このウィークリー記者コラム『オトゴト』もついに最終回を迎える事になりました。1000字前後の短い当欄に何を書くか、という事に毎週苦心した半年。終わりを迎えるとなると寂しい物です。解説記事というよりも、楽曲を紹介して個人的な意見を述べる機会が多かった私ですが、最後にご紹介したいのは、米バンドのmaroon5の最新ミュージックビデオの楽曲である「Wait」です。

 私はmaroon5の楽曲「Sunday Morning」や「She Will Be Loved」が日本でもCMソングとして使用されていたのがきっかけで、このバンドを知りました。2005年頃だったと記憶しています。当時はファンキーでクールなロックバンドという様なイメージでしたが、前掲「Wait」の音の質感にはその面影がありません。バンドサウンドですらない。

 昨年は、ロックミュージックの売上がヒップホップのそれに追い抜かれたエポックな年でありました。それと対応するかの様にギターのギブソン社が経営危機に陥っているというニュースも報じられています。さらに全米チャートには個人名義のアーティストがひしめく様になり、バンドの名前を見ることはかなり減りました。しかしmaroon5はバンドという形を残したまま、今もチャートに食い込み続けています。

 ファンの方々にとっては言うまでもないかもしれませんが、現在の彼らは最新型のR&Bやヒップホップの要素を取り込み、ケンドリック・ラマーやシザなどの注目度の高いラッパーやシンガーを客演に迎えるなど、常に音楽的なチャレンジをし続けています。それでいて、ただ流行に流されている訳でもない“らしさ”の様なオーラを残しているところも重要なのではないでしょうか。

 常に動き続ける世の中に対して、時に我々は変化を迫られます。そんな時代の要請に我々が取るべき態度は何か。maroon5のチャレンジ精神や柔軟さ、勇気は音楽以外の分野でも参考になる点がある様な気がします。新年度、新しく踏み出す季節に是非彼らの音楽をおすすめします。【小池直也】

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