このところ立て続けにネットをバズらせている歌姫がいる。今年、音楽活動45周年を迎えた岩崎宏美である。1975年のデビュー以来、「ロマンス」(75年)、「シンデレラ・ハネムーン」(78年)、「聖母たちのララバイ」(82年)など、あまたのヒット曲を送り出してきた岩崎は比類なきボーカルで万人を魅了。メディア出演と並行してコンサートツアーを毎年開催するなど、第一線で活躍を続けてきた。

 コロナ禍の今年は本人が「これだけ長い期間、歌わなかったことは初めて」と語るほど活動自粛を余儀なくされるが、その逆境が歌に対する思いや、歌える喜びを一層強くしたのだろう。この秋はテレビに出演するたびに、抜群の歌唱力と表現力があらためて注目されている。

 まずは10月20日の『うたコン』(NHK)。「あの頃と出逢う、青春の歌~秋~」をテーマにした生放送で代表曲の「思秋期」(77年)を披露すると、SNS上には「思秋期、エモ過ぎる!」、「圧倒的な歌唱力に涙腺崩壊」といった投稿が相次いだ。直後の配信ランキング(レコチョク「歌謡曲/演歌」部門)で同曲が1位になったことからも、その歌声が多くの感動を呼んだことが窺える。

 また11月15日に放送された『行列の出来る法律相談所』(日本テレビ系)では、マツコ・デラックスが岩崎の「女優」(80年)を大好きな歌として紹介。サプライズゲストとして登場した岩崎が同曲を歌唱すると、「今も変わらず本当にお上手」といった声に加えて、「初めて知った曲だけど、また聴きたくなる!」、「生歌でこの歌唱力、最近はなかなかいないよね」など、若者からと思しき投稿も溢れかえった。

 その「女優」は前出の配信ランキングでデイリー2位を獲得し、週間(11月11日~17日)でも2位をマーク。さらに代表曲の「ロマンス」も、宮本浩次の超絶カバーが話題を呼ぶ一方、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)の「筒美京平特集」で、オシャレなコード進行が取り上げられたこともあり、同ランキングで週間18位を記録している。

 かように各方面で楽曲の完成度と、それを際立たせるボーカルが絶賛されている岩崎だが、12月2日にCD2枚組のベストアルバム『LIVE BEST SELECTION 2012-2020 太陽が笑ってる』をリリースする。

 45周年を記念した同アルバムには「ロマンス」や「聖母たちのララバイ」などの代表曲はもちろん、2017年に自らも声優として出演し劇中で歌唱した「美女と野獣」など、近年のコンサートで評判の楽曲を2012年以降のライブ音源から厳選。岩崎の真骨頂ともいえるライブパフォーマンスを存分に味わえるほか、新曲「太陽が笑ってる」(スタジオ音源)がボーナストラックとして収録される充実の内容だ。

岩崎宏美

 余談になるが、岩崎はミュージカル『レ・ミゼラブル』日本版の初演キャストの1人。ファンテーヌ役で歌った「夢やぶれて」の名唱・名演は今も語り継がれており、ミュージカル女優としても成功を収めてきた。

 このほど最終回を迎えたNHKの朝ドラ『エール』には、ミュージカル出身の俳優が多数出演し、ドラマを盛り上げてきたが、それは卓越した歌唱力と演技力あってこそ。岩崎の歌が老若男女を魅了し続けているのも、舞台で鍛えられた表現力を備えているからといえるだろう。

 デビュー時からのファンも、令和世代のリスナーも、愛聴盤となること必至の今回のライブベスト盤。表情豊かな歌声に触れれば、きっと「次は生のステージを」といざなわれるに違いない。【濱口英樹】

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