<記者コラム:オトゴト>
 高齢者と若者。その狭間で光る1つの“日本の名曲”。音楽という無限の可能性を秘めた文化・コミュニケーションは、先進国でもトップクラスの高齢社会の日本で、シニア層と若者層の絆を結びつける大いなる力となっている。

 先日おこなった取材では、在宅訪問サービス式のギターの個人レッスンに密着した。その日の生徒は70歳のシニア層。そして、講師は30代。年齢差はというと、ちょうど親子程のものであろう。

 生徒はアコースティックギターで日本のフォークソングや歌謡曲を修得したいというスタンスのようだった。コードの仕組みや楽譜の表記など、ゆっくりと語り合うようにレッスンを進める。課題曲として生徒が挙げたのは「涙くんさよなら」という楽曲だった。

 「先生、知ってますか? 最近CMでも流れていた曲…」
 「聴いたことありますね。CMでは鈴木雅之さんのカバーでしたね」
 「これ、もともとは坂本九さんの曲なんですよ。懐かしくてね…」

 コードを追いながら、坂本九さんの名曲をアナライズしていくとともに、30代の講師は音楽理論を、70歳の生徒はこの曲が発売された1965年当時の時代背景を、互いに説明しながら共有しあっていた。

 今までは独りぼっちでひたすら曲を練習するだけであったという生徒は、この日初めてイントロからエンディングまで、弾き語りを完走することができた。彼らにとって、特別な楽曲となったようだ。

 音楽と日本の歴史、高齢者と若者を深い絆で繋いだ名曲「涙くんさよなら」。“超高齢化社会”はこれから進んでいく現象、ひいては現在進行形なのだが、こと文化面において“音楽”は非常に心強いものと感じる。

 <君は僕の友達だ この世は悲しいことだらけ 君なしではとても 生きて行けそうもない>という「涙くんさよなら」の歌詞のように、高齢者と若者の関係が音楽という絆で結ばれることで、“超高齢化社会”の明るい未来が拓けていくのではないだろうか。【平吉賢治】

「涙くんさよなら」鈴木雅之 カヴァーアルバムVer.

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