大阪出身のロックバンドSHE'Sが1日、東京・EX THEATER ROPPONGIで全国ツアー『SHE'S Tour 2018 “Wandering”』のファイナル公演を開催。2017年にリリースしたアルバム『Wandering』の発売を記念しおこなった同ツアーでは、2月7日の長野・松本ALECX公演を皮切りに20公演をおこなうというもの。井上竜馬(Vo)はツアーを振り返りながら「対バンしてくれた先輩バンドや、地方に見に来てくれた人たちの“行ってらっしゃい!”という声を、(自分たちは)勝手に背負ってきました」と語り、その感謝を示すような全力のステージで観客を魅了しツアーを締めくくった。【取材=桂 伸也】

自身の意思を十分に反映した音

(撮影=MASANORI FUJIKAWA)

 今年で結成から7年目を迎える彼らは、井上竜馬(Vo)、廣瀬臣吾(Ba)、服部栞汰(Gt)、木村雅人(Dr)の4人からなるロックバンド。2016年にメジャーデビューを果たし、2017年には1stフルアルバム『プルーストと花束』、ミニアルバム『Awakening』、そして最新アルバム『Wandering』をリリース、活発なライブ活動とともに活躍している。

 今年は昨年おこなった初のホールツアー『SHE'S Hall Tour 2017 with Strings 〜after awakening〜』に続き、5月にストリングス&ホーンを従えたベストセレクション・ライブ『Sinfonia “Chronicle” #1』を大阪、東京で実施、さらにこの日のライブ終了後には今夏のニューシングルリリースも発表するなど、止まらぬ勢いを見せている。

 フロアの最前列から後方までびっしりと詰まったこの日の会場。時間を少し過ぎたころに、ピアノのアルペジオが印象的なSEに乗って、いよいよ4人はステージに現れた。観客からの大きな拍手に迎えられ、嬉しそうな表情を見せる4人。ピアノの弾き語りから始まる「All My Life」から、この日のライブは幕を開ける。

 サビの8ビートを3つずつに分割し、頭の部分を強調したその音楽に、グングンと観客の気持ちが持ち上げられていく。さらに服部のギターの隙間から響く井上のピアノの澄んだ音が、ポップな旋律に広大な空間を与え、聴くものの意識をさらにステージへと惹きつけていく。

 曲の狭間に、井上が「さあファイナルの声、聞かせてくれ!」と叫んだ。そんな言葉も無用とばかりに、観客も大きな声で返す。ここぞというサビの盛り上がりに観客はその思いを求めるかのように、ステージに向けて自分の腕を伸ばす。どちらかというと重いサウンドを響かせる、廣瀬のベースと木村のドラムによるリズムが、井上、服部の奏でるハーモニーと相まってさらなる広がりを見せる。その音には、彼らの求める音、“これが欲しかったんだ”という彼ら自身の意思すら表されているようでもあった。

 「改めまして、SHE'Sです。ついにファイナル、ただいま!」少したどたどしくも、親しみを込めるように井上が観客に語りかける。演奏で見せる鬼気迫るその姿とは対照的に、メンバーの話に突っ込みを入れては絡んでみたり、非常に人懐っこい雰囲気も感じさせる。SHE'Sの全サウンドのイメージを司る彼のその本質は、そういった要因の中にも隠されているのかもしれない。

声援を「勝手に背負ってきた」

(撮影=MASANORI FUJIKAWA)

 中盤では井上がキーボードからギターに持ち替え、ロックな「Getting Mad」を披露したかと思うと、バラード的なサウンドから一気にサウンドに空間を持たせる「White」、そしてシャッフルのリズムにポップなメロディを乗せた「Beautiful Day」で、観客の手拍子を誘うなど、多彩なサウンドカラーで観客を魅了する。

 会場の隅々にまで響くそのサウンドイメージ。その音は、まさに広い場所だからこそ生きてくる。ほぼ井上のピアノとボーカルをメインで聴かせる「Remember Me」にまで、そんなポリシーが感じられてくるようだ。

 さらに「Say No」ではサビのコーラスを観客とともに歌い、互いに広がりを持ち、増幅させてより広いサウンドを演出していく。一方ではスローでブルージーな風味も感じさせる「Ghost」では、服部が魅力たっぷりのギターソロを披露、続く「Flare」では、サビでの巧みなコーラス付けにてまた一味違った広がりをもたらし、終盤に向けての会場の雰囲気をさらに盛り上げていった。

 そしてステージは、ディスコビートの「C.K.C.S.」で観客の気持ちを十分高揚させながら、徐々にクライマックスへと向かう。ここから「遠くまで」と続いた、疾走間あふれる8ビートのロックなナンバーが、手拍子を誘ったり、ともに歌わせたりと、フロアの観客をひと時もじっとさせない、ワクワクした気持ちで満たしていく。

 ラストナンバーの前に、井上はここまでまわってきたツアーを振り返りながら語った。「対バンしてくれた先輩バンドや、地方に見に来てくれた人たちの“行ってらっしゃい!”という声を、(自分たちは)勝手に背負ってきました。だから今日は絶対にいい日にせなアカンと思った」とここまでの活動に対する、ファンからのバックアップに対する感謝の思いを明かす。

 そんな思いを表現するかのように、ラストは最新アルバムのラストナンバーでもあり、かつこの時の彼らの思いを表現するものでもある「Home」へ。そして2曲のアンコールとともに、彼らは今後へのさらなる躍進を誓いながら、自身の世界観を十分に発揮したステージに、盛大に幕を下ろした。

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