明日をどう生きていくか、アンテナ デビュー作に込めた想い
INTERVIEW

明日をどう生きていくか、アンテナ デビュー作に込めた想い


記者:長澤智典

撮影:

掲載:17年10月20日

読了時間:約11分

 仙台出身の4人組ロックバンドのアンテナが10月18日に、1stミニアルバム『モーンガータ』を発売。現メンバーは、渡辺諒(Vo、Gt、Key)、池田晃一(Gt、Key、Cho)、鈴木克弘(Ba、Cho)、本田尚史(Dr、Cho)。2010年に結成、2012年本格始動。今作でメジャーデビューを果たす。バックグラウンドの邦楽と、進化を続ける洋楽テイストの、“ニューレトロ”というキーワードを掲げ活動している。「モーンガータ」とは、スウェーデン特有の言い回しで、外国語に翻訳することが出来ない言葉。あえて日本語に訳すと「水面に映る、道のような月明かり」を意味するという。収録した曲全て軸にあるのは、「明日をどう生きていくか」という想いだと語る、渡辺は「自分たちが信じてやってきたことは間違いじゃなかった」と今作の出来に満足している様子。今作の完成への経緯や、バンドのこれまでの音作り、そしてこれからの展望などについてメンバーに話を聞いた。

ニューレトロ感

渡辺諒(Vo、Gt、Key)

――今のアンテナは「ニューレトロ」というスタイルを標榜しています。このコンセプトは、以前から持っていたものなのでしょうか?

渡辺諒 今作から、「ニューレトロ」というバンドのコンセプトを掲げ始めました。

――その言葉には、どういう意味が?

渡辺諒 洋楽テイストのサウンドと、俺がもともと好きだった…日本人がずっと馴染んできた歌謡曲のメロディを融合させたいなと思って、その言葉を名付けました。つまり、新しいサウンドだけど懐かしいという意味での“ニューレトロ感”。それをアンテナを通して出せたらなと思っています。

――歌詞には、渡辺さんがそのときに感じているリアルな想いを綴っている様に感じます。

渡辺諒 その瞬間に感じたこと。それは良いことも嫌なことも含め、自分の感情が動かされた瞬間の気持ちを俺は表現していきたい。だからこそ、日々生きていて嬉しいこと悲しいことは自分の中で想いとしてストックし続けています。

鈴木克弘 曲や歌詞には、諒君節みたいなのがありますからね。曲を作ってくるたびに、「ぽいなー」といつも思います。

本田尚史 しかも、元々の性格をわかっているからこそ、「こういう意図で」はもちろん、「こういう気持ちの裏返しでこういう歌詞になってるのかな?」というのも想像できます。

 今は「ニューレトロ」と、アンテナが標榜しているスタイルについて名乗っていますが、以前は「正当派歌モノひねくれロック」と言っていて、彼の中にある「ひねくれ」の部分は歌詞の中からも滲み出ていますからね。

――渡辺さん自身、結構ひねくれ者ですか?

渡辺諒 ひねくれ者というか、詞を書く人はそれぞれ性格が違うように、それぞれが想っていることをちゃんと書くべきだと俺は思っていて。そんな、誰もが書くような歌詞はつまんない内容にしかならない。そこじゃなく、自分の性格の良いところも悪いところも全部を含め歌詞に落とし込めないと、歌詞からその人の人間像が見えてこない。そこが見えない作品は、あまり面白くないなと思っています。

 自分の人間性をワーッと出した上で、その結果、嫌われたらしょうがない。でも嫌いという評価をさせられるところまで人の感情を動かせたなら、それは影響力を与えられたということ。人の感情を揺さぶるくらいまで自分の気持ちを素直に歌詞に落とし込むこと。自分の気持ちを洗いざらいさらけだす歌詞を書くことは、常に意識しています。

――渡辺さんの書いた歌詞に触れながら感じたのが、悶々とした感情を抱いているのかな、ということなんです。

渡辺諒 それはありますね。ちょっとマイナスな気持ちのほうが、言葉にしたときに力が大きくなったりもします。しかも、そういう言葉って普段は口に出せないこと。だからこそ、なおさら歌詞に落とし込みたくなる。

 よくあるじゃないですか。自分もそう思っていたけど、感情が悶々としすぎて言えなかった気持ちをその歌が代弁してくれたってことが。代弁したその歌によって自分が救われたりしている人たちって、俺も含めたくさんいると思う。

渡辺諒 悪い面も知っているから、余計に良い面が輝いていく。それをわかっているからこそ、自分は悶々としている感情をなるべく歌詞へ落とし込むようにしています。それこそ、100人が聴いて100人がいいと思う歌詞を作ることが正しいわけではないことに気付いてからは、自分の感情を素直に歌詞へ落とし込もうという気持ちになりましたからね。

――表現する上で、自分の意志を無理に曲げたくはないと。

渡辺諒 はい。誰かのために曲を作るのではなく、自分が本当に思っている感情をまわりの人もついて来てくれることが、そもそもあるべき形だと思っていて。だから、まわりの人たちがどう、というよりかは、自分が思っていることを本当に伝えた上で、後はそれに共鳴した人たちがいっぱい出てくれたらいいなという順序こそが、自分の中の理想としてあることなんです。

池田晃一 俺、今まで会った人の中で、こんなにもいろんなことを考えている人に会ったのは初めてだからね。時々、理解出来ないことを言い始めたりもするのですが。しっかり話をしてみると、「なるほど」と筋が通っているというか。納得出来ることばかりだからね。

自分たちにしっくりくる音楽性

池田晃一(Gt、Key、Cho)

――アンテナの楽曲を聴いていて、リフレインした音を次々と積み重ね、胸に心地好い音楽へと構築してゆくスタイルだと思いました。今の音楽性は、以前から変わらないのでしょうか?

渡辺諒 そこは活動を続けていく中で模索を繰り返しながら、ようやく自分たちにしっくりくる音楽性を見出したと言ったほうが正しいと思います。

――そこへ至るまでには、何が自分たちのスタイルにフィットするんだろうと捜し続けてきたということでしょうか?

渡辺諒 そうしてきた面はありますね「自分たちらしさとは何か?」を捜しては、いろんな表現方法を試しつつ、今の形へ行き着いたところはあります。

 先に言われたリフレインを多用していくスタイルも、自分たちなりにそのスタイルをつかんでいたとは言え、今回の作品を作るにあたり入ってくれたプロデューサーの方と話しあう中で、「アンテナが持つ心地好い音楽性を魅力にしていく上では、リフレインを多用していくのも良いんじゃないか」という話もしていて。

――確かに、楽曲の進行にあわせ、リフレインしたフレーズを多彩に多用に組み合わせてゆくスタイルは、聴いていてとても惹かれました。

渡辺諒 パッと聞くだけだったら、同じフレーズの繰り返しのように聞こえますけど、16ビートでリズムを取っている楽曲が多いので、そのリズムの上で多様に変化していくリフレインのフレーズを演奏しようと思ったら、リズム面での一体化を作るのは意外と難しいと思います。

鈴木克弘 互いの絡み方とか、意外と細かいところでの調整や確認が必要だからね。

渡辺諒 そう。たとえばの話、「同じフレーズを繰り返しているから簡単そう」という理由で中高生がアンテナの曲をコピーしようとするじゃないですか。確かに一個一個のフレーズは簡単かも知れないけど、全員で合わせたとき、なかなか心地好く交わらず「けっこう難しい」となりやすいんじゃなんいかと思います。

池田晃一 そこが、意外と難しいからね。

鈴木克弘 譜面上は簡単なんですけど、あの一体化したグルーヴ感を出すのが、意外と難しいんです。

本田尚史 実際に僕らも、その一体感を生み出すまで、ひたすら共有作業を繰り返して身体に染みつけているんで。

渡辺諒 このメンバーも、そう。人って、それぞれに持っているノリ感が異なるからこそ、そこを共有するための話しあいも事前に重ねて、たくさん練習を重ね、そのノリを共有していかないと、理想とするグルーヴはなかなか出ないものなんです。

――リフレインしていく音を重ね、広がりを与えていく今のスタイルを見出したのは、いつ頃だったのでしょうか?

渡辺諒 今年1月に出した『天国なんて全部嘘さ』というアルバムの頃から、今へと繋がるスタイルはちょっとずつ見えていて、それを今回の『モーンガータ』というアルバムを通し、より具体的な形に落とせたなと思っています。

「明日をどう生きていくか」という想い

鈴木克弘(Ba、Cho)

――『モーンガータ』は、ミニアルバムという形を取っていますね。

渡辺諒 じつは今回、定められたレコーディング期間の中で、録れるだけ録ってしまおうということで、全部で10曲レコーディングをおこないました。でも、今回3曲を省いてミニアルバムにしたのも「あえて似た雰囲気の曲を外し、いろんな表情を1枚の中で見せたい」と思ったことからなんです。つまり、今のアンテナの表現の幅を示す上でのバランス感として、この7曲がベストでした。

池田晃一 もちろん、今回ストックした曲たちもボツ曲てはなく、みんな自信を持っていて、どこかのタイミングで形にしたいなとも思っています。

――みなさん、今作での手応えについてはいかがですか?

本田尚史 今回、制作に費やす時間は短かったですが、その中へギュッと濃縮した内容を詰め込みながら1曲1曲を作り上げ、自分たちの掲げた理想に近い形にできたアルバムになったなと思っています。

鈴木克弘 まさに、制作自体が短距離走だったなという感じです(笑)。

池田晃一 今回のアルバム、ストックにまわした3曲も含め、どれも単純に「いいな」と思える歌ばかりなんです。その中から選び抜いた7曲を『モーンガータ』には収録していて、捨て曲は一つもないアルバムになったなと思っています。

――今作には、失恋を軸に据えたラブソングもけっこう多いですね。

渡辺諒 中に収録した楽曲で言うなら、ベタベタに描いた恋愛曲は「ぼやけた朝陽」くらいですね。他の曲は、どれも「どう生きてゆくか」をテーマに据えている内容。だから、恋愛の歌に感じた曲たちに関しても、恋愛風のフィルターを通しているだけで、どの歌も軸にあるのは、「明日をどう生きていくか」という想い。そういう生き方の一つのヒントになっていただけたらいいなと思っていて。

 「ぼやけた朝陽」も含め、それぞれの対象が違うだけで、作品を貫いた本質は7曲全部一緒です。「明日を生きていくヒントになるようなもの」をどれも意識しています。

――酔いに任せた気持ちを綴った「アルコール3%」のような、あの緩い感覚が心地好くて好きです。

渡辺諒 男性には、とくに年齢の高い男性の方ほど「『アルコール3%』がいい」と言いますね。今回の作品は、世代や性別によって好みはけっこう別れると思います。女性と若い人たちの間では、意外と「深海おまじない」が人気です。

 今回のミニアルバムは『モーンガータ』と名付けていて、「モーンガータ」を作品のリード曲にもしているので「『モーンガータ』が一番ひっかかる歌になればいいな」と思っていたのですが(笑)。実際にプロモーションを通して、いろんな人たちに聴いてもらったら、聴いた人の数だけそれぞれのリード曲が生まれてくるので、そこは聴いた人たちなり自由に楽しんでいただけたらなと自分たちは思っています。

――メンバーとしては、リード曲の「モーンガータ」をメインに受け止めて欲しい?

本田尚史(Dr、Cho)

渡辺諒 確かにバンド側は「モーンガータ」をリード曲として発表しましたが、ミニアルバムを発売するまでがうちらの主張であって、後は手に取った人に好き嫌いの判断はすべて任せる。作品ってそうあるべきだと思います。それに、俺ら自身も捨て曲は一切なければ、全曲思い入れを持っていて、どの歌を好きと言ってもらえても嬉しいです。

――「モーンガータ」には、「水面に映る、道のような月明かり」という意味があるそうですね。スウェーデン語を持ってきたのも斬新でした。

渡辺諒 最初はぜんぜん違うタイトルを考えていたのですが、もっとひっかかりのあるタイトルを付けたいなと思って、捜していたときに見つけました。しかも言葉に込められた意味が、今回のアルバムのみならず、バンドのコンセプトにもピッタリ来るものだったので、それで「いいね」となって。

――『モーンガータ』は、みなさんにとってどんな1枚になりましたか?

池田晃一 完成したアルバムを家で聞き直したときに感じたのが、「どの曲にも個人的に刺さる歌詞があるな」ということ。中でも「モーンガータ」の2番サビの<間違ったことなら数え切れずあって それでもどこかには耐えぬ光>と記した、そこのブロック全体がとくに好きなんです。それだけ、自分にも通じる想いを感じていたからなんでしょうね。それは、他の歌も同じ。自分らも彼と同じ経験をしてきたからこそ、理解出来る想いは多い。それを、この作品のどの歌の中からも感じられていますからね。

鈴木克弘 ひと言でいうなら「完成度が高い」のと、短距離走で作りあげたホットな1枚ということですね。すでにライブではアレンジを変えて演奏もしているんです。作品に収録したバージョンもすごく完成度が高くて、熱い想いのままバンッと詰め込めた作品になったなという意識も持っています。

本田尚史 今回はプロデューサーがついてくれたことで、自分たちが迷っていたときに「こういうやり方もあるよ」と導いてくれた経験も大きければ、これまでにアンテナとして自主制作していた4枚の作品の経験もしっかり新作の中に落とし込めて、嬉しい手応えを覚える作品になりました。

渡辺諒 完成した作品を聴いたとき、自分たちが信じてやってきたことは間違いじゃなかったなということを感じました。

――10月末からは全国ツアーがスタートしますね。

本田尚史 リリースツアーがこれから始まって、その合間にはインストアイベントも沢山入れています。

 ライブでは、どの曲もアルバムとはひと味違った表現が出来ると思うから、それをライブに来てくれた方にお届けしたいなと思います。ライブだからこそ感じられる世界観も、ぜひ味わいに来てください。

渡辺諒 アンテナは、ライブハウスという規模だけじゃなくて、もっと大きい環境に活動を広げていくことを目標にもしています。ライブハウスで何人集まったという狭い世界の基準から、もっと広いところへ、いい意味で視野を広げていけるようにしていきたい。

 何より、全国各地をワンマンでまわりたい。そのためにおこなうツアーでもあるので、今回のツアーを通してしっかりバンドとしても力を付けたいです。何より、今回初めてアンテナを知ってくださった方、ぜひライブを通した魅力も体感してください。

【取材=長澤智典】

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