藍井エイル「ダントツで難しい」自身最大難易度「I will…」に込めた想い
INTERVIEW


記者:村上順一

撮影:

掲載:20年08月15日

読了時間:約13分

 シンガーの藍井エイルが8月12日、通算18枚目となるシングル「I will…」をリリース。表題曲はTVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』2ndクール エンディングテーマに起用され、ドラマチックな展開を持つ、藍井エイル史上、最高難易度の歌唱力を要する1曲に仕上がった。カップリングには水曜日のカンパネラの楽曲も手がけるケンモチヒデフミ作詞・作曲によるEDMサウンドの「アンリアル トリップ」、3曲目には“エイルバンド”でギターを担当する新井弘毅によるロックチューン「MY JUDGEMENT」を収録。インタビューではコロナ禍で考えていたこと、「I will…」の制作背景、これからの課題など多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一】

学生時代に芽生えた「支えてあげたい」想い

「I will…」通常盤

――この自粛期間はどのように過ごされていましたか。

 コロナの影響で、家の中で過ごすことがより一層増えました。普段からも家で過ごすことは多かったのですが、お仕事もストップしてしまったりもして、どう過ごして良いのか、時間を持て余してしまって。どうしていいのかわからない状況が長かったです。

――エイルさんはゲームがお好きなので、ゲーム三昧だったのでは?

 そうなんですけど、みんなゲームをやっているのか、回線が混雑していてうまくつながらない時もあったので、アニメや映画を観たりして過ごしていました。

――その中で歌や音楽と改めて向き合った時間もあったのでしょうか。

 自粛期間中はカバー曲を色々歌わせていただきました。その時は自分の家に録音できる機材があって良かったなと思いました。

――カバーしていく中で、新しい表現方法など発見はありましたか。

 きっと皆さん家での生活をしいられていたと思うので、上手く睡眠が取れない方もいらっしゃるんじゃないかと思いました。そこで藍井エイルの子守唄というのをやってみようと、そこで子守唄の歌い方に挑戦してみようと思って。昔はその発声方法が上手くできなかったんですけど、今はいろいろ学んで、優しく歌うということを意識しながらカバーしてみました。新しい歌い方、表現として向き合うことができたかなと思っています。

――今作「I will…」はその「優しさ」という部分にフォーカスされていると感じました。

 はい。優しさを意識して歌わせていただきました。曲の最後の方ではシャウトっぽく終わっているんですけど、基本的には熱唱にならないように、と意識していました。

――ちなみに「I will…」はいつ頃制作されていた曲なんですか。

 デモは1年以上前からありました。その時はまだタイアップの話も決まっていなかったですし、歌詞も書いていなかったです。歌詞はタイアップが決まってから書いたので、今年に入ってからです。

――アニメの制作サイドから歌詞についてリクエストはあったのでしょうか。

 特にリクエストはなかったので、台本を先に読ませていただいて、そこで受けたインスピレーションをもとにテーマを考え、作詞しました。アニメのストーリー、主人公のキリトの気持ちを切り取って書いているんですけど、アニメを観ていない方たちにも伝えたい思いがあったので、大事な人に寄り添ったり、支えたり、共に歩んでいくことをテーマにして書いていきました。

――テーマはすぐに決まった、とお聞きしているのですが、言葉にするのに時間がかかったみたいですね。なぜ、言葉にするのに苦労されたのでしょうか。

 もう、どこから書いたら良いかわからなくて。テーマが明確にあっても、それはサビの部分に当たると思うんですけど、その前をどうしたら良いのか、というところで悩みました。私はサビから歌詞を書けなくて、いつもAメロから書いていくんです。なので頭でつまづいてしまって…。

――歌い出しの<長い眠り>というのは、先ほどお話ししていた子守唄にも通じる感覚がありますね。

 確かにそうですね。でも、この言葉は、大事な人を失くしてしまい、心が壊れてしまった主人公がいて、それはもう眠ってしまっているかのような状態に近いと思い、この言葉が出てきました。そこから、だんだんと広げていくことができたんです。また難しかったのがメロディが1番と2番では変わってくるので、そこでどう表現していくか、言葉のはめ方というのは、すごく難しかったです。

――その言葉のはめ方として、特に難しかったところは?

 2サビの<全てこの手で抱えてきた>です。<抱えてきた>の<き>が上手く歌えるかどうかというのがありました。言葉と歌の相性があるんですけど、母音が“イ”というのは高い音が出しづらいので、そこが不安要素でもありました。でも、この言葉以外で良いのがなかなか思いつかなくて。<抱えてきた>というワードは絶対使いたかったですし、この場所だからこそ1番刺さりやすいんじゃないか、という気持ちもありました。なので、自分の力の見せ所だと覚悟を決めて、この言葉にしました。

――ここはファルセットからミックスボイスに変化していく、テクニカルな部分ですよね。

 そうなんです。いまだに苦労しています(笑)。この曲は藍井エイル史上、一番難しい曲、もうダントツで難しいと思います。

――ファンの皆さんにもカラオケなどで挑戦してもらいたい曲ですね。

 是非、挑戦していただいて、この難しさをわかち合いたいです(笑)。挑戦しがいがあると思います。

――歌詞はアニメに寄り添っていますが、ご自身と重ね合わせた部分もありますよね。

 はい。友達や家族、悩んで進めなくなってしまっている人がいるんですけど、それは私だけではなく、聴いてくれている人たちの周りにもいると思うんです。そういった方たちに自分は何をしてあげられるんだろうとか、自分にできることって何だろうと考えながら書きました。「I will…」というのは未来に〜するという意味なんですけど、私はあなたを支えていきたい、という希望的観測を込めてのタイトルなんです。

――タイトルから決意みたいなものも感じました。

 それもあります。知人の悩みとか聞く機会もあるんですけど、中途半端なのは良くないと思っていて、その人に私が何がしてあげられるのかすごく考えるんです。側にいることしかできない時もあったり、悔しい気持ちになる時もあるけど、どうにかして支えてあげられたらいいなって。それはファンの方たちに対しても同じように思っています。

――支えてあげたい、その気持ちが強くなった瞬間はどんな時でした?

 学生の時です。当時から悩み相談をされることが多かったんです。「歌を歌っていきたい」、という将来の夢を持っていながらも、「叶わないかもしれない」と思った時に、看護師になろうと思ったのも、それがきっかけの一つだと思うんです。私はすごくみんなから支えられていると感じているので、私も支えてあげられたらいいなと思ってしまうんです。

――あと、歌で面白いなと思ったのが、ラストのシャウトは勘違いから生まれたフレーズだったとのことですが、そういったことはたまにあるんですか。

 私がメロディラインを勘違いして、今のようなフレーズになったんですけど、こういったことはほとんどないです。デモの段階でこのフレーズは入っていなくて、これはレコーディングの時に、アレンジをしてくださったSakuさんに急遽口頭で教えていただいたフレーズでした。それで私が間違えてF#の音で歌ってしまって。Sakuさんは「そんなに高くないんだよね…」って(笑)。でもエモいから採用されたという経緯がありました。自ら難易度を上げてしまいました(笑)。ライブのことはあまり考えていなかったので、どこにきてもラスボス感はあります(笑)。

――ライブで聴ける日が楽しみです。さて、「I will…」のMVとジャケ写は2面性を打ち出した、とのことですが、どのような気持ちで撮影に臨んだのでしょうか。

 2面性、こういうのをやってみたい、というのはお話ししました。すごく盛り上がって、そこからスタッフさんがどんどん広げてくださって。ジャケ写に関しては2面性というテーマですけど、それは自分と自分で良いと思いました。MVはモデルさんにもう一人の私を演じていただきました。抱き締めるシーンがあるんですけど、すごく強めに私が抱きしめたので、モデルさんの心臓の鼓動がすごく聞こえてきて、私も緊張してきて(笑)。

――その抱き締めるシーンは見どころですね。

支えるというテーマをより濃密に表現したのがMVになっているので、見どころだと思います。

藍井エイルの新境地

「I will…」期間限定盤

――「アンリアル トリップ」はエイルさんの楽曲の中で新機軸の1曲ですよね。

 この曲はマウスコンピューターさんとの企画の曲で、「共作で作って欲しい」とのリクエストがありました。水曜日のカンパネラ、ケンモチさんの曲が好きで、藍井エイルがケンモチさんの曲を歌ったら面白いんじゃないか、と思いお願いをしたところ快諾してくださって。ケンモチさんの持ってる歌詞の世界観は面白いですし、おしゃれなダンスミュージックというところで、藍井エイルの新境地を引き出してもらえたらと思ったんです。

――歌詞はケンモチさんが書かれていますが、完全におまかせですか?

 歌詞のテーマは私が考えさせていただきました。最初は私が好きなものというところで、「スープカレー」というテーマをケンモチさんが考えてくれたんです(笑)。この曲の制作は自粛期間に入る前に始まったのですが、テーマは誰もが考えることとは何だろう、と考えたところ思春期かなと思いました。でも、けっこうテーマが難しかったみたいで、改めてどうしようかと考えていたところに自粛要請がきてしまい、制作がそこでストップしてしまったんです。でも、逆にこのコロナ禍をマイナスに捉えるのではなく前向きに捉えてみようと、それをテーマに書いていただいたのが「アンリアル トリップ」でした。

――サウンドは90’sを感じさせる部分もありますよね。

 そうですね。楽曲を制作するにあたってケンモチさんが色々参考曲をリストアップしてくださって、私とケンモチさんでこういう感じのイントロがあって、サビはこういう感じと、参考曲の雰囲気を組み合わせながら制作していきました。

――歌はどんなことを意識してレコーディングに臨んだのでしょうか。

 高音と低音、レンジがそんなに広くない曲でEDM感も強いので、最初は機械っぽくあまり感情を出さずに平たい感じで歌ってみました。でも、それが面白味に欠けるなと思って、自分が苦手なのかとか、その問題点を考えて。

  本番のレコーディングで私が先にスタジオに到着していたので、ケンモチさんがくる前に試しに録ってみようと思いました。機械っぽいものと、エモーショナルに歌った2バージョンを録って、ケンモチさんが到着されて聴いていただいて、どちらがいいか尋ねたところ、“藍井エイル節”を効かせた人間味のある方が良いとのことでした。なので、本番でやっと歌い方が決まったんです。

――サウンドとの対比が面白いです。

 楽曲のキーも最初は半音高かったんですけど、私の力不足で表現の自由度が狭まってしまったので、半音下げてレコーディングしました。それによって表現しやすくなりました。半音下げたことによって曲の雰囲気が変わるかな、と思ったのですが、そんなに変わらずに、クールになったと思います。聴き比べてもらって、このキーの方がいいねと。

――今回、歌詞に<妄想>という言葉が入っていますが、エイルさんは妄想はされますか。

 さいたまスーパーアリーナでライブをしている妄想はします。でも、私はどちらかというと、夢を見る方なので、妄想よりは夢で見ることの方が多いかもしれないです。私は明晰夢が出来るほうなので、ある程度は見たい夢を見ることもできるんです。でも、悪夢も多いんですけど(笑)。先日見た夢はどんどん目が悪くなるというものでした…。

――前回、夢のお話しをした時もチワワの目が爆発する、というものでしたがエイルさん目にまつわる夢が多いんですか。

 けっこう多いかもしれないです。それで目にまつわる夢について調べたこともあるんです。そうしたら、「何かを見落としている」という暗示みたいで。20回くらい目に関する夢を見ているので、何をそんなに見落としているのか気になってます(笑)。

今の課題とは

「I will…」初回盤

――「MY JUDGEMENT」はエイルさんの真骨頂といったサウンドですね。

 そうなんです。藍井エイルの王道と言っても過言ではないです。新井さんもそれを狙って作ってくださったんです。それもあってすごく歌いやすかったです。久しぶりに悩むこともなく、自由に歌える曲でした。新井さんは歌い終わった後にリクエストをいただくことが多いんですけど、今回はお互いの求めていたものが合致していたのか、すごくスムーズでした。新井さんのディレクションはけっこう厳しい方なんですけど、今回すごい褒めてくださって(笑)。

――最高のレコーディングだったんですね。間奏で悲鳴のような声が入っていますが、これはエイルさんの声?

 はい、私の声です。あと、悲鳴に加えて息切れをしている声も入っているんです。「MY JUDGEMENT」の歌詞が、今いる生温いところにいる状況を打破したい、という内容なんですけど、その苦しんで悩んでいるというのを表現するために、試してみて欲しいとのことでした。この息切れしている声は何テイクか録ったんですけど、本当に酸素が足りなくなってしまって、倒れそうになりながらのレコーディングで、初めての経験でした(笑)。

――それもあって鬼気迫る感じが出ていますよね。

 「ヒステリックで鬼気迫る感じで」とリクエストされていたので、それが伝わって良かったです。

――ライブでどう表現されるのかも楽しみな曲です。

 おそらくライブでは悲鳴の方をやるんじゃないかなと思います。まだどうするか全然考えていないんですけど。早く皆さんの前で歌いたい曲で、頭サビで<JUDGEMENT>とコールする部分は、みんなで歌いたいとレコーディング中から話していました。ラストのサビは、新井さんからのディレクションで、ライブをイメージしながら歌っていて、そうすることでよりラスサビ感を出せました。

――ライブ感というところで、ハンドマイクでレコーディングする方もいるみたいなのですが、エイルさんはそういった手法で録ったことはありますか。

 ハンドマイクでレコーディングしたことはないですけど、面白そうですね。けっこう初期の頃にお立ち台をブースに入れて、そこに方足を乗せてレコーディングをしたことはありますけど。今は発声方法が変わったので、それをやると逆に歌えなくなってしまうんです。昔はがむしゃら感のある歌い方ということもあって、試行錯誤していたことを思い出しました。

――進化された部分ですね。さて、最後にエイルさんの今の課題はなんでしょうか。

 まだ歌って間もないということもあり、「I will…」を歌いこなすことです。本当に難しい曲なので上手く発声していくこと、自分自身の身体を上手く使いこなしていかなければと思っています。

 例えばギターとかだったらチューニングを合わせればいいんですけど、人間という生身の身体なので、上手くチューニングが合わない日もあるんです。それを合わせるために自分の引き出しから調べなければいけない。なので、メモ帳に自分に何が足りないかという項目を沢山作っていて、そのチェックボックスを埋めていく作業をしています。それが出来た時に正しい発声法になっていると思うので、今の課題でもあります。

(おわり)

作品情報

藍井エイル

「I will...」
(TVアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」2ndクールエンディングテーマ)
2020.8.12 (wed) CD RELEASE
 
初回盤(CD+DVD)VVCL1695-96 1800円+税
DVDには「I will...」MV、「アンリアル トリップ」MVを収録

通常盤(CD)VVCL1697 1300円+税

期間盤(CD+DVD)VVCL1698-99 1600円+税
 ※DVDには「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」
2ndクールノンクレジットエンディングムービー」を収録

[CD収録内容]

M1.I will...
M2.アンリアル トリップ
M3.MY JUDGEMENT
M4.I will...-Instrumental-
※期間盤M4には「I will...-TV size ver.-」収録

ライブ情報

無観客ライブ「藍井エイル LIVE TOUR 2020“I will...”〜have hope〜」
【配信日】 8/16(日)20:00〜開演(19:30~ログイン可能予定)
★PIA LIVE STREAM  購入URL https://w.pia.jp/t/aoieir-pls/ ★LINE LIVE-VIEWING 購入URL  https://viewing.live.line.me/live/6
※チケット発売は〜8/17(月)18:00まで!

イベント情報

8/23(日)16:00~「I will...」発売記念SP配信イベント「藍井エイルのLIVE TRIP」開催
https://www.aoieir.com/news/archive/?520699
※参加受付期間~8/12(水)12:00まで

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