虚無感と希望は表裏一体、jan and naomi 音で表現する破壊と再生
INTERVIEW

虚無感と希望は表裏一体、jan and naomi 音で表現する破壊と再生


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年04月19日

読了時間:約12分

虚無感と希望は表裏一体

――お2人は、楽器はどれくらいの時期から始めたのでしょうか?

naomi

naomi 僕の場合は兄がギターを弾いていたので、それを触り始めたのが小学生くらいでした。

jan 小学生の頃に家にある楽器を触ったりとかはあったけど、高校に入ってコードを覚えたりし始めました。

――作曲に興味を持ち始めたのは?

jan 高校を卒業して初めて曲を作ったかな…。フォークロックで爽やかで「イェー!」みたいな(笑)。アレンジが変わったというだけで、今作っている曲もアコースティックギターでやったら、その時の雰囲気に近くもなるかなと思います。

――naomiさんは、作曲はいつ頃からでしょうか?

naomi 高校時代です。先輩でバンドをやっている人達がオリジナルをやり始めているのを見て感化されて「自分でも作ってみよう」と思って。作っていた曲も今とそんなに変わらないと思います。とにかくメロディが綺麗な音楽が好きだから、それに頑張ってトライしていました。

――janさんはどのような音楽を?

jan 聴いていたのはザ・リバティーンズ(英・ロックバンド)です。ガレージロックだけど、ちょっとジャズっぽいコードも入っているみたいなものとか作りたいなと思いつつ、結局シンプルなオアシスだったりニール・ヤングみたいなものになっていました。

――さて、そんなオリジナリティに溢れるjan and naomiですが、今作『Fracture』のコンセプトは?

jan 今まで作ってきた僕の曲に関しては、ちょっとチクチクした感じを出したいという意識はありました。それでマイナーっぽい曲が増えたのかなと思います。アルバムとして作るときに特にコンセプトがあった訳ではないです。最初は5曲入りのEPを作ろうかくらいの感じで進んでいきました。

――naomiさんが書いた曲に関しては?

naomi これまで発表してきた楽曲と基本的にはスタンスは変わらなくて、良い曲の基準は凄く難しいんですけど、美しくて胸がグッと締め付けられるような曲とか。10年後も聴き返したらやっぱりいいなと思える曲、一過性のもの、流行りとかじゃなくて普遍的で永遠を感じさせられるような曲を作りたいというのは常にあります。僕らの気持ちではEPを2枚作るつもりだったものが合体して、今回9曲になったことで、その2つの物語がうねうねと群像劇のような感じです。

――EP2枚組の感覚もあるわけですね。さて、『Fracture』というアルバムタイトルに込められた意図は?

naomi 時代性です。街がどんどん再開発されて、ビルが壊れて再構築されて、そういうのを見ていて、実際僕らも骨にまつわる事故というか、そういう出来事があったので。実は足の骨を転倒して折ってしまって。街が日々変わっていくのを見たり、自分の身体が再生していくのを見たりすると、それに感じるものがあって。僕は折れた骨が治っていって、同時に街がどんどん変化していくのを見ると、そういう意味合いのタイトルにしたかった。

jan 一方で見えない歪みみたいなものという意味合いもあります。心の歪みだったり、悩みだったりも、脚の骨と一緒で再生して、また歪んでという繰り返しみたいなものが表現されていて、1曲目「THE END」というのも、再生への兆しが感じられるますし。

――裏テーマとしては“再生”がある?

naomi そうです。そして無限というか、ずっと繰り返していく、終わりは基本的には何事においてもなくて、骨は折れても治るし、みたいな。そういう感じの気持ちなのかなと…。

jan そもそも虚無感と希望は表裏一体ですから。

――確かにそうですね。1曲目が「THE END」というのも面白いと思いました。

naomi 2人で話し合ったんですけど、1曲目を「THE END」にしようというのは、この曲が出来た段階で僕がそう思ってjanに話していました。でも、出来上がったときに1曲目じゃなくてもいいかなと思ったけど、janはそのときの俺の気持ちをまだ持っていたのか、「1曲目は『THE END』がいい」という話をしてくれたり。

 「THE END」が1曲目にして良かったなと再確認したことがあって、ひとつの物語って終わってもずっと続くじゃないですか? 『ロミオ&ジュリエット』だって、物語が終わってもその翌日はきっとその世界はあるはずで。そういうのが僕はけっこう好きで、何かが終わっても次の日って普通の日常に戻ったりするから。アルバムだし、曲順とか少しは自分達なりに意味を持たないといけないなと思いました。

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