ロックバンドのWOMCADOLEが19日、東京・高田馬場CLUB PHASEで自主企画ライブイベント『瀧昇 三本目 二〇一八 同一平面爆発編』をおこなった。WOMCADOLEは樋口侑希(Vo、Gt)、古澤徳之(Gt)、黒野滉大(Ba)、安田吉希(Dr)の滋賀在住の4人組。関西を中心に活動しながら、昨年は『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』に出演するなど頭角を現している。このライブは彼らの自主企画の東京公演で、ステージ上ではなく、フロアに機材を置き、それらをオーディエンスが360度で囲む接近戦が見どころとなっていた。メンバーが向き合いながらの一体感ある演奏と「どんな瞬間でもトップスピードだと思ってやってます。あんた自身も毎日を駆け抜けて」という言葉に代表されるメッセージ性のあるMCで、会場を熱狂させたこの夜をレポートする。【取材=小池直也】

目を覚ましても、夢からは覚めるんじゃねえ

ライブの模様(撮影=ハライタチ)

 フロアの真ん中にセットされたWOMCADOLEの楽器たち。これらを囲む形で観客が開演を待つ。そしてSEで流れたのは「ロッキーのテーマ」だった。樋口、古澤、黒野、安田の4人が会場入り口からプロレス入場すると、フロアから歓声が上がった。樋口が「戦闘の準備はできてんのか、おい!」と煽って、この日のライブが「ドア」の印象的なイントロで開幕した。

 最初からエンジン全開の演奏に、オーディエンスも拳を突き上げる。続く「ハシル」でもタイトルの通り、走り抜ける様だ。だが、ところどころ挟まれるブレイクも良い緊張感を生む。最後の1フレーズは樋口が「俺たちCLUB PHASEに会いに来たよ」とアドリブで叫んだ。ライブならではの醍醐味である。

 スタートダッシュから3曲目は「黒い街」。顔を見合わせながらの演奏で増す一体感、目と鼻の先にいる観客、全てが良い方向に作用している様だ。曲のエンディングはギターの余韻が残る。

 そして、樋口が「改めましてWOMCADOLEと申します、よろしくお願いします」と挨拶。「耳、大丈夫?」と近距離で聴くファンを気遣う場面も。「『瀧昇』という企画をやってまして、ポケモンの技でありますよね『たきのぼり』。今回は『同一平面爆発編』ということで、みんなで爆発しようと思ってるんですけども。ポケモンで「だいばくはつ」という技があります。自分の命を犠牲にして相手をボコボコにする技があるんだよ! 最後までよろしく!」と気迫と緊張感にユーモア交じりに締めて、演奏再開。

 その後も熱量を落とさずに演奏が続く。黒野が陣地を飛び出し観客に囲まれてプレイするなど、オーディエンスを煽りながら会場を楽しませるWOMCADOLE。そして扁桃腺炎で数公演戦線離脱していた古澤も、病み上がりとは思えない力強い演奏を聴かせた。4人を見つめる観客もきらきらした目で、パフォーマンスに釘づけだった。

 「雨上がり」をポジティブかつ自虐的にに<笑っていこうぜ>と歌い切ってから、樋口がMC。「どうしようもねえ夜も、ぶっ壊したくなる夜もありますが、どんな夜でも、俺たちなら越えられると思います。まだまだやれるでしょ」、「迎えにいこう。目を覚ましたとしても夢からは覚めるんじゃねえ。やろうぜ」とポジティブな感情を塗り重ねて、演奏されたのは「夜明け前に」だった。

どんな瞬間もトップスピードだと思ってる

樋口侑希(撮影=ハライタチ)

 ギターのきれいなアルペジオから始まり、力強いサビまで階段を上がる様に繋がっていく。最後には切ないファルセットが響いた。その後は樋口が機材にのぼって立ち上がりギターをかき鳴らし「もっと気持ちよくさせてよ」と叫ぶ、ドキっとさせるシーンも。さらに樋口が「俺はバイバイなんてつもりはありません。あの坂から見た君は…」と話してから演奏された「オレンジと君とサヨナラと」は、メンバーの感情が爆発。その場の空気は完全にWOMCADOLEのものであった。

 さらに樋口が「俺も器用な人間ではありません。それでもね、どんな瞬間でもトップスピードだと思ってやってます。他の奴には歩いて見えてるかもしれませんが、それで大丈夫ですよ。周りにあわせる必要はないと思うんです。だから今日からまたあんたらは、あんた自身のトップスピードで毎日を駆け抜けてください」と熱く語る。

 そして、ライブは終盤戦へ。最新シングル曲でもある「アオキハルへ」。パワフルなサビから始まり、ギターがメロディを紡ぐ。そして隙を見つけてベース音が踊る。緩急をつけた中盤部で観客たちが引き付けられていた。本編最後は「唄う」だった。樋口が観客にマイクを託したり、観客と飛び跳ねて歌ったりと、最終的に熱気がどんどん高まっていく。演奏が終わると、樋口が「ありがとう、俺たちがいる限り日本は安心です。スーパーロックバンドは腐りませんから! サンキュー!」と感謝を述べ、メンバーはフロアを去った。

 その後オーディエンスのアンコールでメンバーがもう一度登場。「世界最強のライブソング」と煽りつつ、そして、もう1曲だけ「綺麗な空はある日突然に」を披露した。盛り上がりはこの夜の最高到達点に。間奏後のブレイクで歌うサビでは、360度全方向からオーディエンスの大合唱が生まれ、本当に会場が一つになった。同じ平面上で全員が歌いながら、演奏が再開された時には高揚感と「もう終わってしまう」という寂しさが同時に漂っていたが、観客は惜しみない温かな拍手を彼らに送っていた。

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