ACIDMAN、集大成「Λ」に映った大木の真意 枠を超えて繋がる心
INTERVIEW

ACIDMAN、集大成「Λ」に映った大木の真意 枠を超えて繋がる心


記者:木村武雄

撮影:

掲載:18年03月20日

読了時間:約17分

自然体で生まれた楽曲

――この20年を振り返ったとき、ご自身の変化や楽曲の作り方の変化はありますか? 私の感想ですが、「ALMA」から変化が見られて、「世界が終わる夜」では顕著に表れている気がします。

 曲の作り方はちょっと前ぐらいから、なるべく余計なモノを考えないで、シンプルに作るというのは凄く意識しています。あんまり脳みそを使わないように感覚的に作るというところは非常に大事にしている所であり、今回は凄く流れに乗って上手く作れたと思います。行為に変化させたのではなくて、自分でやりたい事をやってそれが実現できたというか。楽器もアレンジもそうです。

 当時はBPMが早くて、荒々しくて叫ぶエモーショナルが凄く好きでした。今は年齢を重ねたということもあるけど、そのエモーショナルの興味が、バラードの壮大さの方のエモーショナルに移ったというか。そっちを表現する方が自分としては凄く好きですね。あんまりこうロックなんだけど、ライブでは「わー!」って盛り上がっている曲たちを作るよりかは、もっとジーンとみんなが心の奥で感動してくれるような作品に欲望があります。そういうのが作りたくて。

――エモーショナルな部分もそうですが、ACIDMANさんの楽曲には「静と動」、いわゆる命を感じるんです。ただ、若いときはそういうのはわからなかった。「動」あるいは「静」の一辺倒だった気がするんです。

 「静と動」というのは人間誰しも持っている事だと思っていて、それが「表と裏」という言い方でもそうだし、「善と悪」でもそうなのかもしれないですけど、そこに今でもその想いはあって。それを狙わなくなったと言えばいいのかな。シンプルに自分がこう何か荒々しいものがあるときはそういう曲になるし、だけど穏やかなときは穏やかな曲になるし。自分の中が反映されていますね。今穏やかな曲が多いわけではないけど、そういう気持ちの方が強いです。それだけ年を重ねたのかもしれないですね。若いときはそれが入り混じっていて。どんどんこうひっくり返っている人が多いと思う、僕もそうだったし。その精神的なバランスをうまく取る方法はだんだんと分かってきているんじゃないですかね。

――「静と動」は、武田信玄の「風林火山」が息づいているように、武士道に通じるところがあります。「静」のところでいえば「わびさび」も。日本について思うところはありますか?

 日本は生まれ育った場所なので大好きだし、仕事で色んな国・地域に行かせてもらって改めて日本の素晴らしさを感じます。だけど、尖っていないので逆に言ったら流されやすい部分もあると思う。戦争に流れこんでいく人間の集団的な意識というか、そういう所の怖さはあるので。ただ、それぞれがそれぞれのアイデンティティで胸を張って生きる時代はもうすぐ来るとも思っています。そうなっていくと、より日本という繊細な心と奥深さって言えばいいのかな、そういうのが世界に通用する時代になると思う。これから一番大事な時なのかなと思います。

――世界の音楽と日本の音楽という点ではどうでしょうか。

 どうかな、世界の音楽をいっぱい聴いているタイプではないので。僕は日本語で日本人が歌っているのが一番好きだったりする。世界に行きたいという欲もあまりなくて。海外でライブがしたいとか、世界中の人に認められたいという欲もない。ということよりも日本人に認められたいという思いの方が強い。それは言葉を歌っているからだと思います。僕が無理やり英語で歌ってそれがどんなにネイティブに上手くなったとしても、母国語ではないので。それはここで生まれた人たちに勝てるわけがないなとも思っていて。それよりも日本語の美しさや素晴らしさを歌っている方が大事に思っている。日本の音楽の方が優れているわけではないけど、僕は好きですね。

ファンの支えあっての自信

――今回のアルバムでもその美しさを感じました。ロックではありますが、凛としたものを感じるというか。おそらく、大木さんが言葉を大事にされているからだと思いますが、より一層、気を付けた点などはありますか。

 それはあります。言い方を変えるとかなり胸を張って曲が作れました。この20周年を振り返る時間がすごく多くて、改めてこの1年間で与えられたエネルギーは凄かったと思っています。これまでの活動を振り返ると、圧倒的にファンに支えられていて。もちろんスタッフやメンバーもそうだけど、色んな人に支えられてここまで来られたというのが、めちゃくちゃに嬉しくて感謝していて。その人たちが背中を支えてくれるというのがあるので、僕はもっともっと自分の表現に自信を持って、もっとシンプルな言葉で、胸を張って歌っていきたいというのがあります。

――収録曲どれも自信作だと思いますが、あえて選ぶとしたら?

 インストゥルメンタル、言葉がない「Λ-CDM(instrumental)」かな。あの長い楽曲は、普通だったらこのアルバムに入れるときもう少しコンパクトにしたり、聴きやすくしたりするけど、そういうのを一切取っ払って、本当に思うままにやったので。それは凄く自分の中でも勇気のいる事だったし、でもこういう事をやっても良いし、やれるんだという自信を頂いているので出来た曲だと思います。

――インスト楽曲は次の曲を盛り立てる役割もありますが、内観を見つめる働きもあると思うんです。

 僕もそう感じますね。今はあんまり音楽を聴かないですけど、聴いているときは、インストゥルメンタルはかなり、脳みそを停止させてくれるようなものというか。感覚的にしてくれるものだなって思っていて。この「Λ-CDM(instrumental)」は「ACIDMAN」という風にも読めるけど、実際は「ラムダコールドダークマター」という言葉の略語で。偶然、それが「ACIDMAN」に似ているというのが凄く嬉しかったですね。「ダークマター」、この宇宙の心理みたいなものを考えながら曲を作っていけたので。この言葉の意味が分からなくても、不思議な気持ちになってくれたら嬉しいですね。

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