藍井エイル「信念が揺らいだこともあった」10年で培った信じる強さ
INTERVIEW

藍井エイル

「信念が揺らいだこともあった」10年で培った信じる強さ


記者:村上順一

撮影:

掲載:21年06月16日

読了時間:約8分

 シンガーの藍井エイルが6月16日、通算19枚目となるシングル「鼓動」をリリース。藍井エイルは2011年10月にシングル「MEMORIA」でメジャーデビュー。表題曲の「鼓動」はTVアニメ「バック・アロウ」の2ndクールオープニングテーマとしてO.A中。カップリングにはゲーム『Phantom Breaker』テーマソング「Contradiction」と「鼓動 -Acoustic ver.-」を収録し、力強さと繊細さが共存する1枚となった。インタビューでは「鼓動」と「Contradiction」の制作エピソードから、これからやりたいことなど藍井エイルの今に迫った。【取材=村上順一】

藍井エイルが今やってみたいこととは

「鼓動」通常盤ジャケ写

――昨年リリースされた「I will...」から10カ月ほど経ちますが、どんなことを考えていましたか。

 ライブが簡単に出来なくなってしまったり世界が変わってしまったと感じています。リリースも延期したりと、レコーディングのスケジュールも上手くいかないこともありました。ただ、その中でゲームをする時間はめちゃくちゃ増えてしまったんですけど...。ちょっと上手くなってきて、今までコントローラーだったんですけど、キーボードとマウスでやるようになりました。

――そんなゲームが大好きなエイルさんですが、それ以外でやってみたいことはあるんですか。

 私は北海道出身なんですけど、北海道一周というのを車でやってみたいというのがあります。犬を連れてキャンプもしてみたくて。前にも一人で北海道旅行みたいなことはしていたんですけど、稚内とかまだまだ回れていないところが多いので、車の中で人目を気にせず大声で歌いながら、旅したいなって(笑)。

――是非、その旅の模様を配信お願いします(笑)。さて、今年デビュー10周年を迎えますが、どんな気持ちですか。

 活動を休止した期間もあったんですけど、10年でわからないこともわかるようになってきたなと思っています。歌の歌い方、体の使い方、レコーディングなど色々やっとわかってきて。

――教えてあげられるくらい?

 どうでしょう(笑)。この10年で後輩もすごく増えたんですけど、私はすごい人見知りで、全然フランクに喋れなくて敬語になってしまうんですよね。先輩っぽい感じを出さない方が良いのかなとか、色々考えてしまって...。例えば友達でも何年ぶりかに会うと、私は上手く喋れなかったりするくらいなので。

――私からはあまりそういう風には見えていなかったんですけど、そうだったんですね。じゃあ10年前とかのこういったインタビュー取材も得意ではなかった?

 全然上手く話せていなかったと思います。質問していただいたことに上手く答えられないというもどかしさはありました。レコーディングも声が震えるくらい緊張していましたし、自分の声を外から聞くということもほとんど経験していなかったので、「自分の声ってこんなんなんだ」と驚いたり。

信念が揺らいだ時とは

――それありますよね。さて、今作「鼓動」はアニメ『バック・アロウ』の2ndクールオープニングテーマということですが、作品のどこをフォーカスしましたか。

 台本を見させていただいて歌詞を書かせていただきました。その中で「壁」という言葉は絶対入れたいなと思って、その「壁」から連想していく中で自分の信念をテーマに歌詞を書こうと思いました。

――タイトルの「鼓動」にはどのように繋がっていったのでしょうか。

 自分の信念を信じて生きていく、それは心臓を鳴らすこと、そこから鼓動というワードに辿りつきました。これまでに信念が揺らいだこともあったけど、それも間違いではなかったと前に進んで行こう、というすごく前向きな歌詞になったと思います。自分の経験もそうなんですけど、聴いてくれる人とも重なるようなものになったら良いなと思って、歌詞では「僕」ではなくあえて「僕ら」にしています。

――そんなエイルさんの信念が揺らいだ時とは?

 多くの人がそうだと思うんですけど、周りの人に否定されると「あれっ? 私、間違っていたのかな」と思ってしまいますよね。でも、多数が正しいわけではないなと思っていて、たとえ少数でも自分の考えを正しいと思ってくれる人がいたらそれで良いと思うんです。そういったことはこの10年で何度も経験していて。自分がやりたいと思ったことだったら一回は信じてやってみるということはすごく大切なことだと感じています。

――強くなったんですね。さて、今作「鼓動」の歌詞制作は今までと違うやり方をしたところなどありましたか。

 初めてではないんですけど、いつもは書き溜めているメモから言葉を選んで書くこともあるんですけど、今回はそのメモを使わずに書いていきました。テーマを決めてからサラッと書けたんです。曲を聴いた時にすごく前向きで力強い曲だなと感じて、歌詞にも力強さを入れたいと思いました。でも力強さだけだと深みがないかなと思い、陰鬱な描写も入れてみたりしています。

――歌唱面ではいかがでした?

 特にサビでのブレスが難しい曲でした。今作は山田竜平さんに曲を書いていただいたんですけど、過去に書いていただいた「翼」という曲もブレスが難しくて。レコーディングで歌っていると腹筋をすごく使うので痛くなってしまうくらいなんです。あと、実はこの曲、アニメバージョンを最初に録音してから、フルバージョンを録ったんですけど、その後にもう一回録り直してるんです。

――なぜ録り直したんですか。

 そのフルバージョンを録音していた時に鼻炎になってしまって、声色が変わってしまったんです。それでどうしても納得がいかなくて、お願いしてもう一度レコーディングさせていただきました。なので、アニメバージョンとフルバージョンでは歌い方、ニュアンスが違うんです。

――聴き比べてみるのも面白いですね。「鼓動」はアコースティックバージョンも収録されているので、何パターンもあって楽しいですね。そのアコースティックバージョンはどんな意識で臨んだんですか。

 ギターの奏法に合わせて、歌の表情を変えていくことを意識したので、セクションごとにニュアンスを変えています。ギターとフリーテンポで同時録音だったんですけど、ギターのテンションに合わせて声を強くしたり、柔らかくしたりしていて。なので歌う前の打ち合わせに時間を掛けました。それで何度かギターと合わせていく中でグルーヴ感が生まれてきて。

――ギタリストはどなたが弾かれてるんですか。

 菰口雄矢さんという方なんですけど、すごく親切でめちゃくちゃギターも上手くて、ボーカルの事をすごく気に掛けて演奏していただいているのが伝わってきました。

――菰口さんとのコンビネーションも聴きどころですね。今回アコースティックバージョンを収録した意図は?

 私の楽曲をカバーしてくれる人がいるんですけど、それがすごく有り難いなと思いました。「鼓動」のコード譜を掲載して、アコースティックの動画も撮って公開するんですけど、それを観てカバーしてくださる方がいてくれたら良いなと思ったんです。路上だったりライブハウスだったり色んなところで活動されているアーティストさんがいますけど、昨年からネット上で活動する方も増えたじゃないですか。その方達がこの「鼓動」で楽しんでもらえたら嬉しいなと思いました。

――色んな人がカバーした「鼓動」を聴くのも楽しみですね。ところで、MVの撮影はいかがでした?

 栃木の大谷資料館で撮影したんですけど、吐く息が白くなるくらい寒かったです。撮影当日は雨が降っていたので、大丈夫かなと思ったんですけど、壁の隙間から光が差し込んできて、撮影したものを確認したらすごく神秘的で、逆に雨が降っていて良かったと思えるような映像でした。そんな神秘的なシーンとバンドと一緒にパフォーマンスしているシーンが組み合わさって、私の中では今までにないMVになっていると思うので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。

確信に迫るのが好き

「鼓動」初回盤ジャケ写

――さて、カップリングには「Contradiction」が収録されています。矛盾という意味のタイトルですが、このテーマになった経緯は?

 ゲーム『Phantom Breaker』のテーマソングなんですけど、資料を拝見させていただいた時に、光と影だったり、対になるものが書かれていたので、そこから対になっている、真逆のものを考えていきました。例えば光に近づけば近づくほど黒い影が自分に付いて来る、自分が笑っていても、その裏では誰かが泣いていたり、そういったものが絶対に出てきてしまう。でも、それを乗り越えて前に進んでいこう、矛盾を超えて行く、という意志の強い歌詞になりました。

――表裏一体、すごく人間の確信をつくような歌詞ですよね。歌詞を書いている中で気づきはありました?

 最近、確信に迫るのが好きみたいです(笑)。この歌詞を書きながら全人類が一斉に幸せにはなれないと感じてしまい、すごくダークな気持ちになってしまって...。でも、それではあまりにも悲し過ぎると思ったので、みんなが一緒に笑って過ごせる世界が来たら良いのにな、という希望を込めて歌詞で<矛盾を埋めていく New World>と逆転する言葉を入れたんです。

――悲しいままでは終わらないと。レコーディングはいかがでしたか。

 この曲のオケが激しいので、自分の歌声の音量がわからなくなってしまい、腹圧をかけ過ぎて声が裏返ってしまったりすることもありました。それで気づいたことがあって、声量があればある程パワフルに聞こえないんです。声量があり過ぎると腹圧に声帯が耐えらなくて裏返ってしまう。なので、あまり声のボリュームあげないように、というのを意識して歌いました。

――声が大きければ迫力が出るものだと思っていました。これも矛盾のような感じがありますね。

 そうなんです。なのでサビでは叫ぶような歌い方なんですけど、ヘッドフォンの音量も小さくして、あまり声をうるさくならないように心がけました。ライブとレコーディングでは歌い方を変えていて、レコーディングの方がどちらかというと無理をした歌い方になってしまっていて。ライブだと正しい発声で歌わないと、途中で声が出なくなってしまったりするんです。レコーディングはライブ以上にニュアンスが大事だと感じているので、一瞬だけがなって歌ってみたり、ライブではやらないようなことも敢えてやっています。

――細かい部分にも注目して欲しいですね。さて、このシングルはエイルさんにとってどんな1枚になったと感じていますか。

 歌詞に関して言えば、曖昧なところがない、ストレートな作品になったんじゃないかなと思いました。そして、通して聴いた時にすごくメリハリのある1枚になりました。あとはこの曲たちをライブでどう表現していこうかといま考えています。

――ライブといえば6月16日に『Symphonic Concert 2021@LINE CUBE SHIBUYA~Eir Aoi Premium Orchestra Live~』も行われますが、どんなライブになりそうですか。

 フルオーケストラをバックに歌うのは初めてで、有観客なので今からすごくテンションが上がっています。定番の曲から、ちょっと意表を突いた曲も披露する予定なので楽しみにしていて欲しいです。

(おわり)

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