ばあちゃんの笑顔がみたい
この日披露した「はじめまして、ばぁちゃん。」。もともと高尾和行が、自身の祖母の88歳の米寿を祝うために3年前に作った曲だ。少しずつ認知症の症状が出るようになった祖母。名前を忘れられてしまうこともあるが、それでも前向きに捉えたい、祖母の笑顔が見たいとして作った。
高尾和行「ばあちゃんが認知症で、僕のことを分かっていたり、分かっていなかったり、耳が遠いので、会話もままならないし、僕が言った質問に対して、見当違いな答えも返ってくる状態なんです。でも当たり前ですが、僕にとって昔から変わらなず大好きなばあちゃんなので、そのばあちゃんがいつまでも元気でいてほしいという思いと、毎日一緒にいるわけではないので、僕がばあちゃん家に行った時に、ばあちゃんが良かったな、楽しかったなと思ったもらえたらいいな、という思いがあって。笑顔でいる時間が少しでも増えてくれたらいいなという願いも込めて書いた曲です」
(記者)曲調を明るくしたのはあえて?
高尾和行「そうです。米寿のお祝いの日のためだけに作ったので、その時に一人生歌で歌ったんですけど、ばあちゃんが聴きやすくて乗りやすいものを作ろうと思って。バラードにすると少し重たくなるように思えたんです。そうではなくて明るい方向で行きたいなと思ってそういう感じの曲調にしました」
(記者)ストリングスが入っていますね。
高尾和行「アレンジャーさんが入れてくれたんですけど、ストリングスは壮大になるので、素朴な部分も残しつつも壮大な奥行きを作ってくれたという印象を受けました」
佐藤裕亮「インディーズ盤では打ち込みのストリングスを入れていたんです。今回のメジャー盤では生のストリングスを入れて。インディーズ盤ももちろんいいけど、生のストリングスになったことでより温かみというか、最初の<ねぇばぁちゃん>に入るまでのイントロですでに温かみが生まれています」
歌詞の世界観、そして彼らの想い、歌声が多くの共感を呼び、インディーズとして発売したCDは、USENインディーズ・ウィークリーチャート1位を獲得。九州の主要放送局で数多く特集されるなど話題となった。この反響もあって、よしもとミュージックエンタテインメントからメジャーデビュー盤として再リリースされた。
この日、イベントにはメジャー盤のジャケットデザインを手がけた麒麟・川島明が応援に駆け付けていた。川島は自身の祖母との思い出に重なるところがあるとして「歌詞を読んで重なるところがあってウルっときました。たぶん聴いた人みんながそういうふうにリンクするところはあると思います」と述べた。また、その曲を生で聴き「歌を聞いた時に3人の心は綺麗だろうなと思いました」と称えていた。
高尾和行が自身の祖母に送った曲はいつしか、多くの人から共感を得るものへと広がっている。ミサンガ自身はどのように思っているのか。佐藤と高島は最初に聴いた時の印象をこう振り返った。
高島直也「最初はおばあちゃんのためだけに作った曲だったので、地元のフレーズや言葉や場所とかが入っていて、だからおばあちゃんに向けて書いた温かい曲だなというのは第一印象にありました」
佐藤裕亮「僕たちは12年活動してきたなかでたくさんの曲を作ってきました。この曲はそのなかでも一番の曲。自分たちが知らない所の人たちにも聴いてもらえて、僕らのことを知ってもらえるきっかけになっている曲です。ただミサンガの曲として歌うよりも、カズ(高尾和行)がおばあちゃんのために作った曲なので、その純粋な愛情を壊さないように歌っていきたいなと思いました」
佐藤が語った「純粋な愛情を壊さないように歌っていきたい」という想い。それはステージでも実際に表れていた。強く印象に残ったのは3人のコーラスと共に笑顔で歌っている姿だ。
佐藤裕亮「カズがおばあちゃんと過ごした幼い頃の情景が出てくるように僕たちも楽しく歌うようにしています」
曲の終盤には一呼吸を置くような「間」が置いてある。これは意図してなのか。
高尾和行「<じゃあね、またね>というタイミングは僕のなかで凄く切ない部分です。あと何回会えるんだろうと毎回思う部分で、誰しも言わないけどそうした思いは心のどこかにあるんじゃないかな、という部分です。言ってみたら独り言のようなイメージです」