筆者が好きなアーティストの一人にジミ・ヘンドリクス(通称=ジミヘン)がいます。14日に1968年1月~1970年2月の間にスタジオ録音された収録曲13曲のうち、未発表曲10曲を含むアルバム『Both Sides Of The Sky』がリリースされるので、非常に楽しみです。

 ジミヘンは27歳という若さで他界した天才ギタリストで、様々なミュージシャン達の憧れ、目標になっています。あのギターの神様エリック・クラプトンもジミのギターを聴いてミュージシャンをやめようと思ったという話は有名です。

 フェンダーのストラトキャスターや、ギブソンのフライングVなどを使用し、トレモロアームを使用したアバンギャルドな奏法など、エレキギターの可能性を大きく広げたイノベイターで、ギターで考えられる全てをジミがやってしまったと言われるほどです。

 しかし、そんなに偉大なジミなのですが、20代の頃の自分には全く刺さりませんでした。今考えるとなぜなのかはわかりません。ギターレッスンを受けていた先生からも「ロックをやるならジミヘンを聴け!」と何度も言われたことがありました。

 それを受けて当時の知り合いにジミのどこが凄いのかを聞いたこともありました。その知り合いは「ジミよりかっこいいギターを弾ける自身がない、他の追従を許さないオリジナリティがある」と話していたのを思い出します。確かにその通りだなとは思ったのですが、当時プログレメタルが好みだった自分にはとにかく刺さらなかったのです。そのまま時が過ぎ、30歳に差し掛かった時に、その日は突然来ました。

 今でも忘れないのですが、たまたま家に遊びに来た友人が「ジミヘンが最近好きなんだよね」と話していたのを聞いて、久々にCDを掛けてみたのです。雷が落ちたようなといったら大袈裟かも知れませんが、衝撃が走りました。

 10年前までは何とも思っていなかったその音に一気に虜になりました。その時に聴いた曲は1stアルバム『Are You Experienced』に収録されている「Stone Free」でした。歌とギターのバランス感覚が絶妙に感じたのと、トリオ編成で紡ぎ出すファンキーなグルーヴ、そして、言葉の壁を超えた、伝えようとする姿勢から放たれるエネルギーにやられました。

 そこからライブ盤などもチェックするようになり、同じ曲でも年代と場所によって「こうも演奏が違うのか」と新たな発見があります。きっとニューアルバムでもそれが沢山詰まっていると思います。

 音楽の趣向が30歳になって変わったのは、幼い頃に食べられなかったピーマンなどが大人になって好きになった感覚に近いのかも知れません。歳を重ねて行けば“音楽の味覚”も変わることを体験し、筆者が今年40歳を迎えるにあたり次はどんな音楽にハマるのか、自分自身がものすごく楽しみです。

 頭ごなしにこの音楽は良くないと決めつけるのはナンセンス。微妙だなと思いつつ持っている音源も捨てたり消したりせずに取っておくと良いかも知れません。10年後にはその音に魅力させている自分がいるかもしれないのですから。【村上順一】

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