見せ方が変わっていくアートワーク “ジャケ買い”のすすめ
<記者コラム:オトゴト>
音楽を楽しむ時、音以外での楽しみ方の一つに、CDジャケットのデザインがあると思います。特にアナログブームの今、存在感のあるデザインも重要なファクターの一つとして注目されています。今も少なからずあるとは思いますが、過去には“ジャケ買い”という風潮もありました。
“ジャケ買い”というのは読んで字のごとく、ジャケットデザインだけでアーティストや中身の音楽を知らずに、CDやレコードを購入する行為です。これがまた見た目の直感だけで買うので、CDプレーヤーに入れて音楽を聴いた瞬間に、自分の好みの音楽ではなかったということが多々ありました。そんな筆者もお金がなかった学生時代にチャレンジし、苦渋を飲んだこともありました。
多くはジャケットだけでこれはプログレ系とか、AOR系だなとイメージが湧くようなデザインがされているのですが、それすらもたまに裏切られることもあります。“ジャケ買い”はこのスリリングさがたまらないのです。見知らぬ音楽にたまたま出会い、そこから新しい扉を開いてくれる可能性も大いにあると思います。
ジャケットといえば以前、甲斐バンドの甲斐よしひろ氏にインタビューさせて頂いた時、CDが登場した80年代の話で「サイズが全然違うから、アナログでもCDのサイズでも通用するようなインパクトのあるジャケットを選ばなければいけなくなる」と制作側もデザインの見せ方が変わったことを話してくれました。それが今はCDからダウンロードやサブスクリプションに移行してきている時期で、同じようなことが起こっている。
OKAMOTO'Sは8月にリリースしたアルバム『NO MORE MUSIC』のインタビューで、「サブスクリプションだったら画面をスクロールしていって見て、店頭だったらジャケットを見て「えっ?」と反応する人がいたら嬉しい」と話してくれた様に、また一つ時代が変わっていくことを感じた瞬間。CDよりもさらに小さいサムネイルでインパクトのあるデザインを追求する。
見せ方が変わっていくアートワーク。新しい音楽に触れる可能性の一つとして、デザインを楽しみながら“ジャケ買い”をしてみるのも良いかもしれません。
【文=村上順一】
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