みんなに聴いてもらいたい曲「手紙」
――「手紙」がグッときました。バラード風の聴かせる楽曲で、新境地ですね。
ありがとうございます。おふくろが亡くなって、昨年の9月5日にちょうど10年経ったんですけど、その10年前に泣きながら歌詞を書き綴って、すぐにレコーディングしていたものです。感情がそのまま込められているので、録り直しも一切していなくて。
――それを今出そうと思ったのは、そのことをやっと受け止めることができるようになったと。
そうですね。当時はショックすぎてライブもできないくらいだったし、今もMVを観ると泣けてくるくらいですけど、10年経って気持ちも落ち着いて、やっとみんなにも聴いてもらおうという気持ちになりました。この曲をみんなに聴いてほしくて、そのためにこのアルバムを作ったと言っても大げさではないくらいです。僕のパーソナルな感情ではあるけど、みんなの歌にもなれるものにしたくて、それでMVは映画仕立ての作品になっています。
男にとって母親の存在は、父親とは違う特別なものだし、感謝の気持ちや後悔の気持ちとか、いろいろな感情があって。母親は絵描きだったから、僕がやっていることにも理解を示してくれていて。おふくろの後押しもあって、今までこういう活動をやってこられたのもあるし。歌詞の通り、まさしくかけがえのない存在でした。いずれは僕もそっちにいくわけですけど、その時にはたくさん土産話を持っていけるように頑張りたいですね。
――その「手紙」の後に、湘南乃風のHAN-KUNさんとの曲「HOPE feat.HAN-KUN」が収録されています。未来へ向けたメッセージが詰まった壮大な楽曲で、「手紙」からの流れで聴いて感動が倍増しました。
人によっては「クサいことを言ってる」と思われるかもしれないけど、結局、子どもでも大人でも“希望”がなければやっていけない。そういう前向きな気持ちでアルバムを終えたかったし。10代でも感性が成熟している子ならすぐ理解してくれると思うし、今は分からなくても、5年後に聴いたら理解できるかもしれない。あなたにしかない、きみにしかない、トゥルーストーリーを描いていってほしいなと思いますね。
――このアルバムは音楽的にはジャンルレスであり、エイジレスでもあると最初に言っていましたが、若手のラッパーもどんどん出てきている中で、世代というものに対してはどんな風に考えていますか?
『戦極MC BATTLE』というフリースタイルラップの大会があって、それに僕も出るんですけど、たぶん僕が出場者の中でいちばん歳上です。まあ、全員ミンチにしてやりますけど(笑)。
僕らはもう年齢的にはオッサンで、オッサンならではの良さも見せていかなきゃいけないけど、キャリアを盾にして余裕をぶっこいている場合じゃないと思うんですよね。若い人の中にもどんどん突っ込んでいって、ガチで戦って「ぜんぜん強いでしょ! きみが10年やってきたもっとその先をやってるからね」って言いたい。
――“大人げない”と言われようとも?(笑)
そんなの関係ないです(笑)。そういう気持ちでいないと、若手も命がけだから。普通は負けるのが怖いからやらないだろうけど、それを敢えてやってやろうっていう感じですね。そうやって挑戦的なことをどんどんやっていきたくて。実際に、バトルでかっこよくても音がそうでもないMCもけっこういて、それじゃつまらないじゃんというところで、このアルバムで見せつけてやるというのもあるし。