英・マンチェスター出身ピアノ・トリオグループのGOGO PENGUIN(ゴーゴー・ペンギン)が19・20・21日、ブルーノート東京で来日ツアー東京公演をおこなった。同ツアーは9日にリリースした、約2年ぶりとなるニューアルバム『A HUMDRUM STAR』を引っ提げおこなわれたもの。そのステージでは、ジャズに留まらない彼ら独特の世界観を思う存分に披露し観客を魅了した。20日に1stステージと2ndステージの2回に渡っておこなわれた公演のうち、1stステージの模様をレポートする。【取材=松尾模糊】

独特のアンサンブル

 GOGO PENGUINは、クリス・アイリングワース(Piano)、ニック・ブラッカ(Ba)、ロブ・ターナー(Dr)の3人組。ジャズをベースにクラシックやブライアン・イーノ、ジョン・ケージといった現代音楽から、エイフェックス・ツイン、ジョン・ホプキンス、アンダー・ワールド他、ポストロック、テクノ、ダブステップ等からの影響を受けつつ、独自のサウンドを構築。2014年のアルバム『V2.0』が、英国における最高峰の音楽賞『マーキュリー・プライズ』にノミネートされ、一気に注目を集め、最新作『A HUMDRUM STAR』も海外メディアなどから高い評価を受けている。

クリス・アイリングワース(撮影 =古賀 恒雄)

 この日は来日公演2日目。会場一杯に詰めかけた観客がテーブル席などで談笑しながら、メンバーのステージを心待ちにしている様子が見られた。会場が暗転し、3人がステージに拍手と歓声に迎えられて登場。軽くお辞儀し、「GBFISYSIH」からスタート。続けて、ロブのドラミングから始まる「Murmuration」を披露。ロブが徐々に手数を増やしていき、クリスの演奏も激しさを増す。ニックは、弓を用いて弦を弾きエフェクターで音の洪水を巻き起こし、混沌とした渦巻く激しい世界観を作り上げフィニッシュ。独特の雰囲気が会場を包み込み観客も息をのんでいる姿が印象的だった。

 「こんにちは」とニックが日本語で挨拶。「今夜は来てくれてありがとう」と述べてから「Bardo」を披露。クリスが鍵盤を叩きつけるように弾いて、ダンサブルなサウンドを作り上げていく。そこへロブの力強いドラミングとニックの太いベース音が加わり、GOGO PENGUIN独特のアンサンブルが会場中に響き渡る。観客からの歓声と拍手の鳴り止まぬ中、「Return To Text」を演奏。先程とは打って変わって流れるように奏でられるクリスのピアノが印象的だ。ニックも弦に当てた指を上下にスライドさせながらベースソロを決めた。

未来への希望称えるサウンド

 会場が暗転し、ロブが手にした神楽鈴(小さな鈴を山型に並べた鈴)の様な楽器をシャンシャンと鳴らし「A Hundred Moons」が始まる。クリスのミニマルなピアノサウンド、そしてニックの奏でる穏やかなベースラインが重なり、荘厳な雰囲気が会場に溢れた。曲を終え、ニックがメンバー紹介。観客からも惜しみない歓声と拍手が送られた。

ニック・ブラッカ(撮影 =古賀 恒雄)

 そして、ニックの奏でる印象的なベースサウンドから始まる「Reactor」を披露。ロブのタイトなドラミングとドラマチックなクリスのピアノサウンドが重なり曲がドライブしていく、言い様のない高揚感を与えるキラーチューンだ。続けざまに「Strid」、「Transient State」へと突入。会場のボルテージを上げていった。

 ニックが「ありがとう」と日本語で歓声に応え、「次がラストナンバーです」と前作『MAN MADE OBJECT』収録曲の「Protest」を披露。徐々に激しさを増していく彼らの演奏とともに会場の熱気も増していき、最高潮のテンションで本編を終了。観客とハイタッチをしながら3人はステージを去った。

ロブ・ターナー(撮影 =古賀 恒雄)

 鳴りやまない拍手はそのままアンコールへと変わり、その声に応え3人が再び登場。クリスの繊細に奏でられるピアノサウンドから始まる「Window」では、ニックのベースとロブのドラムも寄り添う様にプレイ。続けて「Hopopono」を披露。ゆったりとした入りからクリスのピアノが先導し転調。未来への希望を称えるような明るいサウンドが会場に響き渡り、幸福感に満ち溢れたままこの日のステージを終えた。

 ジャンルレスと言う言葉がそのまま当てはまるような、“GOGO PENGUINサウンド”に終始酔いしれることができた極上のひと時だった。それは彼らに惜しみなく送られていた歓声と拍手からも観客が感じていた想いと変わらないものだろう。英国マンチェスターの地で育まれた独自のサウンドが今後さらにどのように進化していくのか楽しみは尽きない。

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