたが、実際にそれを体現して見せた。それぞれ散らばっていたメンバーはやがて、ステージ上に集まる。そして穏やかに歌い上げていき、優しく紡いだ。

 歌い終えたところで、メンバー一人ひとりが挨拶。

 涼花萌 (妖精さん! という掛け声に)そうです! 今日は来て下さり有難うございます。初めてのVR生配信もあり、沢山新しいことが出来て楽しかったです。何よりも11人みんなで盛り上がる系の曲が出来たのは嬉しかったです。まだリリースイベントがあるので遊びに来てください。

 西條和 どうしよう(話すことを)考えるのを忘れた(笑)VR配信ということもあって「循環バス」の時は(ステージの)真ん中にカメラが入ったのでフォーメーションも変えました。ちょうど私がハートマークをつくる時にカメラの近くにいるから「ハートをカメラに向かってやって」と言われた時、「あ、もう無理や…」と思って、でもなんとかやりました(笑)VRを見て下さった方も、ここいる方も有難うございます。

 海乃るり 「韋駄天娘」はきょう初披露だったんですけど、いや~熱い曲ですね。凄く汗をかいてしましました。皆さんも楽しかったですか? ほかの曲も、久々にやった曲もあったの凄く楽しかったです。これからも新しい試みは個人的にはやっていきたいと思っていますので、応援をお願いします。

 高辻麗 楽しかった! 今回は初披露の「韋駄天娘」とか、私の押し曲の「不確かな青春」とか、久しぶりに「11人が集まった理由」では、色んな所から出てきて皆で集まるという今までになかった演出で、個人的にはエモかったです。リリース日にこうやって集まって、世界中の方が見守る中でライブが出来たのは嬉しかったです。

 天城サリー なんとサードシングルがオリコンデイリー7位になりました! 有難うございます。VRライブとてもとても楽しかったです。22/7はインドネシアとか、アメリカ、イングランドでも見られていると聞きます。Thank You So Much!

22/7

 帆風千春 VR配信は近くに感じるんですけど、皆さんの近くに行ける機会がなくて。でも今回は(客席の)横から後ろからと皆さんの近くにいけたので良かったです。有難うございます。新曲も初披露させて頂きました。皆さんが「オイオイ」と盛り上がっているのも見れました。引き続き宜しくお願いします。

 宮瀬玲奈 今日はご来場いただき、そしてVRでライブを見て頂き、有難うございました。みんなと一緒にライブが出来ることが素晴らしいことだと思いますし、今ここに立たせて頂いている現状は皆さんが作って頂いたものだと思うので、それをしっかり受け止めて今後の活動も頑張っていきたいです。これからも宜しくお願いします。

 白沢かなえ きょうは会いに来て下さり、有難うございました。個人的に良かったなと思うのは、「11人が集まった理由」で私初めて笑顔で終われたんですよ。ディファ有明の時は泣いていたから。きょうは本当に笑顔で終われて良かったです。楽しいライブでした。

 花川芽衣 感想が一番緊張するかもしれない(笑)今日はVRライブという新しい試みで、私たちは結構、色んな新しい試みをさせて頂いているんですけど、こうやって皆さんが着いて来て下さってそれが本当に嬉しいなって思います。オリコンデイリー7位は本当に本当に本当に嬉しいです。これからリリイベも沢山あるので、みんなに会えるのが楽しみです。

 武田愛奈 “かなえる”が「11人が集まった理由」を笑顔で終われたと言った時に「オーーー」と感動して。それで…やりたいことがあるんですけど良いですか? (コールアンドレスポンスで)「VRの皆?」(会場「イエー!」)「会場の皆?」(会場「イエー!」)。こうやって今も新しいことが出来てすごい楽しいです。有難うございました。

 倉岡水巴 (メンバーからKRBコールを求められ)挨拶の最後やで~。ではKRBコールをお願いします。「せーの」(会場「KRB、KRB、倉岡ビューティフル! イエーイ!」)ごめんねやらせて(笑)直前までれったんと「循環バス」で投げキッスしようねと約束したのに、できなくて。れったんに次の振りぶつかってしまうという(笑)VR楽しかったので、これからも新しいことをどんどんしていって、皆さんに楽しんでもらえるグループになれたら。

笑顔に見えた自信

 今年2月、ディファ有明でおこなわれたワンマン公演。ライブを終えたメンバーは一様に声を震わせ、涙を流し、この日を迎えられたことを喜んだ。あれから半年。きょう見せたのは笑顔だった。この日は、キャラクターは登場しなかった。しかし、個々の一つひとつの動きにそれは表れていた。冷静に物事を見つめるものや、愛くるしい仕草を見せるもの、静かに見つめるもの、個々の個性がしっかりと現れていた。そしてなんといってもパフォーマンス力が格段と上っていた。終演間際、涙ではなく笑顔にさせたのは、紛れもない、自信の表れだ。これから多くの「理解者」を得て飛躍していくことだろう。【取材=木村陽仁】

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