音から何か感じてもらえたら、AA=上田剛士 異質さ追求した10年
INTERVIEW

音から何か感じてもらえたら、AA=上田剛士 異質さ追求した10年


記者:榑林史章

撮影:

掲載:18年05月03日

読了時間:約11分

上田剛士のソロプロジェクトAA=が、ベストアルバム『(re:Rec)』をリリース。THE MAD CAPSULE MARKETSの中心人物として活動後、2008年にAA=の活動をスタート。映画『ヘルタースケルター』エンディングテーマや、2015年モード学園TVCM曲などでも話題となった。上田剛士名義では、BABYMETALの「ギミチョコ!!」や「あわだまフィーバー」、BiSの「STUPiG」などに楽曲提供、ゲームやCMの楽曲も多数手がけている。本作『(re:Rec)』は、10周年を迎えたAA=の代表曲を網羅しながら、すべてをバンド形式で再録し、ベストでありながら最新のサウンドが満載されたものになった。上田は10年を「自分の音楽は異質だが、それをやり通すことが重要だった」と振り返る。ラウドロックシーンで異彩を放つAA=は、今何を想うのか?【取材・撮影=榑林史章】

好きなことをやり通すことで理解される

上田剛士(撮影=榑林史章)

──AA=として始動してから10年、ラウドロックのシーンも変わったと思いますが。

 それはまあ、10年も経てばいろいろあります。でも、自分はあまり意識していないです。昔から自分のやりたいことを、自分のやれるペースでやっているので。シーンもあってないようなものだし、要は自分が何をやりたいかが重要ですから。

──メロコアの持つキャッチーさ、ラウドロックのヘヴィさ、そしてエレクトロサウンドの三位一体。こういうサウンドは、10年前も今も他にはいないですよね。

 自分がやっている音楽は、自分でも異質だと思っています。ただ自分の好きな要素を組み合わせて始めたのが最初だし、何か既にあるジャンルの音楽をやろうと思って始まったわけではなくて。

 もともとはパンクが好きでやっていたんですけど、その時代ごとに好きなテイストがあって、それを取り入れていくことが自分のスタイルだと思っています。でも興味を持ったもののほうに重心が移動することはなく、常にもともと好きだったパンクロックが中心にありながら、そこにいろんなジャンルを混ぜていって。それによって広がって、いびつになっていくものが自分らしい音楽だという感覚です。

──どのジャンルとかどのシーンとか、どこに属しているか上手く説明できない感じが、またいいですよね。

 前のバンドでは、海外ではメタルに入れられていたりして。「ああ、メタルって捉えるんだな〜」って新鮮でした。それで実際に海外では、メタルバンドがたくさん出るフェスばかりに呼ばれていたし。確かにメタルの要素もあると言えばあるので、ありっちゃありだなって。だから聴いてくれた人が、考えてくれればいいと思います。

──今作のタイトル『(re:Rec)』は、「リレック」なのですが、最初に「レリック」と読み間違えてしまって(笑)。「レリック」を調べたら「遺物」とか「残存種」という意味があって、妙に納得していたんですけど。

 あはは。それもいいですね。

──どこか、“生き残っている感”みたいなものはありますか?

 過去を振り返るようなことはあまりないけど、でも10年と考えると長いですよね。そういう意味では、生き残っているなって思います。同年代にデビューしてバンドをやっていた仲間で、辞めていった人も多い。でも、自分のやりたいこととやれることだけを追求してきて、それで生き残っていると思ってもらえていたら、それはラッキーなことだと思います。

──でも自分がやりたいものをやるには、そういう環境作りも必要ですよね。

 そこは恵まれてきたと感じます。自分の音楽を理解してくれる人がたくさんいて、その上でやれてきた。このアルバムは、その上に成り立っているとすごく感じます。参加してくれたメンバーもそうだしスタッフもそうだし。自分の音楽を理解して愛してくれて、こういう作品も出させてもらえているのは、本当にありがたいです。

──努力する姿と言うとあれですけど、真剣で嘘のない姿を見せていかないと、理解してもらえないですよね。

 運もあると思いますけど、好きなことをやり通すことだけですね。そこだけは絶対に曲げなかったから、理解してもらえたんだと思います。ブレてばっかりでは理解してもらえないし、長く愛してくれているファンが多いことからも、自分が求められているものはこういうものなんだとはっきりしているし。どれだけ曲げずにやれるか、試されている感じもありますね。

──逆に今は、AA=と時代がリンクしている感じがあって。時代が追いついたと言うか。

 確かに打ち込みとか、生バンドで鳴らす以外の音を早くから取り入れてやってきたけど、そこは単純にハードや技術の進歩に左右される部分です。それが時代と共に進化してきて、その進化と共に自分の音楽も進化してきたわけです。今の時代は、打ち込みと生のバンドという肉体的なものを、より自然に組み合わせることができるようなところまで進化しているので、それで自分がやっている音楽も普通に感じてもらえるようになったのかもしれないですね。

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