ギタリストのマーティ・フリードマンが7日に、プロデュース、ギターで全曲参加したイメージアルバム『B: The Beginning THE IMAGE ALBUM』をリリース。動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)で全世界同時配信されるプロダクションI . G制作のオリジナルアニメ『B: The Beginning』のイメージした作品で、昨年8月にリリースされた『Wall of Sound』からわずか7カ月というスパンでのリリース。当初「オファーが来たときは作る気がゼロで、断る気はマンマンでした」と正直な気持ちも吐露。MAN WITH A MISSIONのジャン・ケン・ジョニーやKoie(Crossfaith)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)ら、マーティがファンだというメンバーが参加。その制作背景やゲストミュージシャンの印象、音楽、ギターソロに対する思いなど多岐にわたり話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】
断る気はマンマンでした
――日本に移住されて14年とのことですが、日本での生活はいかがですか? 過去にはゴミの分別で怒られたみたいですが(笑)。
最高じゃん! 毎日、次から次へと新しい発見があるし、今ではゴミの分別なんかも全然問題ないよ。
――それは良かったです。新作『B: The Beginning THE IMAGE ALBUM』は、昨年8月発表の『Wall of Sound』から早い段階でのリリースとなりましたね。
本当に早いですね。アルバム『Wall of Sound』が発売したばかりで、オファーが来たときは作る気がゼロで断る気はマンマンでしたけど(笑)。2014年にリリースしたアルバム『インフェルノ』のツアーで70カ所くらいライブでまわって、そのあとに『Wall of Sound』をゆっくり集中して作っていたら、それが終わった瞬間に「新しいアルバムを作ってよ」と言われたので、ちょっとショックでした。でも、アニメ『B: TheBeginning』を観てインスパイアされて。
まずは主題歌の話だったから、大量な作業ではなかったけど、その主題歌が上手くいったので「全体的にゲストボーカリストを入れて作りましょう」と言われて、頑張ろうと思ったんです。やっぱりわざわざ僕を選んでくれたということに対して感謝の気持ちがあるから、とにかくガッカリさせたくなかったんです。みんなが参加してくれるということで、凄くエネルギーをもらいました。今ではやって良かったという気持ちに溢れています。非常に良い感じです。
――「自分のために」よりも「誰かのために」という方が良いものが生まれやすいのでしょうか。
前はエネルギーがあったから自分のために頑張ろうと思ったんだけど、今回はいっぱい良い人がいるから、みんなを喜ばせたいと思ったんです。初対面の方が多かったし、初対面っていいところ見せたいじゃん? それは良い影響となりました。
――多彩なゲストボーカルの方々はどのようにして決まっていたのでしょうか?
最初はMAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyで、主題歌「The Perfect World」を一緒に作りました。そのプロセスがなかなか良かったですね。僕はアニメのビデオを観て、自分の音楽を表現して、Jean-Ken Johnnyが自分の角度で歌詞を書いて歌ったんです。その2つの角度から同じアニメを観て、両方のイメージを1曲にしたという素晴らしいコラボレーションです。
それぞれの見方も音楽の作り方も違うから、全部同じ曲にするということは美味しいコンビネーションでした。だからもし同じようなコラボレーションで他のアーティストと一緒にできたら素晴らしいと思っていたので、そこからです。1人だけではなく、2人分味わえるんです。
――Jean-Ken Johnnyさんとは、もともと繋がりがあった?
いいえ、なかったです。僕はただのMAN WITH A MISSIONのファンです。初対面で会う前に、メールでたくさんやりとりをしました。曲の構成やいろんなアイディアを交換したので、実際に会ったのは最初のレコーディングの日だと思います。データのやりとりで彼の歌詞を見て。歌詞を英語で書いてくれたんです。彼は英語がペラペラなんですけど、一応僕が目を通して確認をして。
――実際に一緒にレコーディングをしてみていかがでしたか?
一緒に同じ部屋にいると更にアイディアが溢れるんです。スピーディーでしたね。彼が入るときには音源が全部出来ていて、その状態で彼が歌うんですけど、「この部分を倍の長さにしましょう」とか、またちょっと編曲をしたくなって。普通はそんな最後の段階で編集はしないんですけど、彼の声と彼の能力というか、何でもできるからアイディアが溢れ過ぎて…。ファンとして最高の時間だから、僕が聴きたいものが聴けるんです。
――そうすると、今作はマーティさん自身が聴きたい作品にも仕上がったわけですね。
その通りです。アニメは共通だけど、みんな違う角度で作品を受けとっているので、1人の意見ではなくプラスアルファがあるんです。アニメがメインで、2人からの角度が非常に美味しいんです。
――「The Perfect World」にベースで参加したKenKen(RIZE, Dragon Ash)さんとは面識があったのでしょうか?
知り合いとしては長いけど、レコーディングは去年か一昨年に初めて一緒にやりました。曲が出来てからのキャスティングだったら、KenKenしかいないという感じでした。このアニメの怖いイメージが出ると思ったんです。
――マーティさんはアニメのどの部分に最もインスパイアを受けましたか?
最初の印象は、かなり攻撃的でグロいなと思ったんですけど、3、4話見たら心理的なストーリーになってきたので、「考えなければいけない」「このアニメは簡単ではない」と思いました。理解するために頑張りたくなるというか、ワクワクするんです。つまらないアニメなどを観ていると、何が出てくるか何となくわかるんです。でも『B: TheBeginning』はそれが全くなかったので、すべての情報を一応頭のなかにキープしちゃおうと思いました。
――インターネットによって情報が簡単にたくさん手に入る時代ということもあって、現代では、その「考える」という行為が薄れているという感じがしてます。
考えることが素晴らしいじゃん! 楽しいじゃん。やっぱり頭を使いたいし、想像以外のものが出てくるから、『B: TheBeginning』でも「よく頭の中にそういう発想があるな」と思いました。
――作者に感心を持たれたのですね。
僕はそんなにアニメ通ではないんですけど、僕が観てきたアニメの中でも『B: TheBeginning』はレベルが高いです。映画を観ているような感覚です。典型的なアニメのような感じが全然なくて。
――そういった感情を作品に落とし込んだのですね。
そうそう。アニメのイメージからメロディを表現するというチャレンジですね。普通だったら色んな面から影響を受けるんですけど、今回はアニメの世界に集中してメロディやリズムを作り、アレンジをした上で他の人のボーカルを入れたかった。
アニメには劇伴もなかったし、音的なテーマがゼロだったんです。だからテーマソングを作った僕の曲には責任があるんです。みんながこのアニメを見てイメージする音楽は僕の曲ということになるので。
――責任重大ですね。
そこまで深く考えると重くなりますね。責任が凄いと思っていて…。でも、そうやって深く考えることでふさわしいものが出来たと思っています。監督さんも凄く褒めてくださって、「ピッタリだよ!」という言葉がぜんぜん社交辞令っぽくなかったんです。それでちょっと自信がつきました。