アイドルグループのsora tob sakana主催ライブイベント『天体の音楽会』が12日に、東京・中野サンプラザで開催された。この日はアイドルグループ、バンドなど計9組のアーティストが出演し、ジャンルの垣根を超えたイベントとなった。最終アクトではアイドルとバンドが「sora tob sakana band set」として融合し、圧倒的なエネルギーを放つステージを魅せた。新たなスタイルの“起承転結”が繰り広げられたイベントの模様を以下にレポートする。【取材=平吉賢治】

アイドル×バンドのジャンルレスイベント

 イベント出演者中、最年少グループ・パンダみっくのキラキラと輝くパフォーマンスを皮切りに、いよいよ本編がスタート。

パンダみっく

 白の清楚な衣装で身を包んだsora tob sakanaは、4人の純真無垢のダンスと歌で「Moon Swimming Weekender」「魔法の言葉」「夏の扉」と立て続けに披露。この日の1番手を華やかに飾った。続くamiinAは、スローな楽曲からアップテンポなナンバーまで揃え、駆け巡るような壮大なステージを魅せる。

 26時のマスカレイドは2ビートの歌謡曲調ダンス・ポップサウンドの「仮面に隠れたセレナーデ」で舞い、「トワイライト」「マスカレイドは眠らない」と続く。ステージ所狭しと愛嬌たっぷりにパフォーマンスを披露。ライブ後は、その場での10秒撮影会というおまけの特典に、スマホをかざすファンが賑わっていた。

 アイドルグループ3組のショーが走り、会場が温まってきた頃合いでバンドステージへ転換。まずはsiraphが演奏し、「dilatant」「damp damp」など、ループフレーズの妙を光らせるチューンからは、妖麗な世界観を漂わせる。終始、個々のプレイの技巧が際立つナンバーを披露した。長丁場である本イベントにつき、40分程度のブレイクを経て、King Gnuのバンドステージが始まった。

 「名前だけでも覚えて帰ってください!」と控えめなことを言うKing Gnuだが、そのサウンドは豪快。彼らの音楽の核となるのはビート・グルーヴだ。ヘヴィなドラミングと、かなり欧米寄りのプレイスタイルのギター&ベースが日本人離れしたグルーヴを発生させていた。アイドルステージ・セクションでの観客のノリとは明らかに違い、一発目「FLASH!!!」から最終曲「Vinyl」まで、グルーヴに乗って首や肩を縦に揺らすオーディションの姿がKing Gnuのノリの気持ち良さを物語っていた。

変拍子で踊るアイドルと奏でるバンド

 そして、再びアイドルステージへと変換し、Maison book girlの4人が姿を表す。変拍子、ポリリズムの連続というトリッキーな楽曲ながら、コミカルなサウンドも混じる「karma」はセットリストの絶妙なスパイス。変則ビートが軸にある楽曲ながら、スムーズに理路整然と踊るMaison book girlには静かな迫力があった。

tricot

 こちらも変拍子を多用するグループ・tricotの演奏は、この日一番の爆裂サウンド。9組出演のイベントにつき、tricotが初見というお客さんは中々の数だったであろうが、彼女らの圧倒的な演奏力とサウンド、変拍子に変則チューニングで描かれる鋭利な音楽性に観客は次々に前のめりに。破壊力充分な世界観を持つtricotのパフォーマンス・音楽性に惹き込まれていた。「Melon Soda」でのギターフィードバック・サウンドに歓声が湧いたのは印象的だった。

 イベントも後半、ゆるめるモ!は、「歩くの遅い犬」のサイケデリックなエレクトロサウンド・エスニックなビートに旋律を交え、幅広い世界観を持つドラマチックな楽曲を野性的に唄い舞った。ワールドワイド色の濃いテンションで、原色のカラフルなライティングに包まれ、ガールズ・パワーを存分に放出するステージを展開した。

圧倒的ヘッドライナー

 いよいよラストステージ。ヘッドライナーを務めるのは、主催でもあるsora tob sakanaが「sora tob sakana band set」としてバンドセットで登場。バンドメンバーは、Gt:照井順政(ハイスイノナサ、siraph)、Gt:馬場庫太郎(NENGU)、Ba:照井淳政(ハイスイノナサ)、Key:森谷一貴(ハイスイノナサ)、Key:鎌野愛(anoh、ex.ハイスイノナサ)、Dr:リンタロウ、Per:佐藤香(ハイスイノナサ、キツネの嫁入り、anoh、ex-Aureole)という顔ぶれだ。

sora tob sakanaのステージ

 高速ビートを生演奏で披露した「夜空を全部」は圧巻の疾走感。その後も「Lightpool」「秘密」などを、ダブルギター・ダブルキーボード・ダブルリズムセクション・センターベースポジションという豪華なステージスタイルで惜しみなくプレイ。「夜間飛行」の鮮やかなアンサンブルをバックに歌う4人のメンバーは、会場一体となって身体を揺らし、最終アクトの真骨頂を魅せた。

 最終曲「ribbon」を終え、「楽しかったよ〜!」と叫ぶメンバーは、イベントの終幕を笑顔で惜しんだ。アイドル×バンドが顔を並べる本イベントだが、最後にはステージ上で融合。バンド演奏をバックにアイドル・ sora tob sakanaがパフォーマンスをするというイベントの集大成を魅せる。総勢11名のsora tob sakana band setは大迫力の演奏とパフォーマンスで、この日のベスト・アクトを披露した。

 オケをバックにパフォーマンスするスタイルの sora tob sakanaのステージの“起”、アイドルグループからバンド演奏へと転換した中盤の“承”、変拍子やグルーヴ感、爆音サウンドと続く中後半の“転”。そして、トリのsora tob sakana band setの生演奏ライブでフィニッシュとした“結”。アイドルグループ、バンドと計9組のアーティストが出演する、ジャンルの垣根を超えたイベント『天体の音楽会』は、新たなスタイルの“起承転結”がアイドルとバンドによって紡がれ、圧倒的なエネルギーを放っていた。6時間の濃密な時間を生み出した本イベントは、観客の惜しむ声がサンプラザホールに響く中、大盛況をもって幕を閉じた。

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