4人組ロックバンドのandropが10月28日に、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『 androp one-man live 2017 at 日比谷野外大音楽堂』をおこなった。初の野外でのワンマンは、雨の中でのステージとなったが、内澤崇仁(Vo、Gt)が「雨でよかったと思えるようなライブにしたい」と意気込んだように、雨の悪条件もプラスに変えるような世界観を見せた。アンコールでは、ゲスト出演したヒップホップユニット・Creepy NutsのDJ 松永が風邪の為欠席する中、その穴を埋める演奏で切り抜け、野音のステージに新たな歴史を刻んだ。【取材=松尾模糊】

雨でよかったと思えるようなライブに

内澤崇仁

 この日は生憎の雨模様となったが、観客は会場でも販売されたポンチョを早速身に着けた観客が大勢見られ、降りしきる雨の中4人の登場を待つ様子はandropというバンドがいかにファンに愛されているかということを物語るに十分な光景だった。

 会場が暗転し、ステージが青い照明で照らされる中、内澤、佐藤拓也(Gt、Key)、前田恭介(Ba)、伊藤彬彦(Dr)がステージに登場し歓声が上がる。伊藤のドラミングから始まるインスト曲を演奏。続く「BGM」ではアルペジオに乗せて内澤が優しい歌声を届ける。

 内澤は「初めての野外、来てくれて本当にありがとう。雨の中来てくれているというだけで始まる前からすごく泣きそうになっていました。だから、今日は雨でよかったと思えるようなライブになるよう、みんなと一緒に楽しみたいなと思います」と挨拶。

 そして、ピアノサウンドと内澤のファルセットが印象的な「Melody Line」を披露。虹色の照明がステージを照らす中でアップテンポな曲に合わせ、観客も手拍子で盛り上がる。次の「Kaonashi」では一転、内澤がボウイング奏法(ヴァイオリンやチェロの弓を使った奏法)でクジラの鳴き声のような音響を奏で幻想的な雰囲気を醸し出す。赤い照明と変拍子が相まって妖艶な魅力で観客の心を惹きつけた。

 途中、内澤が「大丈夫ですか? 寒くないですか?」と雨に打たれる観客を気遣う場面も。佐藤は「野音って、外なので用意してきた映像が、暗くなるとどういう風に映るのか分からなくて。僕らもぶっつけ本番みたいな感じで楽しみにして来ました。この場所は伝説的な場所というのはもちろん、事前準備の感じなども他の会場とは違うんだなと」と野音ならではの会場の雰囲気を改めて感じている様子。

 さらに、内澤が「雨の方が伝説のライブできるから、とスタッフに言われて。雨のライブなのに伝説にならなかった、という伝説になるかもしれませんが」と自虐を挟みつつ、「雨の力など借りずに伝説にしましょうよ」と呼びかけ、会場も拍手と歓声で包まれた。

 内澤がアコースティックギターに持ち替えて「Astra Nova」を演奏。ステージから会場に向けて照射された緑色のレーザーが雨を反射し、キラキラと輝く。雨ならではの自然の演出で曲の壮大な世界観を引き立てた。

カモン! DJ内澤!

会場の様子【撮影=橋本 塁(SOUND SHOOTER)、西槇 太一、上山 陽介】

 メンバーがステージを離れ、会場の中央に設けられたセンターステージに内澤が上がる。内澤は「1曲近い距離でやりたいと思います」と、9月に配信限定でリリースした「Tokei」を雨に打たれながらアコギで弾き語り、しっとりと歌い上げた。最後にはセンターステージ近くにいた子どもにギターピックを手渡しし、ステージに戻った。

 ここからは再びバンドでの演奏。内澤が「久しぶりの曲を」と言い、パイプオルガン調の音が耳に残る「Songs」を披露。ここからは雨を吹き飛ばすような「Prism」など疾走感あふれる曲を立て続けに届ける。そして、清涼飲料水のCMソングとしても知られる「Yeah! Yeah! Yeah!」で<Yeah! Yeah! Yeah!>と会場中に響き渡るシンガロングで一体感を演出し、本編を終了。

 メンバーが去ってからも、アンコールが間髪入れずに沸き起こる。その声に応え、再びメンバーが登場。さらにCreepy NutsのR-指定がゲスト出演。しかし、DJ 松永が風邪のため欠席。佐藤は「こんなことある? 日比谷野音、風邪で休むって! 学校じゃないんだから」とツッコむ。

 R-指定は「DJパートあるんですけど、そこをどう工夫して見せるか、皆さんご注目下さい!」と8月にリリースした「SOS! feat. Creepy Nuts」を演奏。R-指定のラップと陽気なコーラスワークで過ぎ去った夏の雰囲気を引き戻す。R-指定が「カモン! DJ 内澤!」と呼びかけ、内澤がギターの弦にピックを擦り付け、スクラッチサウンドを再現。R-指定は「松永もありがとうと言っております!」と感謝を告げて、ステージを去った。

 来年1月12日に公開される、映画『伊藤くん A to E』の主題歌「Joker」を初披露。電子サウンドが盛り込まれたディスコ調の冒頭から、内澤のファルセットとコーラスワークで高揚感を煽るサビへと続く。新たな彼らの魅力を見せる新曲だ。

 最後は、内澤が「今日も初めて野外でのワンマンやりましたが、これからもどんどん新しいことをやっていこうと思います。僕らの音楽はあなたの傍にいつもあります。そんな気持ちで僕らは今日ここに立っているし、曲を作っています。本当に今日は来てくれてありがとう!」と感謝の言葉を述べ、「Image Word」でこの日のステージを締めくくった。

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