音から何か感じてもらえたら、AA=上田剛士 異質さ追求した10年
INTERVIEW

音から何か感じてもらえたら、AA=上田剛士 異質さ追求した10年


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年05月03日

読了時間:約11分

バンドならではの音で再録

『(re:Rec)』ジャケ写

──10年前はやりたいアイデアがあっても、技術とかハード面で難しかったことも多かった?

 多かったです。単純に取り扱えるトラック数もそうだし、機材の安定性もそう。今は機材が進歩して、すごくやりやすいです。

──昔は、コンピュータが途中でフリーズしたり?

 爆弾マークが出っぱなしになることはしょっちゅうで、そんな機材をライブで使うわけにはいかないし。ハードディスクも今みたいに小さくなかったから、フロッピーディスクにコピーして持ち歩いていました。それが今は、ノートパソコン1台ですべてがまかなえます。今やレコーディングもコンピュータが主流で、自分の作品でも、ベースやギターもコンピュータに繋いで鳴らして、全部コンピュータ上で作ってしまったアルバムもあります。

──今回のアルバムは、そこであえて生のバンドサウンドとの融合を意識したわけですね。本作には、上田さんの他にボーカルの白川貴善さん(BACK DROP BOMB / Noshow)、ギターの児島実さん(ex THE MAD CAPSULE MARKETS)、ドラムにZAXさん(The BONEZ / Pay money to my Pain)、マニピュレーターに草間敬さんが参加。

 あえてバンドっぽい、録り方にこだわりました。今までもライブでは、生のバンド演奏と打ち込みを同期させてやっていたので、ライブでやっていることをそのまま収録したような感覚です。一人ひとり別に録ることはせず、みんなでスタジオに入って“せーの”で録りました。それが再録をやることの意味だと思ったし。ライブでやることで変わったり固まったりしてきた曲を、音源として収録するなら、スタジオだけれどライブと同じようなやり方で録るのが、理にかなっていると思いました。

──過去の音源と比べると、だいぶ違って聴こえますね。

 バンドならではの音になっていると思います。生のドラムというだけで、まったく違うし。それに僕がボーカルの曲は、歌は別録りしましたけど、タカ(白川貴善)が歌っている曲は、演奏と同時に録っていて。僕もベースを弾きながら、前にシンセを置いて途中でいじったりしているので、もうまったくライブと同じです。

──キャリアのあるメンバーだからこそできるやり方ですね。

 ほとんど1テイクで、多くても3テイクくらいしか録ってないですね。念のためにもう一回録っておこうか、くらいの感じでした。それに、改めてバンド生演奏の良さを再確認したところがありました。「こういうのもやっぱりいいな」って。

──どの曲も1曲の中で、次々と展開していくのが面白いですね。

 それはよく言われます。「曲が突然変わる」って(笑)。自分では意識してやっているわけじゃないんですけど。曲を作ってほしいと頼まれることもあって、BABYMETALやBiSなどにも提供していて、先方の方とお会いしてお話をさせていただくと、「それが上田さん節です」とおっしゃっていただいて、初めて自分の音楽はそういう風に聴こえているんだと気づくみたいな感じです。単純にそれが好きで、面白いと思って作っているだけなんですけどね。

──AA=の音楽は、どこかSF映画で鳴っているような映像的な感覚も受けるのですが。

 映像とか色みたいなイメージは、必ず浮かんでいますね。

──逆に何か映像作品からインスパイアされることも?

 「The Klock」という曲は、蜷川実花さん監督の映画『ヘルタースケルター』のために書き下ろしたんですけど、そのときはまだ完成していない映画のシーンを実際に観ながら作りました。それと、ネットにトレーラー映像があがっていて、音はまったく違うものだったんだけど、それはすごく観ましたね。そういう作り方をしたのは、そのときが初めてでしたけど、自分では面白い感覚でした。普段は、頭に浮かんでいるモヤっとしたイメージに近づける感じで作るんですけど、すでにあるハッキリとした映像に対して作るのは新鮮だったし面白かったです。

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