【第68回NHK紅白歌合戦、31日、NHKホール】紅白初出場となった竹原ピストルは「よー、そこの若いの」を熱唱した。無骨と飾らない丁寧さが同居する、侍のような物腰で、竹原はごく自然体で紅白のステージに立った。汗にまみれて歌う竹原の熱唱は、全国の視聴者の魂を刺すようだった。

 元ボクサーという過去がある竹原ピストルの歌唱スタイルは、正に戦っているようだ。紅白という大舞台で、自分との戦いを皆に見せつけ、聴く者の熱意を呼び起こすような、人間の生き様を燃やしているような光景だった。

 どんなに打たれても倒れない、“男の歌”。紅白歌合戦という舞台は、年間200〜300ものライブをこなす竹原ピストルにとっての「一つのゴール」だったのか、「通過点」だったのか。彼の放つシャウトからは、どちらも感じられる。そして、胸に訴えかけるメッセージを全国に向かって刺したようだった。

 歌で生き様を晒す、裸のメッセージを魂に直接刺す、竹原の歌唱は、そういった形容ができる。生粋の想いをアコースティックのストロークに乗せて歌うというスタイルは、ボクサーとしての竹原、俳優としての竹原、それらの要素がプラスされ、竹原ピストルというシンガーが形成されている。

 ライブの場でも、俳優としての現場でも、ボクサーとしてのリングでも、彼は真っすぐ真剣に戦い続けたのだろう。そうでなければ、紅白初出場という舞台での、あの地に足がついた佇まいは説明がつかない。

 その竹原はリハーサル時、歌唱前には必ず「リハーサル、宜しくお願いします」と丁寧にあいさつしていた。人柄が表れていた。【平吉賢治】

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