4人組ロックバンドのザ・クロマニヨンズが11月28日と29日に、東京・マイナビBLITZ赤坂で全国ワンマンツアー『ザ・クロマニヨンズ ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018』の東京公演をおこなった。10月にリリースされた通算11枚目となるアルバム『ラッキー&ヘブン』を引っさげて10月26日の北海道・PENNY LANE 24を皮切りに、来年4月14日の富山・クロスランドおやべ まで全58公演をおこなうというもの。ライブは『ラッキー&ヘブン』のナンバーを中心に、終始高密度なロックエネルギーを発しながら展開。まさに“天国”へと導くようなエキサイティングな空間で満たされた。ツアー16本目に当たる29日のもようを以下にレポートする。【取材=村上順一】

他では体感できないライブの醍醐味が満載

甲本ヒロト(撮影=柴田恵理)

 1階のフロアにはすし詰め状態の人。開演前から熱気が2階まで立ち上ってくるようだ。スタッフによる前説で一体感を高めると、会場は暗転しSEが鳴り響く。ほどなくして真島昌利(G)、小林勝(B)、桐田勝治(Dr)がステージに登場。湧き上がる歓声のなか、甲本ヒロト(Vo)がゆっくりとステージ中央に。

 アルバムのオープニングを飾る「デカしていこう」では、ヒロトの感情を揺さぶりかける熱い歌声、真島のレスポールとマーシャルという、王道の組み合わせから放たれるエッジの効いたギターサウンド、小林の唸りをあげ体を震わすベースの低音、タイトでご機嫌なビートを繰り出す桐田のドラムと、この4人でしか出せない唯一無二のロックンロールサウンドを叩きつけていく。

 この日、ヒロトも話していたがニューアルバムの曲を中心に展開。もちろん過去のアルバムからも盛り込みながら、オーディエンスを盛り上げる。気持ちをハイにさせてくれた16枚目のシングル「どん底」では、会場全体で<どん底だから あがるだけ♪>と掲げた拳でフロアは満たされる。この一体感は他では体感できないライブの醍醐味の一つだと強く感じさせてくれた。日々の嫌なことなど一瞬で吹き飛ばしてくれるようなテンション感。そして、アルバムの完成度をさらにライブで更新していくような勢いだ。

真島昌利(撮影=柴田恵理)

 ヒロトの楽しんでいる姿が特に強く出ていたのは「 盆踊り」だった。まさに日本伝統の盆踊りのリズムをザ・クロマニヨンズがロックンロールに変身させた。桐田のフロアタムが和太鼓のように鳴り響き、そこにオーバードライブした真島のギターが色を付ける。日本人なら馴染み深いリズムにヒロトも満面の笑顔。その笑顔にライブの楽しさがより一層伝わって来た。「アルバムB面の楽曲です」と、アナログレコードを基軸とした紹介の仕方も印象的だった。常にアナログ盤を作り続けてきたこだわりを、こういったところからも感じ取れた。

天国へと誘うようなロックサウンド!

小林勝(撮影=柴田恵理)

 ニューアルバムの中でも盛り上がり必至の「ワンゴー」や過去作からも「ペテン師ロック」などを披露。魂を揺さぶり、我々を扇情させるヒロトのブルースハープが高揚感を煽るナンバーの「ペテン師ロック」は、前回の『ザ・クロマニヨンズTOUR BOMBOROLL 2016-2017』よりも更なる進化を遂げ、バンド全体のグルーヴがオーディエンスの闘争本能をブーストさせる。ライブハウスということもあり、クラウド・サーフィングも起き、会場のボルテージは最高潮だ。

 さらに会場が一つになったのはアルバムのラストを飾る「散歩」。印象的なコーラスは聴いた瞬間には歌えてしまうキャッチーさ。楽曲の心地よいビートに身をゆだねるように、オーディエンスも体を左右に揺らしながら歌い上げていく。そのフロアの様子を笑顔で眺めながら歌い上げるヒロト。ライブならではの一体感はこの場に来ないと味わえない。

桐田勝治(撮影=柴田恵理)

 同じ場所で同じ音楽を聴いて盛り上がる。この時間だけは日々の現実から解放、自分の違う一面を出せてしまうかのような空間をザ・クロマニヨンズは作り上げる。そして、何より一番ライブを楽しんでいるのは、ステージ上にいる4人だと感じたライブであった。まだツアーは3分の1に差しかかろうとしているところ。まさに“ヘブン”と化した空間は、ツアーファイナルではどのような情景を我々に見せてくれるのか楽しみだ。

(おわり)

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)