加藤ミリヤ。ツアー最終日で決意を語った

 加藤ミリヤが9月18日、東京国際フォーラム・ホールAで、全国ツアー『加藤ミリヤ “Utopia” tour 2017』のファイナル公演をおこなった。

 愛が大事、一生歌い続けていきたい――。本編終盤、加藤ミリヤが声を震わせながら観衆に語り掛けた言葉だ。最新アルバム『Utopia』を引っ提げ、6月から巡ってきた。ツアー前、様々な葛藤があったというミリヤ。ツアーを経て「愛が大事」であることを再確認し「一生歌い続けていきたい」と思えたという。そうした確信と自信を取り戻して迎えたファイナルは、アルバムに込めたその想いを、歌、音、ダンス、光を駆使して表現した。

 最後2曲を残すまでノンストップで届けられた楽曲の数々はこうしたミリヤの想いを乗せて物語を紡いだ。それは、ただ音楽を楽しむだけでなく、喜怒哀楽の感情をもって愛の尊さを確かめているようだった。芸術性は高く、まさに曲ごとに入れ替わる万華鏡のようなもの。アンコールでは“ミリショー”としても人気を博した盟友・清水翔太も登場。華々しくツアーを結んだ。

Utopia

ライブのもよう

 開演時刻10分過ぎBGMの音量が上がり一気に絞られる。一瞬、間が空くと歓声がドッと沸く。序章を告げるMVが幕に映し出される。<私はもっと強くなる>といった言葉が浮かび上がる。しばらくして幕が落とされる。目の前にいるのは加藤ミリヤだ。大歓声を姪いっぱい浴びるミリヤは、この日の物語を誘うように最初に「Utopia」を届けた。

 この日のステージセットや演出はまさにユートピアだった。ステージ中央に伸びる二十数段はあろう階段の先に高台があり、1階ではバックバンドのDJ&Composer:SHUYA, Keyboards:YUK KISHIDA, Drums:Yoshitaka Shirane, Guitar:KB, Bass:johnhoriがグルーヴの利いたサウンドを奏で、筋骨隆々の男性ダンサーと3人と可憐な女性ダンサー4人が優雅にパフォーマンスして曲の世界観を表現した。その高台に君臨するのはミリヤ、黒を基調にした衣装にシルバーのマントを揺らす。沢山のライトを浴び高らかに歌い上げる。

 「Me」。ゆったりとした足取りで1階に降りて来たミリヤはダンサーに担ぎ上げられる。まるで女性戦士の様に頼もしい。観衆に激を飛ばすように「東京!」と叫ぶと、無数のスポットライトがミリヤを赤色に染める。そこから物語が万華鏡のように色を変え、音を変え、形を変え、猛スピードで流れいく。アルバム収録曲メドレーを挟んでからの「リップスティック」。ミリヤの感情の高鳴りに共鳴するようにKBのギターも唸る。

 この日のセットリストは、趣を変えた「Interlude 1」「Dancer Introduction」「Band Introduction」の3ステージが用意されていた。

 まずは「Interlude 1」。人生の旅路を表現するようにバイクにまたがり滑走する加藤ミリヤの映像が映し出される。明かりが戻されるとピンクを基調とした衣装に身を包んだミリヤが立っていた。そこで「旅人」を届ける。音は主に、ギターとキーボードだが、音色を自在に変え、優しい導線をひく。そこで優しく歌い上げる。

 時折階段に座り「東京! 一緒に歌いましょう!」とマイクを観衆に向ける。このセクションで色を飾るのは「FUTURE CHECKA」「Last summer」「このままずっと朝まで」「ジョウネツ~」といった過去曲メドレーだ。懐かしき楽曲を今に繋げていく。

ジャジーなグルーヴ

ライブのもよう

 「Dancer Introduction」は一転、胸を躍らすギターサウンドが全面に押し出される。映像は砂漠地帯を歩くラクダなどだ。まずは、ALEX、IG、AKANEN、ANGELO、MACCO、YUT、YURIがダイナミックなダンスを繰り広げていく。それは砂漠に巻き起こる砂嵐のように力強く観衆の心を飲み込み、釘付けにさせた。

 観衆の心はミリヤに注がれる。嵐の後の静けさの様に、曲が終わると高台には白色のベールに包まれたミリヤが佇んでいた。顔も隠れた状態でゆっくりと歌い上げる。「少女時代」。繊細で過敏な乙女心に触れるように静かな始まりだった。ステージ全体には花が咲き誇るように幻想的なラインティングがいくつも投影され、白のベールはそのライティングによって様々な色に染まっていた。<なんでパパ死んじゃったの>。痛みを伴った言葉が痛烈に響く。その歌詞を便りに初めてミリヤは顔を覗かせた。

 曲を終え、場内の明かりが落とされると、青色と白色のライトだけがキーボードYUKI KISHIDAを照らしていた。情感の起伏を表現するようにダイナミックにピアノ伴奏を始める。それが終わると一気に明かりが戻る。ベールを脱いだミリヤは深い赤色の衣装、手を天高く掲げて叫ぶ。ここからはダンスミュージックを軸とした過去曲メドレーが届けられる。ベースのjohnhoriは曲ごとにウッドベースを使用、ドラムのYoshitaka Shiraneも軽快なリズムを踏んだ。ダンスサウンドのなかにジャジーなグルーヴが流れていた。

 「Triangle」からは一つのドラマが始まる。ピアノとストリングスの音色が序章を飾った同曲をミリヤは心に溶け込むように歌い上げる。それを象徴するようにステージ背面には水の波紋のようなライティングと映像が投影された。「Roman」では階段を上り高台に着いたミリヤが稲妻(映像)に打たれる。それを合図に一気にサウンドは激しさを増す。その雷に覚醒されるようにギターのKBを中心にサウンドがうねりだした。「神様」では「奈落」などの言葉に加えて力強い鼓動を見せる心臓が映し出される。命の灯を表現するかのようにステージ全体が深紅に染められ、そのなかで力強く歌う。

 次の「Band Introduction」ではまさにジャジーなグルーヴで心を躍らせた。ベース、ギター、キーボード、DJ、ドラムと順にソロを展開していく。サウンドが跳ねる。そのなかで高台に立つミリヤはティアラに白色のドレス姿。ディズニー・アニメ『モアナと伝説の海』日本版エンドソングにもなった「どこまでも~How Far I’ll Go~」を歌い上げる。ダンサーもそれを象徴するような衣装で優雅にパフォーマンスする。

ミリヤの決意

加藤ミリヤ

 ここからラストスパートへ。「HEART BEAT」「DESIRE」「RAINBOW」へと立て続けに届ける。ミリヤも「東京!皆最高です!」と興奮の度合いを言葉で伝える。ラインティングも華々しく、ミリヤの歌声も弾んだ。ここで一呼吸を置き、初めてのMC。ミリヤは涙ながらに決意を語った。

 ◇

 こうしてファイナルが迎えられることが嬉しい。今まで当たり前のように長いことステージで歌っていて、それが本当に凄いことをやらせてもらえているんだなと改めて感じて、一公演一公演、最高なメンバーとスタッフとやってきました。

 ユートピアはとっても幸せな場所という意味。それは誰かと、何かと比べないで自分の価値観で自分の事を愛せて、誰かを愛せて、愛のありかに居られる場所がユートピアだと思っています。ツアーを回って皆に会って、それはここだなと凄く思っています。

 長く歌っていくことが自分の人生だからあまりにも当たり前で考えることがなかった。ツアーを回っていて一生歌いたいなと思えたことはもしかしたら初めてと思うぐらい。自分がいるべき場所はここだなって感じられた。私にとって大切な、意味のあるツアーになりました。

 このツアーを回って辿り着いたのは愛しかないということ。このツアーで何を伝えたいんだろうと数カ月間考えていたけど愛だなって。愛は生まれた意味だし、生きている意味。だから私はそれ強い気持ちで歌っていこうと思います。だからみんな愛を諦めないで愛を信じて、愛のために生きていきましょう。

 ◇

ミリショー一夜限りの復活

ミリショー

 その想いを乗せるように「最高のしあわせ」「素晴らしき人生」を最後に届けた。ミリヤの愛に包まれた壮大なバラードは観衆の心を温めていく。そして、ミリヤの後ろを照らすライトはダイヤのような輝きを放っていた。愛という形がこの両曲で帰結していた。それが物語るように歌い終えたミリヤは笑顔だった。

 アンコールでは、盟友の清水翔太が駆け付けた。久々の“ミリショー”復活に割れんばかりの大歓声が響く。そのなかで代表曲「Love Forever」を歌い上げる。

 興奮冷めやらぬなかで改めてミリヤは「ここからが新しいスタート。皆が楽しんでもらえる新しいものを作っていきたい。新たな旅立ちや出会いでインスピレーションを得ています。本当ありがとう」と改めて感謝を伝え、最後は「I miss you」を届けた。

 愛に満ち溢れる場内。ミリヤが去ったあとのステージには清々しさが残っていた。

【取材=木村陽仁】

セットリスト

M1.Utopia
M2.Me
M3.EMOTION
M4.Album「Utopia」収録曲メドレー
BE~永遠~Let Me In~幻
M5.リップスティック
Interlude 1
M6.旅人
M7.過去曲メドレー1
FUTURE CHECKA~Last summer~このままずっと朝まで~ジョウネツ~
M8.夜空
Dancer Introduction
M9.少女時代
M10.過去曲メドレー2
TOKYO STAR~TOUGH~SAYONARAベイベー~STYLE
M11.Triangle
M12.Roman
M13.神様
Band Introduction
M14.どこまでも~How far I’ll go~
M15.HEART BEAT
M16.DESIRE
M17.RAINBOW
MC
M18.最高なしあわせ
M19.素晴らしき人生
<ENCORE>
En1.Love Forever(加藤ミリヤ×清水翔太)
MC
En2.I miss you

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