虚無感と希望は表裏一体、jan and naomi 音で表現する破壊と再生
INTERVIEW

虚無感と希望は表裏一体、jan and naomi 音で表現する破壊と再生


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年04月19日

読了時間:約12分

ノイズは一番嘘のないもの

――では3曲目の「TIC(Requiem for Tokyo)」このタイトルの意味は? 何かの略?

jan

jan これは「トーキョー・インペリアル・コンフェッション」の略です。

――この曲の最後にインパクトのあるノイズが入っていますが、これは破壊的なイメージでしょうか。

jan 歌詞の最後で街が崩れ去るということがあって、そうしたらnaomiさんがシンセサイザーでキュィィってやり始めて。

naomi これは僕ら的には言わずもがな、こういうアレンジになるというのがあります。アウトロがああいう展開になるとやっぱり破壊したくなる欲求というのが出てきて。けっこう何も考えずに思うがままにやっています。この曲に関してはレコーディング時がセッションみたいな感じで、割と構成やアレンジを100%決め切らずにレコーディングに入って、試行錯誤しながらやった楽曲ではあったので、そこでノイジーなアプローチはけっこう試しました。

――お2人の中でノイズはどういう風に捉えているのでしょうか?

jan 一番嘘のないものと自分は感じています。例えば人が作るノイズミュージックだけじゃなくても、工事現場のノイズとか、割と不快とされる音が身体のまわりで鳴っていると、自分の意識が自分の肉体の中で正直なところに辿り着ける。自分は誰であって、自分はこういうことがしたくて、今まで惑わされてきたものの怨念が払われる気持ちになります。変な意味で浄化されるというか。ノイズは滞在意識の本質的なところに辿り着けるツールなのかなと。

――6曲目の「Fracture」の歌詞では潜在意識を指す“エス”という言葉が出てきますよね。そこともリンクしている感じがあります。

naomi 僕は、ノイズミュージックは無条件に興奮しちゃうというか、凄い幸せな気持ちになります。とにかく色んなタイプのノイズを自分で出せるようになりたいと思うくらい、ノイズのプロフェッショナルになりたい。僕は家でノイズを研究するようなタイプではないから、2人でライブとかやったときに、いかに僕らの限られた楽器からノイズを出すか、みたいのが楽しいんです。

――偶然から生まれたものは美しいですよね。

naomi 特にノイズに関してはそうですね。もちろんノイズを生業としているミュージシャンの人達はちゃんと意図してやっているんでしょうけど、僕らがそういうゾーンに入るときは凄く面白いんです。

――基本的に曲を作るときもインプロビゼーション(即興)で作っていった方が最終的な仕上がりが良い?

naomi ライブのアレンジという意味ではそうです。レコーディングするようなアレンジメントは即興ではなかなか辿り着けないけど、ライブアレンジとか、ライブのときの余白部分を埋めるのは即興性というのは凄く面白いです。

jan 俺らがベーシックに作った土台の上にゲストミュージシャンがインプロしたりというのは自分達の想像の範疇を超えた演奏をしてくれるから面白いなと感じています。

――サウンドもそうなんですけど、歌詞もけっこう哲学的だったり難しいところもあると感じました。

jan わりと前まではもうちょっと抽象的な表現で、読み手側に想像してもらうとか思っていたんですけど、今回は明確にストーリーを伝えてみようかなという意識はありました。

――ダイレクトなところもあるし、7曲目の「City of love」の<青い目をした2人の少年(双子)が僕のベッドに横たわり 口づけを交わしていた>など、絵は浮かぶもののなかなかどういう状況なのかという部分もあります。

jan 双子が何かを表している訳でもなくて、割とSFっぽい感じで、本当に青い目をした2人の少年がキスをしている、みたいな。曲によってなんですけど、そういう系の歌詞のものは、割と抽象感を前よりは排除しています。

――さらに歌詞も変化していく?

jan そうですね。今回も8曲目の「X」のように日本語の歌詞に挑戦したりもありますから。

――さて、今作はメジャー1作目となりますがメジャーというフィールドには興味はあったのでしょうか。

naomi メジャーを目標としてやってきた訳ではないので、興味はもちろんなくはないけど、メジャーではなくてもやれると思ってはいました。ただ、近くで音楽的な戦略や展開をすることに長けた人がいなかったので、せっかく良いものを作った自信があるのに、それを広げ切れないという思いはやっぱりありました。

jan 今までは普通ミュージシャンやバンドがやらないプロモーションの仕方を軸に、そういったやり方をしているのがカッコいいというのもあったし。次はもうちょっとオーソドックな方法も取り入れて、かつ今までのアバンギャルドなやり方も加味してやってみましょうかと。

――最後に今後の目標は?

naomi 今まではEPだったので、今回初めてアルバムを作ったことで、勉強になることが多かったです。曲数が多いから今まで一番時間が掛かったし大変だったんですけど、それによって録音面で得た経験が凄く大きくて。これを持って次の作品、レコーディングセッションをやってみたいという気持ちは凄くあります。目標という意味では次作を早く録りたいという感じです。色々やり方とか「こうしたらもっと面白いんじゃないか」というのを感じた部分があったから。

jan 僕はこれまで歌詞を書いて曲を付けるみたいなプロセスがあったから、歌詞を一番後回しにしてみるというのも今後はやってみたいです。

(おわり)

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