三月のパンタシア、記憶の遠く深い場所に触れて揺さぶるステージ
三月のパンタシア(撮影=MON)
三月のパンタシアが11月25日に、東京・shibuya duo MUSIC EXCHANGEで初のワンマンライブ『三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~』を開催した。朗読を交えながら、昨年のメジャーデビュー曲「はじまりの速度」や、最新シングル曲「ルビコン」などアニメテーマソングに起用されたシングル曲のほか、インディーズ時代の楽曲、さらに2018年3月にリリース予定の新曲「風の声を聴きながら」など、全17曲を披露。記憶の遠く深いところに触れて揺さぶるような印象深いステージで観客を魅了。また、2018年6月23日に東京・TSUTAYA O-EASTでセカンドワンマンライブ~星の川、月の船~を開催することも発表された。【取材=榑林史章】
おもちゃ箱のようなステージ
女性ボーカルのみあを中心に、様々なクリエーターが参加する音楽ユニット、三月のパンタシアのライブをひと目見ようと多くのファンが詰めかけた。ビジョンには公式ホームページと同じ、大きな本棚にもたれかかりながら本を読む少女の姿が映し出され、その本に描かれている物語や少女の想像が紡がれるような形で、ライブは進行した。
アルバム『あのときの歌が聴こえる』の1曲目に収録された、「いつかのきみへ」の曲が場内に流れる。ステージにみあが登場すると、わっと一気に沸き立った場内。視線が中央のみあに注がれた。序盤はインディーズ時代の楽曲を中心に披露。月と太陽のように交わらない関係から脱却したいと願う切ない気持ちを歌った「day break」。独特のメロディラインと跳ねたリズムが印象的で夏の情景も映しだした「青に水底」。観客は声をあげて声援を送った。
中盤には、静かにじっと聴き入るような、ミディアムやバラードを中心に披露。「七千三百とおもちゃのユメ」では、どこかジャズっぽいサウンドから、後半にはスペーシーな展開になったりと、まさしくおもちゃ箱のよう。アップテンポな「花に夕景」では、激しく体を動かしながら、エモーショナルに歌ったみあ。アコースティックアレンジで披露された「キミといた夏」では、彼女のハイトーンがビジョンに映し出された夜空の映像とあいまって、非常に美しい情景が描き出された。
そして後半、学生生活を題材にしたバンドサウンドの楽曲「ブラックボードイレイザー」や、そのアンサーソングでもある疾走感のあるビートのナンバー「シークレットハート」など、ノリの良い楽曲を次々と披露。本編最後に、メジャーデビュー曲「はじまりの速度」が始まると、観客も合いの手を入れて、盛り上がりを見せた。
新曲「風の声を聴きながら」を披露
ほとんどMCはなかったが、アンコールの前にみあが心境を語った。「すごい景色です。みなさんの顔が、一人ひとりよく見えて、一生忘れない景色になりました。今日この景色を見ることが出来たのは、いつも聴いてくれて、遠くからも来てくれた、そんなみなさんのおかげです。いつもありがとう。」と観客に感謝を伝えた。そして「とっても素敵な新曲ができました」という紹介から新曲「風の声を聴きながら」を披露。清涼感と爽やかさがあり、暖かな木漏れ日を感じるような曲に、観客はジッと聴き入った。そして「これが本当に最後の曲です」という言葉に、場内に「ええ〜!」という声があがると、「フフフ」と嬉しそうな声をこぼした。
みあの歌声は、少女と大人の女性になる過程において、それを受け止めながらも寂しく思っているような、独特なモラトリアム感を持っている。誰もが経験したほのかな恋心や、成長過程での様々な心理を歌った歌詞は、朗々と歌い上げるような上手さとは違った次元にある、細かなニュアンスを交えた歌声とともに琴線に触れる。つまり、三月のパンタシアが描く物語は、聴く人それぞれの物語。みあは語りべであり、それぞれの思い出にある誰かの写し絵だ。
ステージ上は薄暗く彼女の表情はほとんどうかがえなかったものの、体を動かす途中で一瞬顔に光が当たったとき、ちらりと美しく華奢で儚げな表情が見て取れたような気がした。記憶の遠く深いところに触れて揺さぶる、三月のパンタシアの音楽。一瞬見えた気がした顔は、きっとその場にいたそれぞれの記憶の中にある思い出のあの子に似ていただろう。
セットリスト
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1.day break 02.フェアリーテイル 03.青に水底 04.イタイ 05.ルビコン 06.七千三百とおもちゃのユメ 07.花に夕景 08.星の涙 09.キミといた夏 10.ないた赤鬼、わらう青空 11.ブラックボードイレイザー 12.シークレットハート 13.リマインドカラー 〜茜色の記憶〜 14.はじまりの速度 ENCORE E1.群青世界 |
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