辻村有記、衝動と感性の相乗効果 音と映像の融合で魅せたステージ
(撮影=上溝恭香)
元Hakuのフロントマン・辻村有記が12日、東京・SHIBUYA Gladでワンマンライブ『Into U』の東京公演をおこなった。5日の大阪・北堀江club vijonと東京の2公演をおこなうというもの。2018年1月31日にリリースされる1stEP『POP』の発売に先駆け、一足早く楽曲の世界観を提示した。ワンダースクリーンと呼ばれる紗幕を使用し、近未来型エンタテインメント集団“白A”と辻村の音楽のハイレベルな融合を見せた。アンコール含め全16曲を披露し、辻村の持つ音楽の力を存分に放出し魅了した。【取材=村上順一】
自由に歌って踊ってナチュラルに受け取ってもらえたら
ステージ前にはワンダースクリーンと呼ばれる紗幕。そこに今回のライブのタイトル「Into U」の文字が投影されている。その先にはドラムセットと、サンプラーなどの機材が整然と並べられていた。開演時刻になると会場は暗転。ステージには辻村有記とドラマーの井上司(fox capture plan)がステージに登場。2人は拳を突き合わせ「Into U」でライブの幕は開けた。井上によるタイトなドラムのリズムに、辻村もサンプラーを叩き様々なサウンドで彩っていく。それに触発されるかのように、オーディエンスも一体感のあるクラップ。そして、辻村はマイクを手に取り歌を届ける。白Aによる透過スクリーンに映し出された映像と、リンクした辻村のパフォーマンスは嫌が応にも、体は躍動感で満たされる。
新曲の「Hate Love Song」を披露。ロックバンド時代に培ってきたエナジーはもとより、エレクトロなサウンドを巧みに使った、ライブでのテンションの持っていき方は秀逸。今までの様々な経験から、音楽の持つエネルギーの放出の仕方を熟知しているからであろう。「おとぎ話」ではスティックを持ち、辻村もパッドを使用しリズムの一端を担う。楽曲の持つポテンシャルを引き出すかのように、その歌声で唯一無二の世界観を紡いでいく。
「皆様と出会えたことに感謝です。自由に歌って踊ってナチュラルに受け取ってもらえたら」と告げ、1stEP『POP』のオープニングを飾る「Let Me Go」へ。どこかオリエンタルなシンセのシーケンスが、リズムと相まってグルーヴィな空間を生んでいく。オーディエンスに語りかけるように目を見つめながらの歌唱。そのエモーショナルなパフォーマンスに聴くものの気持ちは昂っていく。
「How are you」。言葉が先に生まれ温めていたというナンバーは、音の隙間を縫うように、言葉がフロアに降り注ぐよう。大きなビートの中、波を打つように体を揺らすオーディエンス。再びワンダースクリーンを使用し、「Sounds Like Feel It -introduction」「Sounds Like You Feel It」をリアレンジバージョンで届ける。無機質なシンセのサウンドにアナログなリズムと歌を注入し、絶妙なバランス感覚の有機的なサウンドへと昇華していく。そこに様々な動きの絵を投影し、伸びやかな辻村のハイトーンボイスと、体を震わすサブベースが心地よい空間を作り出していく。
そして、冬のアンセムソングを作りたいという思いから制作された「Winter Is Coming」を披露。辻村はウクレレを手に取り、温かいサウンドとのコントラストで紡ぎ、オーディエンスの<ラララ〜♪>のシンガロングで一体感を見せたナンバー。続いては、1stEP『POP』に収録される「I Won't Forget」で、余すことなく自身の感性をぶつけ、歌とサウンドが高レベルで融合した世界観で魅了していく。
みんなの明日の光になったら
「I Told You -You Are Gone x Snow」ではオーディエンスも腕を掲げ、エレクトリックなサウンドで扇情させていく。体を弾ませながらノリノリでサンプラーを叩く辻村。音楽を心の底から楽しんでいる、そんなエネルギーがフロアにも伝染していくなか「Wonderland」へと繋がる。弾力のあるビートで、体が勝手に飛び跳ねてしまうかのような中毒性を打ち出しステージとフロア、お互いのエネルギーを交換するように辻村の歌は、さらにエモーショナルになっていく。
MCでは「すべて行動を起こしてついてきたものがあると思います。その先にみんなと出会うことができました。これは本当に誇れることです。こういった行動を起こせたことはみなさんのおかげだと思います。この曲が来年も再来年も僕たちを繋いでくれる楽曲になれば...」と『POP』の最後のピースとなった楽曲「Actions Over Words」を届けた。起伏をつけたアレンジでオーディエンスのテンションをクレッシェンドさせていく。躍動感あふれたその熱をクールダウンさせるかのように「Brave」では、ファルセットによる歌声を響かせチルアウトしていく。
ライブはエンディングへと向かう...。会場に雨のSEが流れるなか、ステージ中央でうなだれる辻村。届けられたのは7月に先行配信された「Ame Dance」。情景は浮かび上がるようなリアルさが、音と歌から滲み出る。ステージ後方の壁には光の雨が降り続ける。「一緒に夜を越えよう」と投げかけ、凄まじく高密度な音のエネルギーが満ちるなか、本編を終了。
アンコールを求めるクラップがSHIBUYA Gladに響く。エレキギターを手に取り、「一曲だけギターの曲があるんですけど、受け取ってもらえますか? みんなの明日の光になったら」と8月に配信された『モンストアニメ』EDテーマソングの「Light」を披露。ロックサウンドの持つ衝動と、今の辻村の持つオルタナティブなセンスが見事に融合した、アッパーチューン。全てを解放し浄化するような空間を作り出し、ワンマンライブの幕は閉じた。
セットリスト
01.Into U -Openning 02.In My Life 03.Hate Love Song 04.おとぎ話 05.Let Me Go 06.How Are You 07.Sounds Like Feel It -introduction(rearrenge) 08.Sounds Like You Feel It(rearrenge) 09.Winter Is Coming 10.I Won't Forget 11.I Told You -You Are Gone x Snow(rearrenge) 12.Wonderland 13.Actions Over Words 14.Brave 15.Ame Dance ENCORE EN1.Light |