歩みと歴史を知って欲しい、南波志帆 コンプレックスも個性に
INTERVIEW

歩みと歴史を知って欲しい、南波志帆 コンプレックスも個性に


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年04月18日

読了時間:約10分

歩みと歴史を知って欲しい

――南波さんの楽曲には、渋谷系の音楽スタイルと共通する匂いを覚えます。

南波志帆

 その言葉は嬉しいです。実際にデビュー当初から、“ネオ渋谷系”と言われることが多かったのも事実ですし。これは、今だから笑い話として話せるんですけど。デビュー間もない時期に受けたインタビューの中で、「南波さんの音楽の源流はフリッパーズギターなんですか?」と質問をされ、「それは、どんなギターなんですか?」聞き返し、すごく恥ずかしい思いをした経験がありました。そこから、渋谷系についての本を買ったり、いろんな音源を聴いたりと、あの当時の時代の音楽を後追いしていた経験もあります。

――むしろ今は、いろんな音楽に精通している?

 ありがたいことに、NHK-FMで放送中のレギュラー番組『ミュージックライン』のDJを4年間担当させていただいているおかげで、いろんな最新J-POPナンバーを耳にしていますね。大御所から新人の方まで、すでに500組以上の方々とお会いしてお話をしました。とても恵まれた環境をいただけているなと感じています。

 嬉しいのが、ゲストアーティストの方々と同じアーティストの目線で話が出来ること。その会話を通し、私自身アーティストとしての意識をいろいろ学べる経験をしています。近年では、私が求めた感性の人と出会うと、楽曲提供をお願いしようと声をかけていて、とても素敵な出会いの場にもなっています。

――大御所の方が来たときは、緊張しませんか?

 私、昔から緊張しない性格なんです。スタッフの方にも「南波志帆の心臓が欲しい」と言われて、心臓に毛が生えているみたいです(笑)。むしろ、ゲストの方に「この歳の子と話をする機会がないから、逆にドキドキします」と言われるくらいで。そこは、「ホント、小娘ですみません」と言いつつも、その環境を毎回楽しんでいます。

――『無色透明』に収録した楽曲は、南波さんご自身が選曲した形なのでしょうか?

 とても素晴らしい方々から楽曲提供を受け続けていて、どの楽曲も本当に大好きなんです。極論で語るなら、「お父さんとお母さんどっちが好き」と聞かれるのと同じくらい私自身で選曲をおこなうことは難問だったから、そこは、私の信頼するディレクターにお任せしました。

 今回は、「南波志帆の入門編」として、シングル作品やタイアップ曲を中心に、年代順に南波志帆らしい楽曲たちを並べました。そうしたのも、最近私のファンになった方々から、よく「どの作品から聴いたら良いのかわからないので教えてください」と聞かれるんですね。だから、新たにファンになった方々へ向けての意味も含め、「南波志帆の歩みと歴史を知って欲しい」という意味での選曲と曲順になっています。

――学生だからこその視点の歌から始まって、次第に多彩な心模様を描き出す姿へと成長していくように、この10年間の南波さんの心の歩みが見えますからね。

 ありがとうございます。あえてリリース順に収録したことで、より私自身の変化や成長が見えやすくなっているなとは、自分でも聞いていて感じました。まさに、南波志帆の歴史歩みを感じられるベスト盤になったと思います。

――最後には、矢野博康さんの手による新曲「夢の続き」も収録していますね。

 今回、唯一となる新曲が、私が歌の世界で生きていくと決めたきっかけを与えてくださった矢野博康さんの書き下ろしナンバーになります。私は、矢野さんのことを音楽の父としてずっと慕ってきました。何も知らないただの中学生だった南波志帆に、アーティストとしての価値を与えてくださったのが矢野博康さんなんです。

 矢野さんがいなかったら、今の南波志帆も存在していなかった。だからこそ、10周年というタイミングを通して、もう一度矢野さんの楽曲を歌いたかったんですね。とくに近年は、親離れじゃないですけど、自分と世代の近い方々と一緒に音楽を作っていたので、今の自分が矢野さんの楽曲を歌ったときにどんな風に歌えるのか挑戦したかったんです。そこで矢野さんへ「矢野さんの楽曲をもう一度歌うことが今の私の夢なんです」とお伝えしたところ、矢野さんが「夢の続き」を届けてくださいました。

 ここには、矢野さんの愛しか詰まっていません。「矢野さんは、私のことをこんな風に見てくださっていたんだ」と感じたら、聞いていて涙が止まりませんでした。何より、「夢の続き」を通し、もう一度夢を見る勇気を矢野さんからいただきました。

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