ナオト・インティライミと加藤肇監督

 今年7月に世界の旅から帰国した歌手のナオト・インティライミ(38)が、その半年に及ぶ旅の模様を収めた映画『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2』が、前編・11月23日、後編・来年1月5日にそれぞれ公開される。それに先立つ6日、都内で公開直前プレミア上映会がおこなわれ、作品を手掛けた加藤肇監督(31)とも出席。旅の中で生まれた新曲「Sunday」も歌い上げた。

 同作品は、純粋に音楽を楽しむ心を取り戻したいと、ナオト・インティライミが原点回帰をするためにおこなった、13年ぶりの世界長旅を密着したドキュメンタリー。アフリカ大陸14カ国、ルーマニア、スウェーデン、ドイツなどを半年かけて19カ国を巡った旅に密着。世界の音楽と文化を体感し、現地の人々との触れ合いを追う。その撮影時間は1000時間にもおよぶ。前編はアフリカ大陸、後編は欧州での旅の様子を収めた。

目には光るものが

 舞台挨拶に登壇したナオト・インティライミは、再び旅に出ようと思った理由を以下の通りに語った。

 「ずっと音楽が好きで始めて、それを生業にやらせて頂き幸せ者で、無我夢中で中2から作って。7年前の3回目のデビューで色んな事が動き出して、凄く有り難い。まず感謝していて、そのなかで音楽との向き合い方が変わってきて…。根本は変わっていなんだけどね、物理的に、色んな人のライブを観に行ったり、夜、好きなCDをかけて“この曲のここのベースがいいのよ”と10回ぐらい巻き戻して聴いてたあの日々があったけど、この6年間はライブに生きたけど歌詞書かなきゃ。あのCDもう一度巻き戻したいけど1秒でも早く寝たいとか…そういったやるべきことに囲まれている状態を感じて、このまま続けてては良くないなと。心が不健康になるなと思って。“ナオト・インティライミ、3年5年持たないぞ”、そういう状態で続けていても良くないと、10年20年先も自分から音楽を追っているようなそんな心でやるためには…。“半年以上日本の音楽業界から離れるのはリスキーだ”といろんな大人の方に言われましたけど、長い目で見てそう決意して旅に出られたことを今では本当に間違っていない、旅に出て良かったと思っています」

ナオト・インティライミと加藤肇監督

 旅の後半では、音楽で拍手をもらう喜びを感じ、生き生きしているナオトの姿が印象的だが「体の危機もありましたし、忙しくなる前の、音楽が好きだった気持ちに戻れたというよりもは、また別の感覚で音楽とのつながりが持てている気がします」と、旅をしたことでまた新たな感覚で音楽に向き合いことが出来たと説明。

 一方の旅に同行した監督のナオトへの印象は「今回、旅の始まりの出発の日、成田空港でナオトさんに意気込みなどのインタビューをしようとしたところ、ナオトさんに“旅っていうのは、そういうものじゃないんだ”と出鼻から怒られてしまいました。ナオトさんにとっては、そういった段取りのようなものがあるのとは違い、単にナオトさんにカメラが付いていくという気持ちだったようで、仕事には真剣な人なんだと思いました」とし、あくまでも自然体を望んでいたことを明かした。

 また、現地の人とすぐに仲良くなるナオト。その秘訣を聞かれ「まず顔ですね。表情で“僕は敵じゃない”と言うのをまずは伝えないといけないので、そこは大事にしています。ぶっきらぼうでしかめ面で近づいても子ども達は警戒するけれど、笑顔で接して現地の言葉を覚えて挨拶をすることで相手との距離を詰めることが出来ると思います。僕の場合はサッカーと音楽をやっているのも役に立ちました。また相手の名前を手に書いたり、メモをしたりして覚えるのも大切でいつもやっています」と語った。

熱唱するナオト・インティライミ

 主題歌「Sunday」は旅を経て生まれた楽曲。ナオトは「旅から帰ってきて、いろんな曲のアイデアが沢山あって、どれから手をつけようと思い、ギターを手にしたら最初に出てきたのがこの曲です。この曲を皮切りにコンセプトアルバム28曲になってしまいました。旅で本当にエネルギッシュな人や音楽に出会って体感して、今の自分の音になり、言葉になりました」と様々な出会いや経験が蓄積されたなかで、あふれ出した楽曲だったと説明。

 更に、こ作品について「音楽はもちろん、それだけではない旅の醍醐味が詰まっています。出会いや別れ、生と死など。アフリカという特別な地でナオト・インティライミが旅をしたから、ああいったことが起こるというのではなく、世界のどこかでは普段の日常として同じようなことが起きて経験しているという、皆様の普段の生活の一部と重なる部分や心が動いてもらえるところがあると、我々としてもこの旅をひとつの作品にした意味があるのかなと思います。一度観ただけだと見落としていたシーンが沢山あると思います。何度観ても、何通りもの違う見方があると思うので何度でも観てください」とその想いを語った。

 また、監督も「アフリカ音楽とナオトさんの音楽と、非常に音楽に溢れた作品になっています。アフリカ音楽などは聴き馴れないようなものでも、何度か劇場に足を運んでいただくうちに馴染んでいくと思うので、何度でも観て頂けると嬉しいです」と作品を通じて音楽を味わって欲しいと述べた。

 この日は、ナオト・インティライミによる「Sunday」に生歌も披露された。キーボードとコンガ(パーカッション)によるシンプルな編成。観客を煽りながら、軽快なリズムで奏でる。コールアンドレスポンスも飛び出し、まさにライブ会場のよう。ナオト自身もギターで弾き語り、跳ねるリズムで刻んで観客の心を躍らせた。そこにはナオトの生きた音楽があった。

 なお、前編は11月23日に、後編は2018年1月5日にそれぞれ公開。主題歌「Sunday」含むコンセプトアルバム「旅歌ダイアリー2」は11月22日にリリースされる。【取材・撮影=木村陽仁】

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