4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTES(略称=オーラル)が10日、都内某所で13日にリリースされる通算4枚目となるニューアルバム『Kisses and Kills』のリリースを記念した『Kisses and Kills Concept Bar』のレセプションパーティーを開催した。山中拓也(Vo、Gt)監修のもとアルバムの世界観を表現したConcept Barで、一般には16日、17日の2日間限定で開催する。オーラルのこだわりが詰まったConcept Barの模様をレポートする。【取材・撮影=村上順一】

『Kisses and Kills』の世界観を視覚化

山中拓也(Vo、Gt)

 現在の最高傑作と謳う『Kisses and Kills』の世界観を視覚化したConcept Barは、アルバムのConcept Movieの撮影もおこなわれた場所だ。その空間をアバンギャルドに装飾し、アートな空間に仕上げた。

 なぜここで一般的なロックバンドのイメージとは違った表現をしようと思ったのだろうか。それはもっとトータルでバンドや楽曲やアルバムの世界観を届けたいという思いがまずあったと発案者の山中は話す。そのこだわりはアルバムのジャケットにも強く反映されていて、アートワークにもアイデアを出し、今までで一番時間を掛けたと語る。一足早くその『Kisses and Kills』CDやノベルティグッズも展示されていた。

 このConcept Barアイデアの発端には、山中が昨年から様々なクリエイターとの交流のなかで参加したパーティーだったという。それを経てもっとロックバンドにもカルチャーに寄り添った表現が必要だと感じたと話す。

 会場に入ると赤色の世界、現実世界から抜け出したかのような空間がそこには広がっていた。そこにはマンハッタン・マルガリータというカクテルを飲みながらゲストと談笑するメンバーの姿があった。もともとこの場所はフランスのバレエ教室をイメージしたスペースで鈴木重伸(Gt)はこの場所に何度か訪れたことがあり「こんなにイメージが変わるんだ」と驚いたという。

 アルバムのConcept Movieが流れ、6月13日にリリースされるアルバム『Kisses and Kills』の持つ“愛情と狂気”という相反する世界観を色濃く打ち出していた。

  山中はこの空間やニューアルバムの世界観にケヴィン・スペイシー出演の映画『アメリカン・ビューティー(米1999年公開)』をイメージしたと話す。この映画も家族の崩壊を描く中、“ビューティー”美しさという真逆のタイトルがつけられているということもあり『Kisses and Kills』の持つテーマの参考になったのだろう。

 Concept Barに足を踏み入れた瞬間に、強烈に目を惹いたのはバラの花ビラで埋め尽くされたバスタブと風船、異形とも言える包帯に巻かれた女性のマネキンを使用したオブジェだ。このオブジェが制作にあたり特に大変だったと話す山中。

 山中はスマホに記録していたこのConcept Barの設計図ともいうべき画像も見せてくれた。そこには山中の手書きで書かれた絵と自身の持つイメージに近い写真が数多く保存されており、かなりそのイメージ図に近いものがこの場所にしっかりと再現されていた。それを嬉しそうに話す山中の姿も印象的だった。

色々仕掛けていけるバンドになりたい

Concept Barのもよう

 メンバーはこの話を聞いた当初「Concept Bar?」という感覚だったそうだが、完成した今その世界観に没入していったという。中西雅哉(Dr)は「拓也にこういったものを作りたいと思わせたアルバムの持つ力を感じた」と話し、「今後は自分もこういったカルチャーの設営に携わりたい、機材は揃っていますから(笑)」とユーモアを交えたコメントも。あきらかにあきら(Ba、Cho)は、今回この空間を作りあげてみて「改めてチーム力を感じアルバムをより届けたい」と語った。

 このConcept Barで流れている映像は、山中をフィーチャーしたコンセプトムービーで、現在ソロプロジェクトsleepyheadとして活動する武瑠(ex:SuG)がクリエイティブディレクションを担当した。拓也と意気投合し、今回のConcept Movieを作り上げたと話す。現在は1人で自身全ての音源から映像制作をこなすマルチな才能を発揮している。この空間もオーラルと武瑠のコラボによってお互いの新たな可能性を感じさせた。

 山中は「変わったことをしたい、色々仕掛けていけるバンドになりたい」と意気込みを見せる。今回このConcept Barを作り上げたことにより、アルバムにも確かな手応えを感じているという。「世界観とともに音楽が持ち上がっていくバンドだと思うし、今後は規模も拡大できたら…」とこれからの展望を話す。

 ここに来ればより一層アルバムの世界観に触れることができる。音楽だけではないカルチャーとの融合は、ロックバンドという枠に捉われない自由さと、オーラルの新たな可能性、そして、シーンの未来が見えてくるようなイベントだった。

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