INTERVIEW

寺島拓篤

「イメージしたのは日本刀」アニメ『BASTARD!!』侍大将ヨシュア・ベラヒアに挑む姿勢


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年07月30日

読了時間:約6分

 声優の寺島拓篤が、7月31日からNetflixで全世界配信されるアニメ『BASTARD!!』第2期「地獄の鎮魂歌編」に参加。旧ア=イアン=メイデ国の侍大将ヨシュア・ベラヒアを演じる。『BASTARD!! ―暗黒の破壊神―』は累計発行部数が3000万部を超える、萩原一至氏原作によるファンタジーバトルマンガ。昨年6月よりアニメ第1期がスタートし注目を集めた。インタビューでは、『BASTARD!!』の魅力から、ヨシュアを演じるにあたって「イメージしたのは日本刀」だというその言葉の真意、来年声優デビュー20周年を迎える寺島が、この約20年間で気づいたことを聞いた。【取材・撮影=村上順一】

デフォルメした“侍感”を意識

『BASTARD!!』第2期「地獄の鎮魂歌編」キービジュアル©萩原一至/集英社・BASTARD!! 製作委員会

――第2期がスタートされますが、出演が決まった時どんな心境でしたか。

 『BASTARD!!』は、僕の世代でも常に話題になっていた作品でした。連載していた時期はまだ幼かったこともあり、大人になってから読み直した作品だったので、自分が知らなかった物語を知って、そこを演じることができるというのはすごく嬉しかったです。

――オーディションでヨシュアに決まったとのことですが、他のキャラも受けていたのでしょうか。

 僕はヨシュアだけでした。オーディションでは二役〜三役受けることが多いので、ヨシュアのみでオーディションが来た時は、アニメサイドにきっとイメージがあるんだろうなと思いました。自分の中でヨシュアと符合するものを想像しながら、役作りをしていたのですが、決まって本当に嬉しかったです。

――第2期で登場するヨシュアたちはどんな存在だと思いましたか。

 雰囲気を変える役割がある人たちだなと思いました。ストーリーが進んでいくうちにカイ・ハーンに対する想いも見えてきて、ファンタジー世界なんだけど、現実の僕らと共通項を感じるぐらい人間らしさのある、親近感を覚えるキャラだと思いました。

――どういったところを意識して、ヨシュアを演じられましたか。

 意思のブレなさとか、声の張りみたいなところでらしさを出せればいいなと思いながら演じていました。自分の声でヨシュアの侍っぽさを表現するとなると、ちゃんと声を張る、はっきり言葉を伝えるというのは、通常の会話をしているシーンでも心掛けていました。そして、ファンタジーの中での侍というところで、本物の侍の矜持的なところよりも、外国の方々にお見せするような、デフォルメした“侍感”を意識していました。

 そして、戦闘シーンにもすごく力を入れています。ヨシュアはすごく強いイングヴェイ・フォン・マルムスティーン(CV:諏訪部順一)と渡り合えるような人物であるので、がむしゃらという感じではなく、落ち着き払ったキャラクターなので、普段の自分よりも格上のキャラクターだと意識しお芝居をしていました。例えば、「蝶舞阿修羅斬」という技を繰り出す時も1回目と2回目では状況が変わるので、声の張り具合も自然と変わりました。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがでした?

 コロナ禍で分散収録、ブースに入れる人数に制限があったので、4人で収録することが多かったです。ヴァイ・ステアベ役の坂(泰斗)さんやヨルグ・フィシス役の笠間(淳)さん、カイ・ハーン役の伊藤静さんとご一緒することが多かったです。時々ダーク・シュナイダー役の谷山紀章さんと一緒になることもありました。ストーリーやセリフなどみんなで面白おかしくツッコミながらやってましたが、お芝居としてはシリアスなシーンも多かったので、メリハリがあってやりがいのある現場でした。

――『BASTARD!!』はダークファンタジーというジャンルの作品なのですが、寺島さんはこの作品からどのようなメッセージを感じましたか。

 人間は欲望や理性などいろんな感情を持っているけど、自分に正直に生きなきゃいけないんだ、というメッセージを僕は感じました。それは人によって違うので、いろんな感情がぶつかり合ってこの物語が生まれていると思うんですけど、そこを変に取り繕わないのは、きっとダーク・シュナイダーが主人公だからだと思います。

――寺島さんは欲望というのはあります?

 もう欲望ばっかりです。

――例えばどんなものがありますか。

 この作品で言えば、僕は男なので、やっぱりエッチなシーンが出てくると、ウヒョってなります(笑)。あと、イチ読者としてダーク・シュナイダーの呪文をやってみたいという欲もありますね。そういう欲望を掻き立てられるというのは、やはり作品が面白いからだと思います。

――個性的なキャラクターがたくさん登場しますが、寺島さんが気になっているキャラクターは?

 ティア・ノート・ヨーコ(CV:楠木ともり)です。まずキャラ作りが大胆で、メインヒロインで“ボクっ娘”ということに驚きました。少女なのにセクシー、伸びしろもあるのに完成度も高く、振り回されながらもツッコミ役もやって、締めるところはしっかり締める。ストーリーが進むにつれて、魅力がさらにグッと増しているいいキャラクターだと思います。そして、彼女が登場するたびに、みんなが「ヨーコ!」と口々に言うのですが、一体どれだけすごいんだと(笑)。そういうところでも魅力を感じています。

自分に足りないものが山ほどある

村上順一

寺島拓篤

――もうすぐ声優デビュー20周年を迎えます。この約20年間の活動の中で1番の気づきはどんなことでしたか。

 足りないことがまだまだ沢山あることです。それは若い頃には気づけなかったことでした。先輩方のことをすごいと思っていても、その凄さの本当の意味、何がすごいのかというその理由だったり、見えてなかったところが実はすごかったとか、経験を積めば積むほど、まだまだ自分に足りないものが山ほどある、ということに気づかされました。

――ここから追求していきたいこと、探究していきたいことはありますか。

 これまでと変わらないんですけど、人のことを研究することです。この人の良さは何なんだろう? 声の響かせ方なのかセリフの滑舌なのか、そもそもの声質なのか、あらゆる人で研究しています。結局それを自分にどう落とし込むかを考えるのですが、最終的には「この人には敵わない」と思ってしまう。「いつか自分なりのものができれば」と思いながら研究していますが、それはまだ掴めていないままなんです。

――『BASTARD!!』ではどんな自分を見せられたら嬉しいですか。

 自分が持っている声質、普通に喋っている声とは違うラインの鳴らし方、響かせ方をしているので、ガチガチに固めすぎない時の柔らかさみたいなものが、ヨシュアに出ていると自分では分析しています。ヨシュアはサムライ・マスターという、人を取りまとめる役割があるので、人としての固さはしっかり作りたいと思っていて、その中でイメージしたのは日本刀でした。日本刀は硬い皮鉄と柔らかい心鉄で出来ているので、その性質をヨシュアに投影して自分の声で出せれば、とイメージしながら演じてました。

――寺島さんの活動の原動力になっているものは?

 とにかくアニメが好きという気持ちに尽きます。オーディションを経ていただいた役なので、受かった時の喜びというのはすごいんです。逆に言うとオーディションに落ちた時のショックもすごいんですけど(笑)。監督をはじめとする、アニメーションや音を担当されるスタッフさん、最終的に声を入れる我々のアンサンブルによって、携わった作品がどのように仕上がるのか、というのをいつもワクワクしながらやっていて、そのワクワク感が原動力に繋がっています。

――最後に本作の見どころをお願いします。

 バトルの規模がとにかく大きいところです。今回、破壊神アンスラサクス(CV:小山茉美)がいよいよ動き出します。過去のお話として出てきたアンスラサクスではなく、いま奮闘しているダーク・シュナイダー達と実際にやり取りをするアンスラサクスの怖さは、見どころの1つだと感じています。僕は小山さんのお芝居がこういうテイストで来られるとは思っていませんでした。ちょっと軽い感じがあるのですが、シンプルに圧を出して怖くするのではなく、余裕を持っているのがまた恐怖感を煽るので、注目してみてほしいです。

(おわり)

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