常に新しい風が吹く、TOTALFAT 人生かける運命共同体で創る音楽 
INTERVIEW

常に新しい風が吹く、TOTALFAT 人生かける運命共同体で創る音楽 


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年10月04日

読了時間:約10分

 ロックバンドTOTALFATのShun(Vo、Ba)とストレイテナーの日向秀和(Ba)が10月9日に、BS スカパー!のテレビ・ラジオ番組『スカパー! FM579 #15』に出演する。この番組はスカパー!が新たな音声コンテンツで、視聴者に話かけるようなラジオ的演出で、“ながら視聴”もできるものとなっている。今回のトークテーマは「カッコイイとは」。カッコイイ男・大人になるためトークを先輩後輩のベーシスト2人で展開。現在ツアー中のTOTALFAT・Shunが、番組の収録後にMusicVoiceのインタビューに応じた。TOTALFATは2000年に結成され、『SUMMER SONIC』など大型フェスの常連となっているロックバンド。4月に通算8枚目となるフルアルバム『FAT』をリリースし、Shunは17年半続く自身のバンドについて「僕らは人生をかけてやっている運命共同体。TOTALFATは何年やっても新しい風が吹く」と話す。バンドを長く続けていくことについてや、昨今のフェスについて、これからのバンドのビジョンなど多岐にわたり話を聞いた。

今のロックシーンは新陳代謝が早い

Shun

――今回は先輩ベーシストであるストレイテナーの日向秀和さんとのトークでしたが、収録を終えてみていかがですか。

 本当に新鮮でした。番組内でも言ってましたが、お互いが絶妙な距離感なんです。ジャンル的にしょっちゅう対バンするような感じでもなくて。たまに会うとこんな僕のノリをちゃんと受け止めてくれる先輩で、会うとすごくグルーヴが出ます。

――お二人のお話を聞いていて良い意味で意外だったのが、プレゼントしあったりしているんですね。

 そうですね。これは本当にひなっち(日向)の懐の深さといいますか、サービス精神が旺盛なんです。それは、音楽だけではなくて人に対してでもです。意図的ではなく、生き方の中で自然にやっているんだと思います。

――おそらく、そういった精神を持っている人が成功していくのかもしれませんね。その中で今回Shunさんが差し入れとして持ってきたワインを収録中にお二人で飲まれていましたが、お酒お強いですね。

 強いですね。ボトル一本くらい軽く行けちゃいます。

――ライブ中にも飲まれたりするんですか?

 ライブ中は飲まないことにしたんですよ。あまり良いことないなと思って(笑)。やっぱり終わった後のお酒が美味しいことに気づきまして、楽しみとしてとっておいています。

――あと、意外だったのがお二人では番組内でお話しされていたように、音楽の話というのはあまりされないのですか?

 音楽の話はしますけど、ベースの話はしませんね。誰のライブが良かったとかはしますけど、自分のベースのプレイみたいなことは誰も語らないし、ベーシストが集まってもそういった話をしているところをほとんど聞いたことがないです。

――ギタリスト会はよく耳にします。ベーシスト会は聞いたことがないのですが、集まり自体はあるのですか?

 あります。最近のギタリスト会だとそこにお客さんを入れてエンターテイメントとしてやっているものもありますが、ベーシスト会は集まっても飲んで終わるみたいな感じが多くて、ほぼ飲み会ですね。あとはそこで対バンの約束をするみたいな。なので、無駄に集まっているわけではなく、将来性のある会ではあります(笑)。

――今回の番組は普段とは違うお二人のベーシストとしての会話が聞けて面白いですね。そんな、ロックベーシスト界を牽引する、日向さんとShunさんですが、今のロックシーンはどのように映っていますか。

 全てにおいて回転が早いなとは感じています。流動的と言いますか、新陳代謝が早いです。そのスピードがどんどん早くなってきていると感じています。動画サイトなどの影響力も含めて、手軽に音楽が聴けるようになった分、ちょっとコンビニ感覚が増えたのかなと。

――音楽は情報に変わってきていると言われているところもあります。ミュージシャン同士でそういったお話もされたりするのでしょうか?

 たまにしますね。でもそれを問題とするかどうかですけど。CDが売れなくなってきているのは問題かもしれませんが、時代の流れもあると思うので。でも逆にライブを観に来るお客さんが本物志向になってきたというのは感じていて。ライブが良いバンドがどんどんのし上がっていく時代になってきているんじゃないかなと。

――レコードなどがなかった時代に戻ってきている感覚もありますね。

 そうかもしれません。作り込んだ音楽は今簡単に聞けてしまうから、逆に現場で確かめて感動したものについていく、という図式になってきているのかな。それが演奏だけではなくて、メンバーの人となりだったり、MCでのトーク力も重要になってきています。音楽をやっている人たちに対して音楽だけを求めるのではなくて、それ以外のファッションなどトータル的に求めていく時代だなと思っています。トータル的にその時代にあった人、もしくは、その時代のトレンドをぶっ壊すぐらいのエネルギーを持っている人が頭一つ抜けていくんだろうなと感じています。

長く続けるコツは同じもので感動するということ

Shun

――頭一つ抜けるということではフェスの対バンというものがあると思うのですが、このフェス自体の増えかたというのは想像できていましたか?

 ここまで増えるとは思っていなかったです。最近までは増えることを肯定的に捉えていたのですが、フェスの量に対してお客さんの量はそれほど変わらないと思っています。その一定数の音楽ファンがフェス毎に移動している感じです。個人的に今フェスはピークだと思っていて、どこかでまた時代を変える人が現れるんじゃないかなと思っています。

――こうなって来るとワンマンライブがまた特別なものになってきますね。対バンとワンマンでは望む姿勢も変わってきますか。

 全然変わります。僕の中でバンドの価値がわかるのはワンマンだと思っています。TOTALFATで例えると、17年半の活動の全てを見せられるのはワンマンなんです。やっぱりワンマンはやりたいことが出来るじゃないですか。僕らのことを観にきたお客さんの前で演奏した時に、どこまで高められるかです。

――ちなみに野外と屋内でしたら、Shunさんはどちらが好きですか。

 う〜ん…比べたことないですね。圧倒的に屋内の数が多いということもあって、自分の表現したい世界観など100%出せるのは屋内かもしれません。ケースバイケースですけど。

――TOTALFATは17年半という活動の歴史がありますが、バンドを長く続けていくコツはあるのでしょうか。

 基本的にはラッキーだと思ってやっています。やっぱり抗えきれない要素も出て来るじゃないですか。一概に秘訣というのがあるかどうかはわかりませんが、自分がメンバーに対して一番大切にしているのは、同じもので感動するということです。去年もメンバーみんなでアメリカに行って、好きなバンドのライブを観に行ったりしています。最初のスタートが、同じライブを観に行って「良しバンドをやろう!」と盛り上がって組んだバンドでもありますし。

――既に共通の感動ポイントから始まっているわけですね。

 でも、ポイントが同じだったとしても、同じ場所にいなければダメなんです。そうすれば、「ああなりたい」となった時に100%伝わるはずです。それはすごく大事だなと思います。例えば、僕だけがすごく良いライブなどを体験して、それを2時間力説しても、その良さはどのくらい伝わるのかなと。なので、これはと思ったものにはメンバーを誘いますし、メンバーからも誘われます。それがわかっているからみんなで観に行こうという話にはよくなります。
 
――なかなか長く続けていると、バンドメンバーと活動以外で行動をともにするのは、難しいことだと思うのですが、そういう観点から見てもTOTALFATが他のバンドと違うことを感じます。

 それも含めて楽しいんですよね。無理して観に行っているわけでもないので。

――去年行ったアメリカは大変だったみたいですね。

 そうなんです。追いかけられて暴行されて…。でも、そういう体験も一緒に共有できているというのも大きいですよ(笑)。

――それもまた一つのファクターになってますよね。

 バンドといっても週末だけ活動する人たちとか、様々な活動スタイルがあって、僕らはたまたま音楽を生業にして、人生をかけてやっている運命共同体なので、出来るだけ共有できる要素は増やしていきたいです。

TOTALFATは何年やっても新しい風が吹く

Shun

――これは様々なことに当てはまるお話ですね。バンドとしては4月26日に8枚目のフルアルバム『FAT』をリリースされました。リリースから5カ月ほど経ちましたが、楽曲の成長や新たな側面など感じられるところはありましたか。

 曲はめちゃくちゃ成長していますね。もともと洋楽畑でして、今まで英詞の曲ばかり書いていました。でも、『FAT』は日本語に傾倒した作品を作りました。日本語で書き始めたのはここ数年なんですよね。それに対してアレルギーを持つ人もいると思うし、最初は「う〜ん」と思った人も、やっぱり日本語のTOTALFATもいいなと感じてライブに来てくれる人もたくさんいて。ワンマンツアーなので100の気持ちで僕らを観に来てくれた人たちが、自分の書いた日本語の歌詞を歌ってくれるのが、嬉しいなと感じながらライブをやっています。

――新しいことにチャレンジすると、どうしても初めは賛否両論になりますよね。TOTALFATとしてのこれからのビジョンはいかがですか。

 国内はもちろんなんですけど、海外に飛んでいく音楽をやりたいなと思っています。今年の『SUMMER SONIC(サマソニ)』に出た時にすごく良かったんです。今までのサマソニ比べたらお客さんの熱量も群を抜いていました。その時のセットリストのコンセプトが、僕らが海外にいった時にどういうセットリストを組むかというものでした。日本語の曲ももちろん選びましたが、英詞でも自分たちの魂がより強く乗っかっている歌詞を選んで。過去曲から現在の曲までずらっと並べたら、自分たちの中でも一つ良い答えが出たような気がしました。

――TOTALFATの楽曲は国内はもとより、海外の方にとっても満足度は高いと思います。

 インドネシアのフェスに出た時は、日本語の曲を現地の方たちが大合唱してくれました。その時に「自分たちの曲は海を越えているんだ」と実感して、新しい感動の扉が開きました。せっかく音楽をやっているんだったら、言語の違いはあるけれど、そういったものを越えて海外に飛んで行ってもいいだろうと、そこを意識して制作していくことは大事だと思います。

 海外の方に刺さるパワーのある曲は、実際国内ではピカイチに飛んでいきます。やっぱり海外を視野に入れた方がチャンスも広がりますから。ピコ太郎さんみたいな例もありますし、どこで誰がチェックしてくれているかわからないです。発信しないことは始まりませんから。

――確かにネットも盛んな現在、世界に目を向けたほうが得策ですね。

 考え方の一つとして、この楽曲やビデオ、アートワークを海外の人が観たらどう思うか、作ったデモを外国人の知り合いに聞かせてみようかなと、柔軟な角度で制作にあたろうかなと思っています。そういったアティチュード(姿勢)とモチベーションが、結果的に国内の活動を濃くしてくれると思います。

――ツアー『FAST AND TIGHT tour 2017』も佳境を迎えています。

 20周年も見えてきて、そこに向けて気合いを入れ直していきたいです。また、次作の制作も密かに始まっていますし、ここにきて考え方も変わってきたのがすごくフレッシュで、バンドって何年やっても新しい風が吹くんだなと感じています。外の人たちから変わったと言ってもらえるようになるのは、まだ先の話だと思うのですが、まずは自分たちが内側で感じることがすごく大事で、そういった風が常に吹いているバンドなので。ここからまた新しいものを作るのは大変なのですが、それも楽しみながらやっていけたらいいなと思っています。ライブではバンドのパワーを感じに来てください!

【取材=村上順一/撮影=片山拓】

番組概要

タイトル :『スカパー! FM579 #15』
放送日時 :2017年10月9日 夜11時30分〜深夜0時30分 他(再放送あり)
出演者 :Shun(TOTALFAT)× 日向秀和(ストレイテナー)
チャンネル:BS スカパー!(BS241/プレミアムサービス 579)※スカパー! オンデマンドでも配信あり
視聴方法 :スカパー! のチャンネルまたはパック・セット等の契約者は無料で視聴可能
番組HP: https://www.bs-sptv.com/fm579/

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