世界を見渡しても稀有な存在だというジャズ・ヴァイオリニスト。その数少ない奏者の中でひと際輝きを放つ寺井尚子が9日、プロデビュー30周年、CDデビュー20周年というダブルアニバーサリーを記念し、セルフセレクションによるベストアルバム『寺井尚子ベスト』と、スタンダードと呼ばれる楽曲を集めた『The STANDARD II』の2枚を同時にリリースした。
『寺井尚子ベスト』は、「ワルツ・フォー・デビー」や「リベルタンゴ」など、ジャズ・ヴァイオリニストという地位を確立した演奏を堪能できる珠玉の1枚。『The STANDARD II』は、映画音楽や歌モノ問わず、1963年の米映画の「シャレード」やスティーヴィー・ワンダーの「オーヴァージョイド」など様々なジャンルから楽曲を選曲した。
ほとんどの曲をテイクワンで録り終えた「奇跡的なレコーディング」のもとに制作されたが、そこには高い集中力が必要だ。それを高める方法として「健康であること」そして「自分が何をしたいかを見極めること」が大事だと語った。レコーディングはどのようなものだったのか。選曲理由やこだわった点などを含めて聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】
基本を大事に自分が何をしたいかを見極めること
――前作『The STANDARD』から約半年というスパンでのリリースになりました。制作はいつ頃に始まったのでしょうか。
前作が終わってそれからですね。そこからどのようなアルバムにするかを考えていきました。
――今回は2日間で14曲全てをレコーディングされたようで。
ほとんどの曲がテイクワンで録れたこともあって、奇跡的なレコーディングになりました。バンドの皆さんが各々のパートに責任を持って取り組んで頂けたこともあり、スムーズに進んでいきました。良い意味でとても緊張感の溢れる現場でした。
――前回のインタビューで「良いイメージを持つことが良い結果を生み出すこと」と話しておられました。それがまた顕著に出たレコーディングですね。
そうですね。悪いイメージは考えてはダメで。本当に上手くいっているところをイメージして物事に臨むのがベストです。なるべくネガティブなことは考えないようにしています。
――寺井さんはその時のバンドの状態をみて、1曲目に録る曲を決めるとのことですが、今回はどの曲から録り始めたのでしょうか。
「シャレード」です。ほぼアルバムの曲順通りに録っていきました。そして、幸運なことに1日目で9曲も録れてしまいました。でも、それぐらい録れないと2日間では終わらないなと思っていて…。半分の7曲ずつ録るのでも良いんですけど、2日目の精神状態も全然変わってきます。行けるところまで行こうというなかで、本当にスムーズに行きました。
――素晴らしい集中力だと思うのですが、集中力を養うために普段心掛けていることはありますか。
健康であることぐらいだと思います。音楽や健康、生きることも全て基本を大事にしています。その基本を大事に自分が何をしたいかを見極めることです。
――集中力といえばコンサートにも必要だと思うのですが、本番前に必ずおこなうことなどはありますか。
1〜2時間ぐらい一人になります。準備をしていると自然にそうなってしまうんですけど(笑)。そこから徐々にテンションを上げていきます。
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